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第一章国外追放
19.放蕩息子の帰還
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カルフェオン王国。
長い歴史を持ち、国王は無理な侵略を良しとしない性格った。
王妃は隣国の第二皇女であり、友好国から嫁いだ来た。
夫婦仲は至って良好であるのだが、目下の悩みは他国のくだらない小競り合いと第二王子の事だった。
現在王太子殿下は体は弱いが聡明だった。
品行方正で絵に描いたような王子で国王も自慢の息子だったが、すぐ下の第二王子は不良王子でと呼ばれる程の自由人だった。
早々に王位継承権を返上して国を出てしまった。
しかしこれは個人的な我儘ではない。
どの国も王位継承権を巡って争いを繰り返しているので、頭の良い第二王子は兄との争いを避けるべく、早々に王位継承権を放棄した。
そして自由に振る舞い続ける中、不良王子と見なされている。
「帰ったぞ」
「フレデリック!!」
まるで旅から帰って来たというような装いで広間に現れる。
「殿下…」
「また、そんな恰好で!」
大臣達は頭を抱える。
王子としては優秀で武に優れているのに、自由過ぎる。
公の場ではある程度弁えているが、優秀過ぎる故に色々頭が痛かった。
王族として国を愛する気持ちもあるので、国が不利益にならないように諜報活動を行っていた。
そう命じたのは王弟殿下だったが、その所為で放浪癖がついてしまった。
現在は道化を演じながら外側から国を守るべく奔走している。
「他国が不穏な動きを見せている…情報は仕入れた」
「そうか、ご苦労だったな」
「大したことはない。自由にさせてもらっているからな!」
王位に興味がないフレディーことフレデリック王子は幼少期から外に出ることを願っていた。
「元気そうで安心しましたわ」
「殿下、いい加減身を固めてはいかがですかな?貴族として…」
「いや、宮廷貴族の令嬢は皆恐ろしい。言うなれば肉に群がる狼だ。恐ろしくて仕方ない」
「殿下…」
大臣達はさらに悩んだ。
幼少期から外交を学ぶべく、友好国に留学しながら社交界にも顔を出していたが。
貴族社会の闇を知り過ぎた。
兄を追い落とすために群がる令嬢に嫌気がさし、他には権力に溺れた貴族に、弱い立場の平民から搾れるだけ金を絞る貴族にも嫌気がさしていた。
言い寄ってくる令嬢も大半はそんな汚い輩の手先だった。
真面な令嬢もいることにはいたが、他国から送り込まれた王女や貴族令嬢が強欲過ぎた。
国を愛し民を愛するフレデリックは妃を迎えず日陰の存在であることがいいと思った。
とは言え、国王や兄はフレデリックを深く愛していた。
ただし、遠縁の貴族達は内乱を企てているので、第二王子の存在は目障りだった。
何せ、フレデリックは勘が鋭かった。
幼少期からやたら、兄が暗殺されそうになった時も気づいたぐらいだ。
王太子を亡き者にする前にフレデリックを取り込もうと考えるも、全て不発に終わっている。
「外の世界はどうだ」
「刺激的だ」
「そうか、そうか…元気で何よりだ。お前も王子として城に留まって欲しかったが」
国王は兄の為に身を引かざる得ない状態になったフレデリックを不憫だと思った。
本人は王位に興味はないが、平民として生きて行くことは後ろ指を指されてしまう可能性もある。
そうなれば辺境地で静かに暮らすしかない。
せめて、良き相手に巡り合えるように祈りを捧げていた。
だが、その本人にその気がない。
むしろ嫌がっているようにも見えたのだったが。
「兄上‥」
「何だ?」
「俺、結婚したい女性がいる」
「「「は?」」」
そのフレデリックがとんでもない言葉を放ち、この場にいる全員が悲鳴を上げた。
「俺、奥さんにしたい人がいるんだ…片思いだけど」
「誰だ!人間か!人間の女性なら許す」
「そうだ、人間の女性なら、私は許可するぞ!」
長年女性を遠ざけて来たフレデリックは、サバイバルな環境にも身を置いていた。
一部では、人間の女性ではなく、獣に興味があるのではと噂になっている。
