17 / 63
嘲笑い
しおりを挟む
風邪気味だったアレーシャは冷たい水を被ってしまいさらに悪化した。
休むわけにはいかずフラフラになりながら出仕する。
いつも通りのはずだったが、身近な人間が見ればすぐわかるもので。
「アレーシャ、どうしたんだ」
「ルーファス様。何か?」
「何かではない!顔色が悪いではないか!体調が良くないのではないか」
腕を掴むといつもは冷たい手が燃えるように熱かった。
「やはり熱があったのだな。誰か氷を持て!」
「はっ!」
ルーファスは直ぐに側近に氷を持ってこさせる。
「お兄様、どうなさったの?」
「アレーシャの体調が悪い」
「え?ちょっと失礼します」
普段はドレスの裾を乱し髪を翻すことがないサーシャが無作法なことをした。
「服が濡れているわ…急いで乾かしたのではなくて?」
「えっ…いえ、雨に」
「昨日からずっと晴れですわ。朝から雫一つとして落ちていませんのよ!」
「腕を見せろ」
「殿下!」
女性の服をめくる行為は紳士としてはしてはならいことだと従者は止めるが…
「痣だらけではないか!」
「まさかあの人達に」
今まで我慢していた。
他所の家庭のことであるならば口出ししてはいけないと思っていたが、そろそろ限界だった。
これ以上黙って見ていられなかったがそこに現れたのは。
「何ですの騒々しい」
現れたのは豪華に着飾り化粧をしたカテリーナだった。
「王女殿下に王太子殿下、ごきげんよう」
「ああ」
「ええ、ごきげんよう」
眉をしかめながらも挨拶をする。
王族として常に冷静であれと教えられて来たからだ。
「お姉様、無礼にも程がありますわよ。そんな醜態を晒すなんて」
膝をつきぬれタオルを渡されている姿を見て扇で口元を隠し不敵に微笑む。
「体調管理もろくにできないようでは侍女失格ですわ。それにそんな汚らしいお顔で宮廷に出仕するなんて…プライム家に泥を塗るおつもりですか」
「なっ!」
黙っていることをいいことに言いたい放題言う。
「万一舞踏会でそのようなおふるまいをされては伯爵家は恥をかきますわ。不肖の姉がご無礼を」
さも姉の失態を詫びて優秀な妹であることを売り込む姿に怒りのボルテージが上がって行く。
(やめろサーシャ!)
(何故?今すぐこの馬鹿をミンチにしてやりたいですわ)
(する価値もない)
母親同然にしたっているアレーシャを散々苛めて罵倒するカテリーナには嫌悪感以外はない。
ルーファスも姉同然に慕っているので同じ気持ちだがここで反論しても無駄だ。
「彼女の体調があまり良くないようで。普段から無理に働いているんだ」
「まぁ…気が緩み過ぎですわ。そのうえ王太子殿下のお手を煩わせるなんて」
ワザと大きな声で言うカテリーナ。
通りかかった令嬢も聞いて陰口を言う始末だ。
「王太子殿下のお手を煩わせたですって?」
「本当にどうしてあんな方が…」
「教育係を変えるべきよね」
状況は悪化の一途をたどる。
完全に見せ者扱いになっていたところに最悪な人物が現れる。
「どうしたのですカテリーナ」
「お母様、お姉様が粗相を」
「なんですって?まったくどこまで恥知らずなのかしら。侍女としても女性としても出来損ないなんて。どうしてお前など生まれて来たのかしら」
公衆の面前でアレーシャを咎める。
令嬢はクスクス笑い令息も蔑んだ目を向けている。
「王女殿下、恐れながら侍女をお選びになるべきかと。教育係として相応しくありませんわ」
「本当に何をやってもダメな姉ね?母親に似て」
これまで耐え忍んでいたが、母のことまで言われ耐え切れなくなる。
(私の事だけならいい…でも!)
