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第一章国外追放
プロローグ
しおりを挟む国境を越えた隣国。
その先にあるのは何処までも広がる青い海だった。
まさしくオーシャンビューと言うに相応しい美しい海に。
「うーん、最高ね!」
精一杯手を伸ばして伸びをしながら芝生の上を裸足で歩く。
「誰も見ていないから、何をしても許される。パラダイスだわ」
隣国・カルフェオン国の南部・カメリア。
辺境地の一つで一日三回だけ便が出ているというかなり不便なた土地であるが、バカンスには持って来いの場所だった。
元侯爵令嬢であるアーデルハイドが何故こんな辺境地にいるかというと、話は数時間前に遡る。
「アーデルハイド!この日をもって君とは婚約破棄をさせてもらう!理由は解っているな?社交界の華と呼ばれるアイシャの美しさに嫉妬し、陰湿な嫌がらせをするような女を僕の婚約者には相応しくない!」
「嫉妬ですか…」
「お姉様、正直に罪を認めてください。そうすれば許してさしあげますから」
げんなりした表情をする。
今に始まったことではないが、アーデルハイドは悲しいのを通り越して馬鹿過ぎる婚約者に呆れる。
「なんと慈悲深いんだ。それに引き換え、見た目も醜ければ性格も陰湿だな。貴様は私の愛しい人を悲しませた罪は大きいが、慈悲を与え流罪にしてやる」
「お姉様、罪を償ってください。私はお姉様を許します」
涙を浮かべながら告げる姿は味方によっては悲劇のヒロインに見えるだろうが、とんだ茶番劇だと思った。
「そうですか」
「行先は隣国の南国だ…貴様のような極悪人には相応しいだろう」
「そうですか」
もはや何も言う気になれない。
この時間ですら無駄のように思えてならない。
「何てことを…こんな酷い事を!この恩知らず」
「育て方を間違えたようだ。妹を苛めるとは‥お前はどうしてこんなことを」
涙ながらに訴える母親。
しかし、アーデルハイドは嫌悪感しか感じなかった。
恩など言われても、自分を育ててくれたのは乳母と侍女で、後は常にほったらかしだった。
母親は長女であるアーデルハイドを完璧な令嬢にすることだけを考え、妹のアイシャは自由にさせていた。
一度だって甘やかすことも、優しく頭を撫でてくれたこともない。
そんな親に愛情を抱く方が無理である。
「なんと冷酷な女だ。慈悲をかけてやったのに…もういい。今すぐこの女を追放しろ」
「立て!」
婚約者は騎士に無理矢理立たせ後ろから拘束する。
「もう長い髪も必要無い」
バサッ!
剣でばっさりと髪を切り落とされてしまう。
貴族令嬢にとって公衆の面前の前で晒し者にされ婚約破棄をされたあげく髪を切られるのは屈辱的なことだった。
「泣きもしないとは…やはり冷酷な女だ」
地面に叩きつけられても悲鳴一つ上げなかったのは涙すら枯れてしまったからだ。
この馬鹿過ぎる男に。
そしてお花畑の妹と、馬鹿過ぎる両親に対して残念な気持ちを抱いた。
こんな公でこんな馬鹿な事をそれば翌日にはこの事件は広がり醜聞となるのに。
冷めた目で見ながらアーデルハイドは非道な仕打ちを受けながら国外追放となるのだった。
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