実際、令嬢と話すよりも愛馬と触れ合っている方が楽しそうだった。
長い歴史を持ち、国王は無理な侵略を良しとしない性格った。
王妃は隣国の第二皇女であり、友好国から嫁いだ来た。
夫婦仲は至って良好であるのだが、目下の悩みは他国のくだらない小競り合いと第二王子の事だった。
現在王太子殿下は体は弱いが聡明だった。
品行方正で絵に描いたような王子で国王も自慢の息子だったが、すぐ下の第二王子は不良王子でと呼ばれる程の自由人だった。
早々に王位継承権を返上して国を出てしまった。
しかしこれは個人的な我儘ではない。
どの国も王位継承権を巡って争いを繰り返しているので、頭の良い第二王子は兄との争いを避けるべく、早々に王位継承権を放棄した。
そして自由に振る舞い続ける中、不良王子と見なされている。
「帰ったぞ」
「フレデリック!!」
まるで旅から帰って来たというような装いで広間に現れる。
「殿下…」
「また、そんな恰好で!」
大臣達は頭を抱える。
王子としては優秀で武に優れているのに、自由過ぎる。
公の場ではある程度弁えているが、優秀過ぎる故に色々頭が痛かった。
王族として国を愛する気持ちもあるので、国が不利益にならないように諜報活動を行っていた。
そう命じたのは王弟殿下だったが、その所為で放浪癖がついてしまった。
現在は道化を演じながら外側から国を守るべく奔走している。
「他国が不穏な動きを見せている…情報は仕入れた」
「そうか、ご苦労だったな」
「大したことはない。自由にさせてもらっているからな!」
王位に興味がないフレディーことフレデリック王子は幼少期から外に出ることを願っていた。
「元気そうで安心しましたわ」
「殿下、いい加減身を固めてはいかがですかな?貴族として…」
「いや、宮廷貴族の令嬢は皆恐ろしい。言うなれば肉に群がる狼だ。恐ろしくて仕方ない」
「殿下…」
大臣達はさらに悩んだ。
幼少期から外交を学ぶべく、友好国に留学しながら社交界にも顔を出していたが。
貴族社会の闇を知り過ぎた。
兄を追い落とすために群がる令嬢に嫌気がさし、他には権力に溺れた貴族に、弱い立場の平民から搾れるだけ金を絞る貴族にも嫌気がさしていた。
言い寄ってくる令嬢も大半はそんな汚い輩の手先だった。
真面な令嬢もいることにはいたが、他国から送り込まれた王女や貴族令嬢が強欲過ぎた。
国を愛し民を愛するフレデリックは妃を迎えず日陰の存在であることがいいと思った。
とは言え、国王や兄はフレデリックを深く愛していた。
ただし、遠縁の貴族達は内乱を企てているので、第二王子の存在は目障りだった。
何せ、フレデリックは勘が鋭かった。
幼少期からやたら、兄が暗殺されそうになった時も気づいたぐらいだ。
王太子を亡き者にする前にフレデリックを取り込もうと考えるも、全て不発に終わっている。
「外の世界はどうだ」
「刺激的だ」
「そうか、そうか…元気で何よりだ。お前も王子として城に留まって欲しかったが」
国王は兄の為に身を引かざる得ない状態になったフレデリックを不憫だと思った。
本人は王位に興味はないが、平民として生きて行くことは後ろ指を指されてしまう可能性もある。
そうなれば辺境地で静かに暮らすしかない。
せめて、良き相手に巡り合えるように祈りを捧げていた。
だが、その本人にその気がない。
むしろ嫌がっているようにも見えたのだったが。
「兄上‥」
「何だ?」
「俺、結婚したい女性がいる」
「「「は?」」」
そのフレデリックがとんでもない言葉を放ち、この場にいる全員が悲鳴を上げた。
「俺、奥さんにしたい人がいるんだ…片思いだけど」
「誰だ!人間か!人間の女性なら許す」
「そうだ、人間の女性なら、私は許可するぞ!」
長年女性を遠ざけて来たフレデリックは、サバイバルな環境にも身を置いていた。
一部では、人間の女性ではなく、獣に興味があるのではと噂になっている。
実際、令嬢と話すよりも愛馬と触れ合っている方が楽しそうだった。
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