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第二章南の島開拓
12.不揃いな同盟
しおりを挟むフレイアの叫びが響く中、息を吐く。
「悪いが約束はできない」
「なんですって!」
「俺がハイジを泣かせない保証はない、この先生きてれば辛いことは多いだろう。だが一つだけ言わせてもらうが」
フレディーは思い違いをしているのではないかと思った。
「ハイジはお前が思うほど弱い女か?誰かに守ってもらわなければならない程弱いのか?誰かに幸せにしてもらう?違うだろ」
「えっ…」
「ハイジは自分で幸せになるんだ!誰かに与えてもらう幸せなんて必要ない!」
強い言葉にフレイアは何も言えなくなる。
「俺はハイジと一緒に幸せになる。他人が言う幸福と俺達の望む幸福は違うかもしれないが…それじゃダメなのか?」
この言葉にフレイアは驕っていたことに気づく。
アーデルハイドは第三者から見れば不幸だったかもしれないが、本人は一度だって自分の境遇を嘆いたことはあっただろうか。
辛い日々の中、僅かな幸せを得ていた。
「私の負けね…馬鹿だったわ」
「今さらだろ?お前が脳筋で単細胞なのは」
「やっぱり嫌いよ!アンタなんて」
「光栄だな。俺もお前が嫌いだ。結婚式が終わったら早々に国に帰ってくれ」
しんみりするフレイアに慰めの言葉はなくさらに傷つける言葉を連発するフレディーに殺意を込める。
「なんて性格が悪いの!」
「お互い様だろう。ここは俺とハイジの愛の巣だ。レイジ様はともかくお前は入って来るな」
「私はここが気に入ったわ。よって休みの日は遊びに来るわ!」
「やめろ!俺達の新婚生活を邪魔する気か!」
最初こそは殺伐とした空気が流れていたのに、何時の間にかくだらない言い争いが繰り返された。
「フンっ、私はハイジの親友よ?小さい頃からね」
「そんなものにしがみ付くとは愚かだな。俺はハイジを喜ばせることができるぞ。なんせ夫だからな」
「偉そうに言ってんじゃないわよ。たまたま、島で初めて出会ったのがあんただけだっただけじゃない!優しくしてくれてコロッと行っただけよ!」
「運命だろ?ハイジは優しくされれば誰でも…いや、食べ物でつられそうだ」
「うっ…変な所で警戒心が弱いわ。緩すぎるほどに!」
言い争っていた二人は何時の間にかアーデルハイドの事で張り合うも、途中で警戒心がなさすぎることで共感していた。
「元婚約者とやらから守る自信はあるが…」
「あのハイジだもの」
反発しあっていた二人は視線を合わせた。
「不本意だけしばらく協力した方がいいわね」
「ああ、屑達を完全に消すまでな」
互いに手を取り、一時的な同盟が組まれた瞬間だった。
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