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味方
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翌日、侍従に紹介された少女に驚く。
「あら…ユリア」
アレーシャは笑みを浮かべ手を握る。
「お会いしたかったのよ。貴女が官僚になられて会えなくなって」
見習い時代に何度か交流があった。
当初ユリアは官僚になるべく宮廷に出仕していたのだ。
服装を見る限り出世して重役を任される立場になったのだと知り喜ぶ。
ずっと官僚になり王を支えることを望んでいたユリアを影ながら応援していたので自分のことのように喜んでいた。
「あら?でもなぜ私に会いに来てくださったのですか?」
レオンハルトに紹介される形だったことにも首をかしげる。
「彼女は本日付けで君の侍女となったんだ」
「はい?」
「若輩者ながら精いっぱい仕えさせていただきたく…」
「待ってください!」
テーブルを無作法に叩く。
「ユリアは官僚です」
「ああ、言葉通りだ」
官僚となれば出世に幅も広がる。
平民が出世する道が開けることから官僚を目指す人間は少なくないが狭き門で官僚補佐になるのも難しい。
一人前の官僚になるのも並大抵の努力ではない。
「アレーシャ、怒らないでくれ」
「いくらなんでも…そんな」
ユリアが官僚になることを望んでいたのを知っている。
聡明で誰よりも優秀だったが、その所為で貴族から虐めまがいな嫌がらせを受けながらも歯を食いしばっていたことを知っている。
(こんなの…あんまりだわ)
上からの命令だったならば逆らうことはできない。
解っていても歯がゆく感じた。
「アレーシャ様、誤解をなさらないでください」
「え?」
「この度のお役目は私から願い出たのです」
ユリアの言葉に顔をあげる。
「どうして…」
「私は官僚としての夢を追い続けることができたのはアレーシャ様の存在が支えでした」
未だに身分が枷となり官僚でも平民だという理由で疎まれる。
特に見習い時代にユリアは男爵家であるが平民と変わらない暮らしをしていることから同期に陰湿な嫌がらせを受け続け常に孤独と戦っていた。
「この広い宮廷で唯一私に優しくお声をかけてくださったのはアレーシャ様だけでした」
「それは…」
「ご自分のお辛い状況で貴方様は私達のような者を庇ってくださいました。ですから私官僚になったら決めていたんです」
意志の強い瞳でアレーシャを見つめる。
「出世して、アレーシャ様の隣に立とうと」
「ユリア…」
「王室に入られるアレーシャ様の助けになりたく思います」
ユリアの意志もまた固く、覆すことはできなかった。
「アレーシャ、君の侍女になった所為で彼女の夢を奪ったと思っていないか?」
「ええ…」
「侍女と言っても王室付きとなれば状況は変わって来るよ」
レオンハルトの言葉に瞳を揺らせる。
アレーシャの危惧していることは一つだけだった。
ユリアの夢を奪う事。
将来を潰してしまうんじゃないかと危惧していた。
「彼女は表向き君の侍女となっているが、それは表向きだ」
「どういうことですか?」
「ようするに君の補佐だ。彼女が望めば侍女に留まらず女官として出世もできる」
レオンハルトの言いたいことを理解した。
官僚として優秀なユリアを侍女として迎えるが、ユリアが出世することも可能だということだ。
御付き侍女になったからといって縛り付けることはないということだ。
「なら…ユリアの夢を奪わなくても済むのですね」
「ああ」
ホッと安堵するアレーシャに苦笑するユリア。
「よろしくねユリア」
「はいアレーシャ様」
貴族の令嬢は握手を求めた入りはしない。
本来ならばありえないことだったが、ユリアはその意図をくみ取り手を取った。
「私と貴女は同志ですもの」
「はい!」
共に辛い日々を送り結ばれた友情は今も続いていた。
「あら…ユリア」
アレーシャは笑みを浮かべ手を握る。
「お会いしたかったのよ。貴女が官僚になられて会えなくなって」
見習い時代に何度か交流があった。
当初ユリアは官僚になるべく宮廷に出仕していたのだ。
服装を見る限り出世して重役を任される立場になったのだと知り喜ぶ。
ずっと官僚になり王を支えることを望んでいたユリアを影ながら応援していたので自分のことのように喜んでいた。
「あら?でもなぜ私に会いに来てくださったのですか?」
レオンハルトに紹介される形だったことにも首をかしげる。
「彼女は本日付けで君の侍女となったんだ」
「はい?」
「若輩者ながら精いっぱい仕えさせていただきたく…」
「待ってください!」
テーブルを無作法に叩く。
「ユリアは官僚です」
「ああ、言葉通りだ」
官僚となれば出世に幅も広がる。
平民が出世する道が開けることから官僚を目指す人間は少なくないが狭き門で官僚補佐になるのも難しい。
一人前の官僚になるのも並大抵の努力ではない。
「アレーシャ、怒らないでくれ」
「いくらなんでも…そんな」
ユリアが官僚になることを望んでいたのを知っている。
聡明で誰よりも優秀だったが、その所為で貴族から虐めまがいな嫌がらせを受けながらも歯を食いしばっていたことを知っている。
(こんなの…あんまりだわ)
上からの命令だったならば逆らうことはできない。
解っていても歯がゆく感じた。
「アレーシャ様、誤解をなさらないでください」
「え?」
「この度のお役目は私から願い出たのです」
ユリアの言葉に顔をあげる。
「どうして…」
「私は官僚としての夢を追い続けることができたのはアレーシャ様の存在が支えでした」
未だに身分が枷となり官僚でも平民だという理由で疎まれる。
特に見習い時代にユリアは男爵家であるが平民と変わらない暮らしをしていることから同期に陰湿な嫌がらせを受け続け常に孤独と戦っていた。
「この広い宮廷で唯一私に優しくお声をかけてくださったのはアレーシャ様だけでした」
「それは…」
「ご自分のお辛い状況で貴方様は私達のような者を庇ってくださいました。ですから私官僚になったら決めていたんです」
意志の強い瞳でアレーシャを見つめる。
「出世して、アレーシャ様の隣に立とうと」
「ユリア…」
「王室に入られるアレーシャ様の助けになりたく思います」
ユリアの意志もまた固く、覆すことはできなかった。
「アレーシャ、君の侍女になった所為で彼女の夢を奪ったと思っていないか?」
「ええ…」
「侍女と言っても王室付きとなれば状況は変わって来るよ」
レオンハルトの言葉に瞳を揺らせる。
アレーシャの危惧していることは一つだけだった。
ユリアの夢を奪う事。
将来を潰してしまうんじゃないかと危惧していた。
「彼女は表向き君の侍女となっているが、それは表向きだ」
「どういうことですか?」
「ようするに君の補佐だ。彼女が望めば侍女に留まらず女官として出世もできる」
レオンハルトの言いたいことを理解した。
官僚として優秀なユリアを侍女として迎えるが、ユリアが出世することも可能だということだ。
御付き侍女になったからといって縛り付けることはないということだ。
「なら…ユリアの夢を奪わなくても済むのですね」
「ああ」
ホッと安堵するアレーシャに苦笑するユリア。
「よろしくねユリア」
「はいアレーシャ様」
貴族の令嬢は握手を求めた入りはしない。
本来ならばありえないことだったが、ユリアはその意図をくみ取り手を取った。
「私と貴女は同志ですもの」
「はい!」
共に辛い日々を送り結ばれた友情は今も続いていた。
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