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第一章国外追放
13.カレーの食べ方
しおりを挟むしばらくして、挑戦者は苦しみ出した。
「無理‥」
「もう食べれません…」
バタバタと倒れて行く。
既に半分は、苦しみながら倒れていた。
「どうなっているんだ?」
「ああ…」
そんな中、完食したアーデルハイドはボタンを押した。
『答えをどうぞ!』
「隠し味はマスタード!」
『大正解です!ハイジ選手ぶっちぎりです!』
第二ラウンドも余裕でぶっちりぎりだった。
『ここで解説が入ります。お願います』
『はい、このサルサカレーは激辛唐辛子が練り込んであります。水を飲むとより強烈な辛さを感じます。そしてもう一つ、具材は水を飲むと膨れる成分があります』
『なるほど、では食事中に水を飲むのはダメなんですね』
『カレーに対して失礼な行動です。対してハイジちゃんはカレーを食べる前に甘いものを食べてお口直しをした後はカレー以外を食べてません…及第点です!』
司会者とカレー職人の言葉に観客は絶句した。
「嘘だろ」
「すっ、すごい。偶然にしてはできすぎだよ」
既に二人の職人はハイジの食べっぷりと食べ方のマナーに感激している。
『そして何より残さず綺麗に食べています。作り側からすればこれほど嬉しいことはありません。最後にはごちそうさまをしてくれてます』
『素晴らしい評価です!』
こうしてアーデルハイドは着々と勝ち進んでいた。
「フッ、中々やるじゃないか」
「男爵様…」
「私はこれでも世界中の食べ物を食べ尽くしたグルメだ。だが、忘れていたよ。作ってくれた人への感謝を」
料理は作る側の思いが込められている。
感謝を込めて食べることがどれだけ大切な思い出す男爵は笑みを浮かべた。
「この勝負あったな」
「「え?」」
「見たまえ、既にカレーを食べる手が止まっている」
残りの挑戦者は食べる気力すらなくなっていた。
「勝者は決まった」
『はい…大食大会の優勝者はハイジ選手です!』
「「「「わぁぁぁぁ!!」」」
対戦相手は試合続行不可能となり、アーデルハイドは優勝してしまった。
「え?何?」
「ハイジ君、おめでとう。君の優勝だ」
「じゃあ、ご当地グルメは?」
「お前はまだ食べるのか!」
まだ食べ足りないアーデルハイドは残念な表情をしていた。
「ステーキ、トルティーヤ、サボテンコーラ…食べたかったのに」
「ブラックホールかい!」
ステラは呆れてしまった。
まだまだ食べる気でいたのかと思うと死ぬほど心配したのはなんだったのか。
「気に入った!今から私の邸に来なさい…存分に食べさせてあげよう」
「本当に?」
「ああ、賞金も君のものだ。実に気分が良い!」
実は今日出された料理は全て男爵の使用人が作ったものでレシピを考えたのも男爵の祖父だった。
料理を賛美することはそのまま男爵を賛美する事に繋がっているのだ。
「こんなに気持ちよく食べてくれたのは初めてだ。元宮廷料理長を務めた立場として嬉しいよ」
「私も嬉しいです。こんなに美味しものが食べられて」
「そうか、そうか…」
ジャン・ブランターノ。
宮廷料理長を務めた後に功績が認められ爵位を賜り、カメリアを中心に地中海に料理革命を起こした人物だった。
現在は牧畜、農産業を手広く行っている。
根っからのグルメで食べることに大変な情熱を持っていた。
「私は長い間、料理を振る舞って来たが…今日ほど気分が良い日はない」
「私も幸せです。今日は美味しいものが沢山で」
心底幸せそうな表情をするアーデルハイドをますます気に入ったようだ。
「あの堅物男爵が…」
「ハイジ、恐ろしい子」
ステラとフレディーは表向きは社交的であるが、腹の中が読めない男爵を手名付けたアーデルハイドに驚くばかりだった。
結果として、広い土地と家畜を手に入れることに成功し、尚且つジャンに気に入られてしまうのだった。
後に新聞でも取り上げられ他国にも知れ渡ることになるのだった。
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