婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!

ユウ

文字の大きさ
上 下
1 / 111
第一章国外追放

プロローグ

しおりを挟む




国境を越えた隣国。
その先にあるのは何処までも広がる青い海だった。


まさしくオーシャンビューと言うに相応しい美しい海に。


「うーん、最高ね!」

精一杯手を伸ばして伸びをしながら芝生の上を裸足で歩く。

「誰も見ていないから、何をしても許される。パラダイスだわ」


隣国・カルフェオン国の南部・カメリア。
辺境地の一つで一日三回だけ便が出ているというかなり不便なた土地であるが、バカンスには持って来いの場所だった。


元侯爵令嬢であるアーデルハイドが何故こんな辺境地にいるかというと、話は数時間前に遡る。




「アーデルハイド!この日をもって君とは婚約破棄をさせてもらう!理由は解っているな?社交界の華と呼ばれるアイシャの美しさに嫉妬し、陰湿な嫌がらせをするような女を僕の婚約者には相応しくない!」

「嫉妬ですか…」

「お姉様、正直に罪を認めてください。そうすれば許してさしあげますから」


げんなりした表情をする。
今に始まったことではないが、アーデルハイドは悲しいのを通り越して馬鹿過ぎる婚約者に呆れる。

「なんと慈悲深いんだ。それに引き換え、見た目も醜ければ性格も陰湿だな。貴様は私の愛しい人を悲しませた罪は大きいが、慈悲を与え流罪にしてやる」


「お姉様、罪を償ってください。私はお姉様を許します」

涙を浮かべながら告げる姿は味方によっては悲劇のヒロインに見えるだろうが、とんだ茶番劇だと思った。


「そうですか」

「行先は隣国の南国だ…貴様のような極悪人には相応しいだろう」


「そうですか」

もはや何も言う気になれない。
この時間ですら無駄のように思えてならない。


「何てことを…こんな酷い事を!この恩知らず」


「育て方を間違えたようだ。妹を苛めるとは‥お前はどうしてこんなことを」


涙ながらに訴える母親。
しかし、アーデルハイドは嫌悪感しか感じなかった。


恩など言われても、自分を育ててくれたのは乳母と侍女で、後は常にほったらかしだった。

母親は長女であるアーデルハイドを完璧な令嬢にすることだけを考え、妹のアイシャは自由にさせていた。

一度だって甘やかすことも、優しく頭を撫でてくれたこともない。

そんな親に愛情を抱く方が無理である。


「なんと冷酷な女だ。慈悲をかけてやったのに…もういい。今すぐこの女を追放しろ」

「立て!」

婚約者は騎士に無理矢理立たせ後ろから拘束する。


「もう長い髪も必要無い」

バサッ!

剣でばっさりと髪を切り落とされてしまう。


貴族令嬢にとって公衆の面前の前で晒し者にされ婚約破棄をされたあげく髪を切られるのは屈辱的なことだった。


「泣きもしないとは…やはり冷酷な女だ」


地面に叩きつけられても悲鳴一つ上げなかったのは涙すら枯れてしまったからだ。


この馬鹿過ぎる男に。

そしてお花畑の妹と、馬鹿過ぎる両親に対して残念な気持ちを抱いた。


こんな公でこんな馬鹿な事をそれば翌日にはこの事件は広がり醜聞スキャンダルとなるのに。


冷めた目で見ながらアーデルハイドは非道な仕打ちを受けながら国外追放となるのだった。



しおりを挟む
感想 291

あなたにおすすめの小説

【完結】元婚約者の次の婚約者は私の妹だそうです。ところでご存知ないでしょうが、妹は貴方の妹でもありますよ。

葉桜鹿乃
恋愛
あらぬ罪を着せられ婚約破棄を言い渡されたジュリア・スカーレット伯爵令嬢は、ある秘密を抱えていた。 それは、元婚約者モーガンが次の婚約者に望んだジュリアの妹マリアが、モーガンの実の妹でもある、という秘密だ。 本当ならば墓まで持っていくつもりだったが、ジュリアを婚約者にとモーガンの親友である第一王子フィリップが望んでくれた事で、ジュリアは真実を突きつける事を決める。 ※エピローグにてひとまず完結ですが、疑問点があがっていた所や、具体的な姉妹に対する差など、サクサク読んでもらうのに削った所を(現在他作を書いているので不定期で)番外編で更新しますので、暫く連載中のままとさせていただきます。よろしくお願いします。 番外編に手が回らないため、一旦完結と致します。 (2021/02/07 02:00) 小説家になろう・カクヨムでも別名義にて連載を始めました。 恋愛及び全体1位ありがとうございます! ※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)

(完結〉恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え? 私のことはお気になさらずに

にのまえ
恋愛
夏のおとずれ告げる王城主催の舞踏会。 この舞踏会に、婚約者のエスコートなく来ていた、公爵令嬢カサンドラ・マドレーヌ(18)は酔って庭園にでてきた。 酔いを冷ましながらバラ園の中を歩き、大昔国を護った、大聖女マリアンヌの銅像が立つ噴水の側で。 自分の婚約者の皇太子アサルトと、妹シャリィの逢瀬を見て、カサンドラはシャックを受ける。 それと同時にカサンドラの周りの景色が変わり、自分の悲惨な未来の姿を垣間見る。 私、一度死んで……時が舞い戻った? カサンドラ、皇太子と婚約の破棄します。 嫉妬で、妹もいじめません。 なにより、死にたくないので逃げまぁ〜す。 エブリスタ様で『完結』しました話に 変えさせていただきました。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。

ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。 俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。 そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。 こんな女とは婚約解消だ。 この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

処理中です...