婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!

ユウ

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第二章南の島開拓

11.呼び出し

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その夜、全員が寝静まった後。

フレディーは戸締りをして、家畜の様子を見に行こうとした時だった。


「うぉ!」

矢が飛んできた。


「矢に手紙?」

壁に突き刺さる矢に手紙が結ばれていた。

「普通に渡せよ!」

手紙を見て誰か解り、戸締りを急いで終わらせて向かった。



「遅いわね」

「真夜中に人を呼び出して、酒盛りとは何様だ!チー、お前もお酌なんてするな」

「ガゥ?」

待ち合わせ場所で優雅にウィスキーを飲みながら傍にはお酌をするちいがいた。

自然界は弱肉強食が掟だった。
一対一の勝負に負けたちいは、フレイアの子分となりお酌をしたり、肩をもんだりしている。


「それで、なんだ」

「ええ、一発殴らせて」

「は?」

愛らしい笑顔で拳を突きつけるフレイアに、フレディーは素っ頓狂な声を出す。


「なんだったら選ばせてあげる。グー、チョキ、パーのどちらか」

「チョキってなんだよ!」


普通に考えればグーは殴り、パーは引っぱたくと思ったが、フレイアは予想外の行動をする令嬢であることを嫌というほど知っていた。


「グーは股間にパンチ」

「は?」

「チョキは目つぶし」

「ちょっ…」

「パーは地面にたたきつけるよ」


どれも最悪な選択だった。


「なんだったら、全部受けてくださって結構よ」

「待て待て!なんで拳が光っているんだ。魔力を使って至近距離で殴られれば流石に死ぬ!」

「なら死になさい。私程度に負けるような弱っちい男に大事な親友は任せられなくてよ」

「無理あるだろ!」

いくら何でもフレイアを任す男なんて国内でも数名いるか解らない。


フレイアの実家、メルヘン伯爵家は戦闘一族と言われる程だった。
男女関係なく、幼少期には辺境地で訓練をされ、獅子は我が子を千尋の谷に落とすかの如く教育をしている。


「さぁ」

「何がさぁだ!」

「弱い男に、あの子は守れない。王族を捨てた癖に守れるの?これから先、あの子に何かあったとき守れる保証はあるの?」

フレイアの目は真剣だった。
大切な親友を守れないような男に任せたくない。


モーギュストとの婚約もさんざん反対したが、両家同士の事に口をはさめなかったので、諦めるしかなかった。


けれど、今になって後悔した。


「私はあの屑男に決闘を申し込むなりをして、婚約を阻止すべきだった。あの屑両親をボコ殴りにしてもでもハイジを連れて逃げればよかった」

「フレイア…」

「アンタに解る?ずっと自尊心を踏みつけられ、屈辱を味合わされ…公の場でどれだけ恥をかかされたか」

婚約者として一度もエスコートをされたことがないアーデルハイドは社交界で笑いものにされていた。
敵対する派閥の貴族に罵倒を浴びせられながらも笑って耐え続けるのを見るのがどれだけ悔しかったか解らない。

それとなくモーギュストに注意したこともあったが、その所為でアーデルハイドはさらに酷い目にあってしまったこともあり、自己嫌悪に陥った。

「何時か、あの屑男がハイジの価値に気づいて、取り返しに来たら守れるの?」

「俺は…」

「ここで誓いなさい!絶対にハイジを泣かせないと。じゃないと認めないわ。許さないわ!」


胸倉を掴まれ涙目になる。
追放された時、傍にいなかったことを今も悔やみ、長い髪をばっさり切られた姿を見るたびに罪の意識に苦しんだ。


今さら悔やんでも仕方ない。

もし、あの時なんて言っても仕方ない。

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