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第二章南の島開拓
8.本当の家族
しおりを挟む扉の方に立っていたのは、アーデルハイドに唯一の家族と言っても過言ではない人物だった。
「レイジお祖父様!!」
「ハイジ!」
そのままレイジの元に抱き着く。
「無事で安心した」
「ごめんなさいお祖父様」
涙を流しながらレイジに謝る。
追放されて、非道な扱いを受けても一度だって泣かなかった。
けれど、レイジを見ると涙が止まらなかった。
「ハイジは悪くない。私がもっと早く気づけていれば良かった。許しておくれ」
「そんな!お祖父様の所為ではありません」
邸の中でもずっと味方だったレイジの存在はアーデルハイドにとって支えだった。
今でもそれは変わらない。
「こうして、お会いするのは久しぶりでございますな」
「ご老公様」
フレディーは直ぐに礼を尽くす。
「今は引退した身です。かしこまられる必要はありません」
「いいえ、貴方様は我が国とっても偉大なる賢者様と呼ばれるお方です。無礼は許されません」
「相変わらずのようですな」
レイジは他国にも影響力のある貴族だった。
貴族の枠に収まらず、知恵者として慕われ、人徳者でもあることから慕われていた。
「ご老公、無礼を承知でお願い申し上げます。お孫様を私にください」
「ちょっと…」
「はい、君は黙ってて」
「もごもご!!」
エディオスは邪魔をしようとするフレイアの口にマンゴーを放り込んで阻止をした。
「お顔をお上げください」
「ご老公…」
「孫は貴族ではなくなりました。それでもいいと?」
レイジは射貫くような視線を向ける。
「私は貴族のハイジを好いたわけではありません。それに私の立場はご存じのはず」
「ええ、少々意地悪な質問でしたな」
フレディーの性格を熟知しているので疑うつもりはない。
「孫は箱庭よりも、広い空で生きていく方が幸せだと思っております」
「では…」
「反対する理由はありませんな」
レイジは最初から反対する気はなかった。
貴族だったころのアーデルハイドよりもずっと生き生きした表情をしているのを見て、この島にいる方が幸せだと思ったのだ。
「何も心配しなくていい。後の事は任せなさい」
「お祖父様…」
「何、引退したとはいえ、まだまだ私は元気だ」
穏やかな表情から怪しい笑みを浮かべる。
「少々、調子に乗った馬鹿にはそれ相応の報いを受けさせるなくてはな。それに南の島で老後生活も悪くないだろう」
「ご老公…それは」
「殿下、私を甘く見ないでください。老いぼれといえど、数々の修羅場を潜り抜けたのですからな?」
レイジの表情を見てフレディーは怯えた。
「ステラ…厄介なことになった」
「そんなの聞く必要もないだろ」
王侯貴族の中でも恐れられた人物。
東北の竜と呼ばれたレイジは未だに健在だったことを改めて思い知る二人だった。
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