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第二章南の島開拓
2.孤立
しおりを挟むアイシャは自分の教室に戻るが、何も変わらなかった。
あの日、アーデルハイドを取り押さえた令息達は学校を休んでおり、これまで取り巻きとして傍にいてくれた男子生徒は誰一人として来ていない。
教室に入ると遠巻きに見るクラスメイト達。
「道を開けなさい」
睨むも無視をして挨拶もしない。
「ちょっと、聞いているの!」
「なんだか煩い虫がギャーギャー騒いでますわ」
「発情期の猿ですわね。お育ちを疑いますわ」
聞こえるように言う令嬢達はアイシャよりも家格が低いがそれなりの名家の令嬢だった。
「なんですって!」
「本当に煩い方。大きな声を出してはしたないわ」
「子供でもこんな黄色い声を出さないのに」
耳を塞ぎながらハンカチで口元を隠す。
さっきから何か異臭がすると感じながら、アイシャを見る。
「香水?やだ…アイシャ様ったらご入浴もされてないのかしら?」
「以前から香水がキツイと思ってましたわ」
「なっ‥」
普段から香りのキツイ香水をつけていた。
別に風呂が嫌いではないが、貴族によっては毎日入浴するのが野蛮だと言う考えもある。
アイシャとアイシャの母親は入浴すれば汗をかくし、綺麗に巻いた髪が元に戻る。
お化粧もやり直しになるので毎日入浴はしなかった。
けれど、清潔感ある令嬢はシャワーだけでなく湯船につかっていた。
体臭を消すには湯船に入らなくてはならないことを知っているからだったのだが、アイシャは知らなかった。
「臭い…」
「本当に臭いですわ。窓を開けてくださいませ」
嫌味ではなく本心だった。
香水は温めると匂いが変わって来るが、粗悪品は湿度の高い場所では異臭を放ってしまうこともある。
「本当に気分が悪いですわ」
「アーデルハイド様は常に清潔でしたのに」
「お化粧は最低限でしたが、お肌が綺麗でしたから必要ありませんでしたわね」
アーデルハイドはアイシャのように念入りのお化粧はしてもらえなかったので薄化粧だった。
当時は見下し、見っともないと笑っていたアイシャだった。
だが、薄化粧でもスキンケアをちゃんとしていたので無駄にファンデーションは必要なかった。
髪の毛も軽く巻く程度で美しかったが、アイシャは癖毛が酷く茶髪で地味だったので目立つようなヘアアレンジをしてもらっていた。
「アーデルハイド様は絹のような美しい銀髪でしたわね」
「ええ、お肌も陶器のように透き通っていましたが…」
アイシャを見てクスクス笑っていた。
「何がおかしいのよ!」
「いいえ、毛穴の手入れをされていないのですね。肌が…」
「それ以上は言ってはいけませんわ。哀れですわよ…」
アイシャがヒステリックに叫ぼうとしても言葉を遮っていた。
今までは自分が言いたいことだけ言って相手の話を途中で遮っていたのに真逆だった。
「フンッ!」
これ以上ここにいたくないと言って授業が始まる前に教室を出て行く。
本人は無断で授業を欠席したことも忘れていた。
しかもその日は抜き打ちテストが行われていることも知らずにそのまま学校をサボってモーギュストの元に向かうも、今日は欠席だったので学園を出て邸に帰って行くのだった。
帰る時も御者に当たり散らしていたのを他の生徒や通行人に見られていたことなど知る由もない。
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