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第二章南の島開拓
1.学園にて
しおりを挟むアーデルハイドが追放されてしばらくこと。
学園では罪なき令嬢が暴行を受け、追剥のようにドレスを脱がされ、乙女の命とも言われる髪を剣で切り落とされた事件で騒がれていた。
社交界では一部の人間を覗き、アーデルハイドは慈善活動を行い、福祉にも寄付をしていることで有名だった。
昔から血筋の良い者はそれに見合う働きをすることこ美徳と言われている。
ノブレス・オブリージュ。
責任と義務を意味する言葉で、学園でも大切にされていた言葉だった。
誰よりもノブレス・オブリージュを大切にしていたアーデルハイドが虐めなんてするはずがない。
学園では常に友人と行動し、騎士団が警備を務める学園で騒ぎを起こすのは不可能だった。
学園を出た後も、ギルビット家の使用人が傍にいたので虐めは不可能だった。
邸の中ではアイシャが常に両親と一緒にいるのに、どうやって虐めをするのだろうか。
アイシャ一人の証言など無意味だった。
むしろ姉を罠にかける為にうその証言をし、元より婚約者に劣等感を抱いていたモーギュストと計画して財産を奪う為に共謀した方が信憑性が高い。
両親もアイシャだけを可愛がり、虐待に近い厳しい教育をアーデルハイドにしていたのだから。
「見て、アイシャ様よ」
「どういう神経しているのかしら」
「姉君を追放して、姉君の婚約者を寝取ったんですって?」
「静かに…目を合わせたらどんな目に合うか」
ヒソヒソと囁く学園の生徒達。
遠巻きに見ながら目が合えば視線を逸らせ、教室でも言葉を交わすこともない。
「なんなのよ…」
さっきから受ける視線は屈辱以外の何者でもなかった。
「ごきげんよう」
「フレイア様!ごきげんよう」
姿勢を正しながら現れたのはフレイアだった。
「大丈夫ですか?」
「ええ、しばらく休んでいて申し訳ありません」
「無理もありませんわ。アーデルハイド様とフレイア様は幼い頃からのご友人ですもの」
「お労しい」
本気で心配をしている令嬢はフレイアが数日休み、気を病んでいる事を心配していた。
「私はいいのです…でも」
「解ってます。あのお優しいアーデルハイドが虐めなんていたしませんわ。何かの間違いです」
「あんまりですわ。貴族令嬢の矜持を汚され、想像するだけでも恐ろしいですわ」
「私も現場にはいなかったのですが…使用人から聞きましたわ」
実際見たわけではない彼女達だが、相沿いうしただけでもゾッとする。
「島流しにされて、どうしているか…前侯爵様は失意のあまり倒れられたそうで」
「酷すぎますわ!」
涙を流す令嬢達の所為でアイシャの立場はさらに悪くなり、睨みつけようとする。
「アイシャ様が睨んでますわ」
「なんて恐ろしいのかしら…鬼のよう」
「姉君にあんな非道な真似をして…まさか、フレイア様も!」
アイシャが憎しみを込めて睨んでいるのに気づいた令嬢達はフレイアを守るように囲む。
「これ以上何をなさるのです」
「フレイア様に手出しは許しません…例え追放の身になっても」
「そうですわ!私達がお守りいたします」
完全にアイシャが悪人となり、令嬢達は勇敢に立ち向かう図が完成した。
「なんですって!」
アイシャは耐え切れず声を張り上げ扇で殴ろうとした時だった。
「何をしているのですか!」
「先生!」
「また貴女ですか…暴力を振るおうとしたのですね」
「ちがっ…」
「言い訳は結構。出て行きなさい!」
否定をしても信じる者はいない。
扇を振り上げて殴ろうとしていたのは事実なのだから違うと言っても信じない。
「まったく、姉君は優等生で立派でしたのに…どうして貴女は」
「なっ!」
今までちやほやされて来たのに、ここで姉が賛美されるのは許せない。
なのに周りは影口を叩きながら揃って言う。
「やっぱり優秀な姉に嫉妬してでっち上げたんだな」
「普通、ここまでするか?」
「恐ろしいな。普段からアイシャ嬢は性格がキツいって思ったけど…やり過ぎだろ」
貴族令嬢だけでなく令息まで揃ってアイシャのことを悪く言う。
彼等はアイシャの信者でもなくただのクラスメイトでしかなかったのだが、アイシャは勝手に好かれていると思っていた。
遠巻きに冷めた目で見ていただけで、アイシャが勝手に誤解しただけだった。
「チッ…」
舌打ちをしながらアイシャはその場を去って行くことになった。
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