19 / 111
第一章国外追放
18.幸せな時間
しおりを挟む追放されてからどんどん性格が自由になって行くアーデルハイドだったが、元々明朗快活だった。
幼い頃は自由を好む性格だったが、完璧を望む母に無理矢理抑え込まれてしまった。
婚約者が出来たことで、さらに自由は無くなってしまった。
本当は外に出るのが好きで、領地で大自然に囲まれ乗馬をするのも大好きだった。
全てが変わったのは生みの母が病死してしまったからだった。
今の母は父親の再婚相手で義母となる。
それでも最初から仲が険悪だったわけではない。
本人にその自覚はなく、長女として立派に育てなくてはならないと思い込み。
その一方で勉強が嫌いな次女のアイシャには甘かった。
義母曰く、人には得手不得手があるとのことだが、アーデルハイドは長女故に厳しくしていた。
とは言え、手元で可愛がる血の繋がった娘の方が可愛いと思ったのは事実で。
甘え上手なアイシャは何か気に入らないことがあれ泣いて我儘を通す癖がついて、大袈裟に母に泣きついた。
そんな繰り返しがあってか、アーデルハイドを邪険に扱うようになった。
一方父親は妻に甘く、妻の言いなりだった。
何よりアーデルハイドの母とは政略結婚で、アイシャの母とは恋愛結婚だった。
世間からはアーデルハイドが虐げられ、蔑ろにされていると見られるのは明らかだった。
しかし、味方がいないわけではない。
祖父や、母の友人に幼馴染は庇ってくれたので僅かな時間でお心穏やかに過ごす時間はあった。
だが婚約者のモーギュストは良しとせず、ことごとく邪魔をした。
味方になってくれた使用人の大半もアーデルハイドを甘やかしていると告げ口して解雇されてしまった。
その所為で、耐える日々を送っていた。
けれどもう気にすることはない。
今は自由なのだから。
「ハイジ!何処だ?」
芝生の上で昼寝をしながら過去を振り返る。
「何をしているんだ」
「フレディー、気持ちいわ」
「この天気だからな」
一緒になって横になるフレディー。
成り行きで今日まで一緒に行動して来たが、ここまで心地よいと感じるのは初めてだった。
「ねぇ、フレディー」
「何だ?お腹が空いたのか?ビスケットとジュースならあるぞ」
「うん、お菓子は嬉しいけど」
用意周到なフレディーはアーデルハイドはお腹がを空かせないように常にお菓子を持ち歩くようになった。
「私、フレディーの事好きだよ」
「は?」
ポロリとビスケットを落とす。
「えっと…」
「ステラおばさんに農家におじさんや男爵様も…この島の人が大好き」
「あー、そっちな」
一瞬焦ってしまった。
普通にお菓子が好きだと言うノリで告白されたので驚いた。
「ずっとここにいたいなら、島の誰かと結婚したらいいって言ったじゃない」
「ああ…」
「それもいいかな?って思った」
青空を見上げながらのんびり告げる。
何処まで本気かどうか解らないが、フレディーは緊張した。
「好きな男がいるのか?」
「恋愛不適合者だからね…」
答えになっていないが、アーデルハイドは少しだけ考えが変わって来ていた。
「この島が好きだから、この島をこ愛している人が良い。贅沢を言えば私の事も好きでいてくれたら…とは思うわ」
「贅沢じゃないだろ」
「そっか。フレディーならそう言ってくれる気がした」
ゴロンと寝返りをしながらも嬉しそうに微笑んだ。
「あっ…ああ」
この時、胸がキュンと苦しくなった。
今までも似たような事はあったが、今ほど胸が苦しくなったことはなかった。
70
お気に入りに追加
5,504
あなたにおすすめの小説
妹ばかり見ている婚約者はもういりません
水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。
自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。
そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。
さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。
◆エールありがとうございます!
◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐
◆なろうにも載せ始めました
◇いいね押してくれた方ありがとうございます!
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
恋愛
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!
志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。
親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。
本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる