婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!

ユウ

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第一章国外追放

17.牧羊熊

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治安は悪くないが、まったく危険が無いわけではない。
なんせ、数年に一度は島流しにされる人間が留まるのだから。


ただし、監督責任を持つステラがきっちり監視するのだが、安全面を考えるべきだった。

何より、他国から観光に来た人間の中には家畜泥棒がいないわけではない。
広い牧場になったら、安全面も考えて番犬が必要になる。

番犬も欲しいが、まずは。


「牧羊犬が欲しい」

「犬か」

「うん、羊を増やしたいから」


現在手広く家畜を飼って、ジャンに任された森以外に、羊をの世話もしている。
その延長で、自分の牧場にも羊を飼いだしたが、牧羊犬をそろそろ飼おうと考えていた。


「そうだな、知り合いに頼んでみよう」

「お願いね…」

この日は、牧場犬の話をして終わりとなり。
通常通り、ジャンに任されている森に向かった。


「牧場犬か…」

どんな犬が相応しいか、鼻歌を歌いながら歩いていると。


「アンアン!」

「ん?」

「アン!」


森を抜けた先で、捨て犬を見つけた。


木箱に入れられている子犬を見つけ、アーデルハイドは目を輝かせる。


「君に決めた!」

「アン?」


捨てられている犬を拾って直ぐに持ち帰った。


そして。


「ハイジ、なんだそれは」

「ちいちゃんです」

「何が?男爵の所に行って、何で犬を持って帰って来た?何処で拾ったんだ」

「可愛いでしょ?」


小さな子犬はつぶらな瞳をして愛くるしい。
ふわふわして最高だと思ったアーデルハイドは一目見て決めた。


「いや、いくら何でも」

「今からしっかりしつけて、立派な牧羊犬にするわ!」

家畜を世話して来たアーデルハイドには実績がある。
子犬一匹ぐらい育てられないはずはない。


‥‥のはずが。


「ハイジ、チーは随分と食べるな」

「うん、リンゴが大好物なんだけど。最近は一食バケツ二杯食べても足りないわ」

「そっ、そうか」


この時既に予兆はあった。
しかし、少し食べるぐらいにしか思わなかった。



その数日後。


「おい…」

「最近、ちいちゃんの成長が早いんだよね」

「早すぎだろ!既に俺と同じ身長じゃないか」


「育ち盛りかな?」


異様なほどに成長スピードが速かったが、まだ許容範囲だったが。



「ちいちゃん。すごく大きくなったわ」

「なりすぎだ!しかも、犬じゃない…熊だ。ク・マ!」


さらに大きくなり爪も立派になった。
犬というよりも熊だったが、普通の熊よりも体格は大きく魔獣のようだった。


「立派な牧羊犬になったね」

「違う、熊だから」

「じゃあ、牧羊熊になってね」


もはや何処から突っ込めばいいか解らない。


「大丈夫だろうか、食われるんじゃ」

「ちいちゃんはベジタリアンだから食べないよ。でも好き嫌いないから」

「ガウ」

牙を見せながら長い舌を出して涎を誑す姿はどう見ても肉食系だった。


「食われる…」


フレディーは恐怖心を感じたが、アーデルハイドに対しては従順だった。


そして事件は起きた。


その日の夜。


「いやぁぁぁぁ!」

「助けてぇぇぇ!」

その日、島では警備が手薄だった。
男達がそろって離島で仕事をしていたので、泥棒がアーデルハイドの邸に足を踏み入れようとしたが、運が悪かった。


「ちいちゃん、泥棒を捕まえたの?えらい」

「いや、口から血が…今まさに食おうとしてたんじゃ」


傍で見ていたフレディーは失神している泥棒に同情した。
余談であるが、その後泥棒達の正体も解った。

以前からこの島を狙っていた他所の貴族のようで。
男が不在の時を狙い、海岸沿いに住んでいるアーデルハイドの邸を奪い、乗っ取りを考えていたらしい。

しかし、運悪く、崖を上って到着した場所は魔熊の寝床だった。


彼等は早々に捕まり、アーデルハイドは勲章を貰った。
島の平和を脅かす不届き者を捕らえたことで評価を受けたのだった。



おかげで魔熊を飼うのも許されたのだった。


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