婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!

ユウ

文字の大きさ
上 下
3 / 111
第一章国外追放

2.御近所

しおりを挟む




世に聞く島流しとは聞こえが悪いが、思っているほど悪いものではない。

外聞は悪いが、辺境地などには普通に生活している人もいるので、作物が豊作ならば過ごしやすかった。


「バナナだ」


アーデルハイドの住む邸は貴族にしては少し質素で別荘に近いが、住むには十分すぎるスペースがある。


しかも、ここら一帯は捨てられた邸も多く、貰い手がなかった。

「こんな素敵なお邸をほとんど無料で貰えるなんてラッキーよね」

追放される前に、色々調べておいた。
世間知らずの元婚約者は南国に島流しにしてして終わりと、短絡的だった。

「頭が空っぽな人で良かった。ここら辺はすごく平和なのに…馬鹿じゃないの?」

王都で貴族の中で生活するよりもずっと自由で伸び伸びしている。


「すいませーん、隣に引っ越してきました」

「おや?」

「本日からお世話になりますアーデルハイドと申します。これ、つまらないものですが」


島流しになってもアーデルハイドは持ち前の社交性でご近所を徹底していた。


「あっ‥あの、アンタが島流しになったお嬢さんかい」

「はい、国外追放になって島流しになった者です」

明るく言われてポカーンとするが、女性はすぐにギョッとなる。

「ちょっとアンタ…その格好」

「あ、すいません。みすぼらしい恰好で」

「そうじゃなくて、首元に傷が…それにその髪」

「あっ‥」

剣でばっさりと切られた髪の毛は見すぼらしいのでスカーフで隠していたが、バレてしまった。


「ちょっと見せておくれ」

そう言いながらスカーフを奪われると…


「なんて酷いことを。誰だい…こんな酷いことをしたのは!」


無残に切られた髪を見て絶句する。
明らかに故意的に無理矢理切られた髪に、首元には剣で刺された痕も残っている。


「隣国から貴族のお嬢さんが追放されて来たって話は聞いたんだ。でも、アンタが犯罪を犯すような子には見えないね」

「どうしてです?」

「これでも私は客商売をしてんだよ。瞳を見れば解るさ。アンタは悪いことを出来る人間じゃない…今のアンタを見て確信したよ」


肝っ玉母ちゃんのような女性だった。


「私はステラだ。解らないことは何でも聞きな」

「アーデルハイドと申します」

「よろしくねハイジ」

愛称で呼ばれ少し照れくさく感じるが、嫌だとは感じなかった。


「はい、これからよろしくお願いします」

「その前に、アンタの髪を綺麗にしないとね。さぁ入りな!」

「えっ…」

「女の子がそんなバサバサの髪をしてちゃだめだよ!私に任せな!」


強引に手を引かれ家の中に入れられ、アーデルハイドは髪を綺麗に整えられたり、お化粧などをされたりして世話を焼かれるようになった。


元からさっぱりした性格のステラは世話好きで、流罪になった人間にも愛情を持って接し、更生させている人徳者でもあったこともあってか、アーデルハイドはすぐにステラを慕う様になるのに時間はかからず、ステラの口添えもあってか、島の住人にも紹介してもらい、受け入れてもらうことも出来たのだ。



王都にいたときは息を潜めて生きて行かなくてはならなかった頃と違い、今は心から自由だと思えた。


失ってようやく見つけた大切な居場所で幸せを探すために一歩を踏み出すのだった。



しおりを挟む
感想 291

あなたにおすすめの小説

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。 自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。 そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。 さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。 ◆エールありがとうございます! ◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐 ◆なろうにも載せ始めました ◇いいね押してくれた方ありがとうございます!

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

毒家族から逃亡、のち側妃

チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」 十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。 まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。 夢は自分で叶えなきゃ。 ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

婚約破棄の翌日に謝罪されるも、再び婚約する気はありません

黒木 楓
恋愛
 子爵令嬢パトリシアは、カルスに婚約破棄を言い渡されていた。  激務だった私は婚約破棄になったことに内心喜びながら、家に帰っていた。  婚約破棄はカルスとカルスの家族だけで決めたらしく、他の人は何も知らない。  婚約破棄したことを報告すると大騒ぎになり、私の協力によって領地が繁栄していたことをカルスは知る。  翌日――カルスは謝罪して再び婚約して欲しいと頼み込んでくるけど、婚約する気はありません。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

処理中です...