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第一章国外追放
10.現実主義
しおりを挟む貴族令嬢は生まれた時に生き方を決められている。
特に領地を持つ貴族で高位貴族は国王の命令に従い、婚姻までも決められているのが当たり前だった。
物心つく頃は、童話のような恋愛に憧れる時期もあったが、夢見る時間は婚約者の登場により潰された。
見事なまでに踏みつけられたと言ってもいいぐらいだった。
周りはそれなりに素敵な相手と婚約しているのに、自分の婚約は、頭が悪く、傲慢で性格も最悪だった。
これなら高齢者の貴族に後妻に入るか、妾になる方がずっと幸せではないかとも思った。
「どうなんだ?」
「そうですね。恋愛不適合者の私ですから」
「恋愛不適合者…」
ここまで言うのか?とフレディーは思ったが、本人は至って真面目だった。
「私、身分には興味ないんです」
「へ?」
「財もあまり興味がないですし…自分で稼ぎたい方ですから」
お金がないと幸せになれないというのはあながち間違いではないが、絶対に幸せになれるとは限らない。
「できたら共働きをして一緒に稼ぎたいです」
「そうなのか?」
「だから、稼ぎに関しては少なくてもいいです。でも馬鹿は嫌です」
「え…」
意外な返答が帰って来た。
「自分が世界で一番だとか言っているような馬鹿、人の話に耳を傾けられない馬鹿は無理ですね。生理的に受け付けられません」
「いや、そこまで酷い馬鹿は探してもいないだろ?」
「フッ、甘いですね。世の中のボンボンは馬鹿が多いですよ?馬鹿なボンボン。略してバカボン」
「バカボン?」
自嘲じみた笑みを浮かべながら学園にいた頭の悪い生徒を思い出す。
親が立派だから自分も偉いなんて思っている馬鹿が多かった。
爵位も授かってない立場で馬鹿ではないだろうかと思った。
「現実的なんだな」
「夢だけではお腹は膨れませんから」
「くくっ…そうだな」
同い年ぐらいの女性は玉の輿を狙ったり、夢見がちなのに、アーデルハイドはかなりシビアだった。
「でも、現実的でも…互いに大切に思い合って老後は一緒にお茶を飲めたら素敵ですよね」
「そうだな。白髪ができても仲良くあれたら幸せかもしれない」
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その先で互いに喧嘩したりしても最後は良かったと言思えたら幸せだと思えるのだ。
「でも、私は可愛げが無いから」
「そうか?」
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無理をした笑みではなく心から笑って言う言葉にフレディーは胸が熱くなる。
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