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第一章国外追放
3.少年
しおりを挟む常夏と呼ばれる島国のカスメリアはヒマワリとオリーブが特徴的でで住民は褐色の肌をしているのが特徴的だった。
服装は軽装で女性はワンピースにサンダルというラフな格好だった。
行く先々には真っ赤なハイビスカスの花が咲いており、アーデルハイドは散歩をしながら楽しんでいた。
「わぁーここにも綺麗なハイビスカス」
日差しが強いので、皆帽子をかぶっている。
「麦わら帽子に花が欲しいな」
手作りで作った麦わら帽子に飾り気がなく、花が欲しかった。
「これが欲しいのか?」
手を伸ばそうとする前に誰かが花を手折ってくれた。
「ありがとうございます」
「いや、どうぞ」
ハイビスカスの花をそのまま麦わら帽子に飾ってくれた青年は陽気に笑う。
「この島の方ですか?」
「子供の頃から遊びに来ているんだ…住まいは少し離れているけどね」
「そうだったんですか」
てっきり地元の人かと思ったが、日に焼けた体に片手にはヤシの実を持っている。
「欲しいのか?良かったらどうぞ」
「ありがとうございます」
丁度、この暑さで喉がカラカラだったのでアーデルハイドは気にせず、ヤシの実を割り、そのまま吸った。
「おお、豪快だな」
「そうですか?」
「ああ、見た目は可憐なのに、中々の詐欺だな!」
酷い言われようであるが、ここに来てまで礼儀作法を気にする程野暮ではない。
むしろ、折角開放的になったのだから好きにさせて欲しい。
「俺もそのまま吸うぞ」
アーデルハイドにつられながら同じようにヤシの実を割って吸っていく。
「あ、この方が美味い」
気に入ったのかそのまま全部飲み干していく。
「うん、大発見だ。ヤシの実はストローを使わないでこのまま吸った方が美味いな」
満足したのか、笑顔だった。
「俺はフレディーだ。君は?」
「アーデルハイドです」
「ハイジって呼んでいいか?長くて言いにくい」
「はい」
手を差し出され握手を求められているのかと思いきや、手の甲にキスをされてしまう。
「ひゃっ…」
「すまない。驚かせたな」
まったく悪びれる調子もないフレディーに少し悪戯心が芽生える。
「フレディー」
「ん?どうし…むぐ!」
「セクハラ禁止です。」
少しムッとしながらアーデルハイドは手持ちのバナナを口に突っ込んだ。
「モゴモゴ!」
「女性をからかうのはどうかと思います」
「むぐぉ!」
口にパンパンにバナナを詰め込まれ窒息寸前だったフレディーを放置し、そのまま去って行く。
「おいハイジ!待ってくれ!」
バナナを口から取り出し、ちゃかっかり懐に仕舞いながらアーデルハイドを追いかけるのだった。
「怒るなって、アイス奢ってあげるから」
「私を何だと思っているの?」
「まぁ、そう怒るなよ」
苦笑しながらフレディーはお詫びにアイスを買いながら散策する。
「何を探しているんだ」
「食べられる薬草を」
海岸沿いを歩きながら草を見分けるアーデルハイドに驚く。
「草を食べるのか?」
「ええ」
「俺は世界中旅をしてキノコや木の実は食べるけど…草はあまり食べないぞ?昔腹を壊したからな」
「見分けをしないでその辺に咲いている草花を食べたのでは?」
マジか?と思った。
いくら何でも雑草や食べられない草を口にすればお腹を壊して下痢になるのも当然だと思った。
「何だ?草に種類があるのか」
「ええ、例えばハーブとかミントとかなら食用に使えます」
実を言えば、アーデルハイドはアイシャの悪戯で毒を盛られることがあった。
本人は毒だと知らなかったので両親は悪気が無いのだから仕方ないと言って最終的には思慮が欠けているアーデルハイドの責任だと言われてしまった記憶がある。
それ以降、薬草を学び、食事前には薬草を飲む癖がついた。
おかげでそれ以降、医者いらずで風邪を引かずに元気だったが、その反対にアイシャは風邪を引きやすい体質だった。
今にして思えば薬草のおかげで頑丈な体になったのかもしれない。
「フッ…今でこそ笑えるわね」
自分で言ってて悲しくなるが、もう忘れようと思った。
「何、独り言をブツブツ言っているんだ?暑さで頭がおかしくなったのか」
「さりげなく失礼なことを言わないでください」
「ニヤニヤ笑ったり、死んだ魚のようなめしていたら気でも触れたかと思うぞ」
遠慮のない物言い、顔を引きつらせるが、早く薬草を採取して帰ろうと思った。
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