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第一章国外追放
18.幸せな時間
しおりを挟む追放されてからどんどん性格が自由になって行くアーデルハイドだったが、元々明朗快活だった。
幼い頃は自由を好む性格だったが、完璧を望む母に無理矢理抑え込まれてしまった。
婚約者が出来たことで、さらに自由は無くなってしまった。
本当は外に出るのが好きで、領地で大自然に囲まれ乗馬をするのも大好きだった。
全てが変わったのは生みの母が病死してしまったからだった。
今の母は父親の再婚相手で義母となる。
それでも最初から仲が険悪だったわけではない。
本人にその自覚はなく、長女として立派に育てなくてはならないと思い込み。
その一方で勉強が嫌いな次女のアイシャには甘かった。
義母曰く、人には得手不得手があるとのことだが、アーデルハイドは長女故に厳しくしていた。
とは言え、手元で可愛がる血の繋がった娘の方が可愛いと思ったのは事実で。
甘え上手なアイシャは何か気に入らないことがあれ泣いて我儘を通す癖がついて、大袈裟に母に泣きついた。
そんな繰り返しがあってか、アーデルハイドを邪険に扱うようになった。
一方父親は妻に甘く、妻の言いなりだった。
何よりアーデルハイドの母とは政略結婚で、アイシャの母とは恋愛結婚だった。
世間からはアーデルハイドが虐げられ、蔑ろにされていると見られるのは明らかだった。
しかし、味方がいないわけではない。
祖父や、母の友人に幼馴染は庇ってくれたので僅かな時間でお心穏やかに過ごす時間はあった。
だが婚約者のモーギュストは良しとせず、ことごとく邪魔をした。
味方になってくれた使用人の大半もアーデルハイドを甘やかしていると告げ口して解雇されてしまった。
その所為で、耐える日々を送っていた。
けれどもう気にすることはない。
今は自由なのだから。
「ハイジ!何処だ?」
芝生の上で昼寝をしながら過去を振り返る。
「何をしているんだ」
「フレディー、気持ちいわ」
「この天気だからな」
一緒になって横になるフレディー。
成り行きで今日まで一緒に行動して来たが、ここまで心地よいと感じるのは初めてだった。
「ねぇ、フレディー」
「何だ?お腹が空いたのか?ビスケットとジュースならあるぞ」
「うん、お菓子は嬉しいけど」
用意周到なフレディーはアーデルハイドはお腹がを空かせないように常にお菓子を持ち歩くようになった。
「私、フレディーの事好きだよ」
「は?」
ポロリとビスケットを落とす。
「えっと…」
「ステラおばさんに農家におじさんや男爵様も…この島の人が大好き」
「あー、そっちな」
一瞬焦ってしまった。
普通にお菓子が好きだと言うノリで告白されたので驚いた。
「ずっとここにいたいなら、島の誰かと結婚したらいいって言ったじゃない」
「ああ…」
「それもいいかな?って思った」
青空を見上げながらのんびり告げる。
何処まで本気かどうか解らないが、フレディーは緊張した。
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「恋愛不適合者だからね…」
答えになっていないが、アーデルハイドは少しだけ考えが変わって来ていた。
「この島が好きだから、この島をこ愛している人が良い。贅沢を言えば私の事も好きでいてくれたら…とは思うわ」
「贅沢じゃないだろ」
「そっか。フレディーならそう言ってくれる気がした」
ゴロンと寝返りをしながらも嬉しそうに微笑んだ。
「あっ…ああ」
この時、胸がキュンと苦しくなった。
今までも似たような事はあったが、今ほど胸が苦しくなったことはなかった。
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