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6.月とスッポン

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貴族に大臣や聖職者が見ている中、大きな声ではっきりと宣言するジェイコブだったが、彼はある意味、典型的な貴族であった。

領地の仕事を補佐するでもなく、国政に関わっているわけでもない。
だからこそ、自分が何を言っているか重く考えていないのだが、公の場で宣言している以上撤回はできない。


「聞きまして教皇陛下、聖職者の皆様方」

再度確認をするクリスティーナは聖職者が頷き、最後に国王に視線を向ける。


「良かろう、今を持ってソフィア・ハクセンは聖女の役目を解き、オフィーリア・バイツンを聖女とする!」

大勢の前で告げ、宝玉にオフィーリアの名前が刻まれる。

そして宰相が誓約書を読み上げる。


「ジェイコブ・ローリエの婚約破棄をしたと言う事で、婚約に発生したこれまでの金品は全て返金並びに、円満な婚約解消ではなく、片方に過失があったため慰謝料を支払うことを義務付ける」

「は?」

「それから、ローリェ家は直ちに支度金を返金するように」


ジェイコブは耳を疑った。

「それからこれまでオフィーリア嬢が衣食住の費用はソフィア嬢に支払いが行ってましたが、婚約破棄となれば他人。今後はローリェ侯爵家がすべて負担する事になりますがよろしいですな」

「待て、何故…」


どうしてローリェ侯爵家が負担しなくてはならないのかと尋ねると。


「バイツン家は伯爵家でありますが下級貴族よりも貧しく、この度の戦いに置いて領地は焼け野原になっております。故に彼女の後見人が支払わなくてはなりません」


「えっ…領地が!」

「まぁ、バイツン家に限らずですが」


魔王を封印しても戦争の爪痕は酷かった。
魔王軍に乗じて、あくどい真似をする者や、村を焼いて私利私欲の為に奪う、殺す等の殺戮を繰り返した。

その所為で今でも地方の領地は酷い有様だった。

「例にもれずローリェ侯爵領地も酷い状況ですが、全て承知のようですし問題ありませんな。婚約時にも前ハクセン子爵は万一ご息女が遺産を継承しない場合は全て寄付に宛てると申していましたし」


「そうだな…ソフィア嬢。どうする?」


「平民となる私に不要ですわ。何より今は国が大事の時です。父が残してくれた遺産は全て国へ…いいえ、騎士団や貧しい村に寄付してくださいませ」

「すまぬな。せめて給金は出来るだけ…」

「そちらも必要御座いません。私は見返りを求める気はありません」

「陛下、私に支払われるお金も必要ありません」

ソフィアに続き、ユリウスも恩賞を必要ないと告げて辞退したのだった。

その姿は愛国精神が強く自分だけ良ければいいと思う貴族とは雲泥の差だと他国の代表は感心していた。

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