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第四章未来への扉
38.隠された思い
しおりを挟む幼い頃から誰よりも努力家でプライドが高かったサマンサ嬢は王族として、公爵令嬢として努力していた。
周りは彼女を天才だと言うが、彼女は周りが思う程器用ではない。
むしろ不器用過ぎるほどだった。
けれど周りは彼女の努力を才能だけ片付け、さらにプレッシャーをかけた。
公爵令嬢として完璧だけを求め、少しでも間違いをすれば嘲笑い、公爵家の娘として欠陥品だという者もいた。
完璧な人間などいないというのに。
最初からすべてを思っている人間がいると言えようか。
ジルベルトもニコルも最初から上手くできたわけではない。
ニコルに至っては常に危ない綱渡りをしていたからこそ身に着けたのだろうし、ジルベルトも努力していた。
才能があるのは事実だが、努力した日々までも才能と片付けられるのはあまりにも酷すぎる。
心無い言葉に傷つきながらも弱い部分を見せなかった。
なのに結果的に婚約者候補から外され憐れみの視線を向けられていた。
「サマンサ嬢は…」
「ジュリアス様、私はジルベルト様を守って差し上げたかった。でも、その思いは家族に対する気持ちですわ。あの方は孤独ですわ。ですからお心に寄り添って差し上げたかった」
「だが…」
「私の気持ち、まだお気づきではございませんの?」
まっすぐに見つめるサマンサ嬢は私に近づく。
「えっ…」
身動きが取れない私にサマンサ嬢はそっと唇を重ねた。
「本当に鈍い方。私は心より愛している方はお一人ですわよ」
「は?」
「普段は優秀ですのに、本当に残念な程鈍いですわ。ちなみにジュリアス様のお気持ちも知ってますわ」
「えっ…はぁ?」
サマンサ嬢にキスをされたことに狼狽するも、私の気持ちが知られている事にも驚いた。
「幾度も待っても何も言ってくださいませんし…まぁ、慎重になるのも解りますが」
「いや…それは」
「ですから私から迫ることにいたしますわ。邪魔な女もいませんし」
いや、平然と言っていいのか。
嬉しくないわけではないが、世間体にも問題がある気が。
「どうせ世間体を気にしてますでしょう?」
「うっ…」
「ジルベルト様もお堅いですが、ジュリアス様もその上を行くお方ですわ。少しは姉君様を見習ったらどうですの?」
「あれを見習うのか!」
自由過ぎる姉上を見習うなんて無理だ。
王室が崩壊してしまうだろう。
幼少期に色々苦労が多かったが、その返しが来てアンナ正確になったが。
ある意味傲慢でもある姉上は、本当に欲しいと思った物は手段を択ばないでいた。
ベンノを手に入れる際もなりふり構わずだったからな。
「私が他の男の物になっても良いと?」
「君は物じゃないだろう…それに公爵令嬢でもある君に形見の狭い思いをさせるのは確実だ」
婚約破棄をしてまだ日が浅いし、しかも罪人となった女でもある。
「その程度の事でこの私の評価が変わるとお思いですの?」
「うっ…ないな」
「それに噂なんて、これから消すこともできますわ。それでお返事は?」
ここまでされて逃げるなんてヘタレだな。
いや、既にヘタレかもしれない。
「今から尻に敷かれそうだ」
「何を今さら…」
諦めた初恋はようやく実ることになった。
しかし、我が国は女性がたくし過ぎるような気もするが。
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