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黒幕

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薄暗い場所で、灯りは僅かな蝋燭だけ。


「うっ…」

「目が覚めたの?」


見上げると蔑んだ目を向けるルクレチア。





「気に入らないわ」

「うっ!」

髪を鷲掴みされ痛みが走る。

「この顔、この髪に瞳…不愉快だわ」

(何故…どうしてここまで私を憎むの?)


ずっと疎まれているとは思っていた。
前妻の娘は邪魔で扱いずらいモノだというのは解っていたが。


けれどここまでの悪意を向けられる理由が解らない。


「どうして」

「どうしてですって!」

「うっ!」

前髪を掴み上げナイフを首元に突きつけられる。

「アンタがあの女と同じだったからよ!何もかも持っていて…私から奪ったからよ!この悪魔」

ルクレチアはヒステリックに叫ぶもアレーシャの心はとても静かだった。


「あの女さえいなければセルジオも私のモノだった!!」

苦しみながら吐き出された言葉。
決して手に入らないモノに手を伸ばし続ける。


「だから母から奪ったのですか」

「そうよ!!なのにユスティーナは生きていた!アンタの中に!」


死んだはずの姉の幻影に縛られ続ける。

「人から奪って、その先に何を得るのです」

「何?」

「人より恵まれて持っているものがあるのに…さらに欲を持ち続けるなんて。なんて可哀想な人」

ポロリと涙が流れる。


「お前!!」

持っていた鞭で叩く。


「持てども持てども飽き足りない心。満たされることがないなんて…ずっと虚しいままだわ」

「黙れ!!」

「哀れな叔母様…心が満たされることはないなんて」


贅沢をしてどんなにお金を持っていても満たされない心。

どれだけ寂しいことか。
心から同情をした。


「どんなにお金を得ても貴女は満たされない。だって心が貧しいのだから」

「うるさい!」

「貴女は本当の意味で不幸な人だわ。カテリーナも」


長い間苦しみもがき続けて来たルクレチア。
母としての愛情を抱いていなくても血のつながりを断てない。


「お母様は貴女を最後まで気にかけていた…貴女が不憫で仕方ないから」

「黙れと言っているでしょ!!」

「母は貴女を許しました。そして私も」


鞭で打たれ血を流しながらも真っすぐに見据える。


「罪を償ってほしかった…」

「何様よ!!」

「貴女が何様ですか!!」

バシッ!

鞭を握りしめ声を荒げる。


「人のモノを奪っているのは貴女でしょ!己のして来た事を悔い改めることもなく罪を重ねお父様を裏切った」

理由はどうであれ妻として娶り大切にして来たのを裏切ったのだ。


「王族に無礼を働いた時点で死刑だったのを王族の皆様は温情をかけてくださったのに…背いたのです」


哀れだとは思う。
ずっと強欲に欲しがり続けて来た結果がこれだ。


「王族に…王妃になったつもり?」

「国もお父様も私が守ります。この身がどうなろうとも」


例えこの場で殺されようとも、刺し違えなくてはならない。


「それは大きな間違いよ」


甘い香りと一緒に現れたのは妖艶でありながら気品の欠片もない女性だった。





「クルエラ妃」

雰囲気で解った。



「二人を牢屋から出したのですねクルエラ様」

「そう。私が鍵を開けてあげたの。思った以上に賢いわね」


あの塔は厳重な警戒態勢をされている。
鍵はもちろんだが結界を解かなくてはならない。

王族やそれに近しい貴族ぐらいしかその解き方も解らないが、側室ならば知っているだろう。


(黒幕はクルエラ様‥‥)


まるで全てを飲み込む闇そのものように見えてならなかった。


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