最愛の母のことまで言われては耐え切れないと思ったその時。
「何事だ」
凛とした声が響いた。
休むわけにはいかずフラフラになりながら出仕する。
いつも通りのはずだったが、身近な人間が見ればすぐわかるもので。
「アレーシャ、どうしたんだ」
「ルーファス様。何か?」
「何かではない!顔色が悪いではないか!体調が良くないのではないか」
腕を掴むといつもは冷たい手が燃えるように熱かった。
「やはり熱があったのだな。誰か氷を持て!」
「はっ!」
ルーファスは直ぐに側近に氷を持ってこさせる。
「お兄様、どうなさったの?」
「アレーシャの体調が悪い」
「え?ちょっと失礼します」
普段はドレスの裾を乱し髪を翻すことがないサーシャが無作法なことをした。
「服が濡れているわ…急いで乾かしたのではなくて?」
「えっ…いえ、雨に」
「昨日からずっと晴れですわ。朝から雫一つとして落ちていませんのよ!」
「腕を見せろ」
「殿下!」
女性の服をめくる行為は紳士としてはしてはならいことだと従者は止めるが…
「痣だらけではないか!」
「まさかあの人達に」
今まで我慢していた。
他所の家庭のことであるならば口出ししてはいけないと思っていたが、そろそろ限界だった。
これ以上黙って見ていられなかったがそこに現れたのは。
「何ですの騒々しい」
現れたのは豪華に着飾り化粧をしたカテリーナだった。
「王女殿下に王太子殿下、ごきげんよう」
「ああ」
「ええ、ごきげんよう」
眉をしかめながらも挨拶をする。
王族として常に冷静であれと教えられて来たからだ。
「お姉様、無礼にも程がありますわよ。そんな醜態を晒すなんて」
膝をつきぬれタオルを渡されている姿を見て扇で口元を隠し不敵に微笑む。
「体調管理もろくにできないようでは侍女失格ですわ。それにそんな汚らしいお顔で宮廷に出仕するなんて…プライム家に泥を塗るおつもりですか」
「なっ!」
黙っていることをいいことに言いたい放題言う。
「万一舞踏会でそのようなおふるまいをされては伯爵家は恥をかきますわ。不肖の姉がご無礼を」
さも姉の失態を詫びて優秀な妹であることを売り込む姿に怒りのボルテージが上がって行く。
(やめろサーシャ!)
(何故?今すぐこの馬鹿をミンチにしてやりたいですわ)
(する価値もない)
母親同然にしたっているアレーシャを散々苛めて罵倒するカテリーナには嫌悪感以外はない。
ルーファスも姉同然に慕っているので同じ気持ちだがここで反論しても無駄だ。
「彼女の体調があまり良くないようで。普段から無理に働いているんだ」
「まぁ…気が緩み過ぎですわ。そのうえ王太子殿下のお手を煩わせるなんて」
ワザと大きな声で言うカテリーナ。
通りかかった令嬢も聞いて陰口を言う始末だ。
「王太子殿下のお手を煩わせたですって?」
「本当にどうしてあんな方が…」
「教育係を変えるべきよね」
状況は悪化の一途をたどる。
完全に見せ者扱いになっていたところに最悪な人物が現れる。
「どうしたのですカテリーナ」
「お母様、お姉様が粗相を」
「なんですって?まったくどこまで恥知らずなのかしら。侍女としても女性としても出来損ないなんて。どうしてお前など生まれて来たのかしら」
公衆の面前でアレーシャを咎める。
令嬢はクスクス笑い令息も蔑んだ目を向けている。
「王女殿下、恐れながら侍女をお選びになるべきかと。教育係として相応しくありませんわ」
「本当に何をやってもダメな姉ね?母親に似て」
これまで耐え忍んでいたが、母のことまで言われ耐え切れなくなる。
(私の事だけならいい…でも!)
最愛の母のことまで言われては耐え切れないと思ったその時。
「何事だ」
凛とした声が響いた。
363
お気に入りに追加
16,399
あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結
まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。
コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。
「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」
イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。
対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。
レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。
「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」
「あの、ちょっとよろしいですか?」
「なんだ!」
レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。
「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」
私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。
全31話、約43,000文字、完結済み。
他サイトにもアップしています。
小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位!
pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。
アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。
2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」

妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜
ゆうき
恋愛
とある子爵家の長女であるエルミーユは、家長の父と使用人の母から生まれたことと、常人離れした記憶力を持っているせいで、幼い頃から家族に嫌われ、酷い暴言を言われたり、酷い扱いをされる生活を送っていた。
エルミーユには、十歳の時に決められた婚約者がおり、十八歳になったら家を出て嫁ぐことが決められていた。
地獄のような家を出るために、なにをされても気丈に振舞う生活を送り続け、無事に十八歳を迎える。
しかし、まだ婚約者がおらず、エルミーユだけ結婚するのが面白くないと思った、ワガママな異母妹の策略で騙されてしまった婚約者に、婚約破棄を突き付けられてしまう。
突然結婚の話が無くなり、落胆するエルミーユは、とあるパーティーで伯爵家の若き家長、ブラハルトと出会う。
社交界では彼の恐ろしい噂が流れており、彼は孤立してしまっていたが、少し話をしたエルミーユは、彼が噂のような恐ろしい人ではないと気づき、一緒にいてとても居心地が良いと感じる。
そんなブラハルトと、互いの結婚事情について話した後、互いに利益があるから、婚約しようと持ち出される。
喜んで婚約を受けるエルミーユに、ブラハルトは思わぬことを口にした。それは、エルミーユのことは愛さないというものだった。
それでも全然構わないと思い、ブラハルトとの生活が始まったが、愛さないという話だったのに、なぜか溺愛されてしまい……?
⭐︎全56話、最終話まで予約投稿済みです。小説家になろう様にも投稿しております。2/16女性HOTランキング1位ありがとうございます!⭐︎

【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる