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第一章国外追放
1.島流し
しおりを挟む通常、貴族が国外追放を受ける場合は余程重い罪を犯した時だけだった。
殺人や王族の暗殺未遂ならば、領地で謹慎するか、王都から少し離れた修道院に送られる。
隣国の辺境地に送られることはないのだが。
「まぁ、二度と会いたくないしラッキーよね?一軒家付きで庭付きなんだし?」
本人は至って元気で伸び伸びしていた。
普通は悲しみに暮れるか、自殺を図ってもおかしくないのだが、家族との縁が切れてスカッとしていた。
「一度でいいから南国で暮らしてみたかったのよね!暑苦しいドレスも着なくていい…自由に過ごせてラッキー」
ここに来る時に追剥のようにドレスを毟り取られてしまったが、何の準備をしていないわけではない。
「追放されるなら南国って決めていたし、銀行に預けておいたお金で家畜を買ってしばらく悠々自適に過ごそうっと…後から使用人に荷物を送ってもらえばいいし」
ルンルン気分でスキップをしながら邸の中に入って行く。
アーデルハイドは前世の記憶があった。
前世ではローカルな暮らしをしていたので、苦でもなんでもなかった。
元より侯爵家では畜産業で財を成した百姓貴族だったが、祖父の代で功績を残し出世して現在に至る。
不自由のない暮らしができるのは領民や優れた執事達の支えだったが、母親は伯爵家の娘で侯爵家に嫁いだこともあり完璧な侯爵夫人を目指すあまり着飾る事を重視するようになった。
そして娘であるアーデルハイドにも特別厳しく、完璧な令嬢になる事を強いたのだった。
しかし妹のアイシャは甘やかされ自由に育てられ、どんな我が儘も聞いてもらえていた。
当初は寂しく思ったが長女だから仕方ないと諦めていた。
‥‥はずだったが、アイシャはとにかく我儘で欲しいと思ったものは手に入れたがる強欲な性格だった。
アーデルハイドの大切なモノは何でも奪い、何時も奪っていく。
「お姉様、アイシャにください」
少しでも嫌な素振りを見せると。
「酷いわお姉様…どうしてそんな意地悪をおっしゃるの」
涙目で周りに人がいる時に決まって大きな声で言うのだから両親に睨まれてしまう。
「姉なんだから」
「譲ってあげなさい」
アーデルハイドの意見は一切聞かず、何時もアイシャの味方をする両親に期待をするのを辞めた。
最初は乳母や侍女も庇ってくれたが、アイシャに睨まれ辞めさせられてしまった。
そこで、アーデルハイドは自分が深く関われば使用人に迷惑が掛かると思い距離を置いたのだ。
それでも幼少期から可愛がってくれた侍女は庇ってくれた。
だから今回の件で傷ついていないか心配だった。
「落ち着いたら手紙を送ろう」
今頃学園では大騒ぎになっているかもしれないので、状況を見てから動くべきだと考えていた。
「おっと、その前にご飯にしよう」
どんな時もお腹は空くもので、アーデルハイドは食事の準備に取り掛かった。
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