偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!

ユウ

文字の大きさ
上 下
134 / 137
第四章未来への扉

38.隠された思い

しおりを挟む


幼い頃から誰よりも努力家でプライドが高かったサマンサ嬢は王族として、公爵令嬢として努力していた。


周りは彼女を天才だと言うが、彼女は周りが思う程器用ではない。
むしろ不器用過ぎるほどだった。


けれど周りは彼女の努力を才能だけ片付け、さらにプレッシャーをかけた。
公爵令嬢として完璧だけを求め、少しでも間違いをすれば嘲笑い、公爵家の娘として欠陥品だという者もいた。


完璧な人間などいないというのに。
最初からすべてを思っている人間がいると言えようか。


ジルベルトもニコルも最初から上手くできたわけではない。
ニコルに至っては常に危ない綱渡りをしていたからこそ身に着けたのだろうし、ジルベルトも努力していた。


才能があるのは事実だが、努力した日々までも才能と片付けられるのはあまりにも酷すぎる。

心無い言葉に傷つきながらも弱い部分を見せなかった。
なのに結果的に婚約者候補から外され憐れみの視線を向けられていた。


「サマンサ嬢は…」

「ジュリアス様、私はジルベルト様を守って差し上げたかった。でも、その思いは家族に対する気持ちですわ。あの方は孤独ですわ。ですからお心に寄り添って差し上げたかった」

「だが…」

「私の気持ち、まだお気づきではございませんの?」


まっすぐに見つめるサマンサ嬢は私に近づく。


「えっ…」

身動きが取れない私にサマンサ嬢はそっと唇を重ねた。


「本当に鈍い方。私は心より愛している方はお一人ですわよ」

「は?」

「普段は優秀ですのに、本当に残念な程鈍いですわ。ちなみにジュリアス様のお気持ちも知ってますわ」

「えっ…はぁ?」


サマンサ嬢にキスをされたことに狼狽するも、私の気持ちが知られている事にも驚いた。


「幾度も待っても何も言ってくださいませんし…まぁ、慎重になるのも解りますが」

「いや…それは」

「ですから私から迫ることにいたしますわ。邪魔な女もいませんし」


いや、平然と言っていいのか。
嬉しくないわけではないが、世間体にも問題がある気が。


「どうせ世間体を気にしてますでしょう?」

「うっ…」

「ジルベルト様もお堅いですが、ジュリアス様もその上を行くお方ですわ。少しは姉君様を見習ったらどうですの?」

「あれを見習うのか!」


自由過ぎる姉上を見習うなんて無理だ。
王室が崩壊してしまうだろう。

幼少期に色々苦労が多かったが、その返しが来てアンナ正確になったが。

ある意味傲慢でもある姉上は、本当に欲しいと思った物は手段を択ばないでいた。


ベンノを手に入れる際もなりふり構わずだったからな。


「私が他の男の物になっても良いと?」

「君は物じゃないだろう…それに公爵令嬢でもある君に形見の狭い思いをさせるのは確実だ」

婚約破棄をしてまだ日が浅いし、しかも罪人となった女でもある。

「その程度の事でこの私の評価が変わるとお思いですの?」

「うっ…ないな」

「それに噂なんて、これから消すこともできますわ。それでお返事は?」


ここまでされて逃げるなんてヘタレだな。

いや、既にヘタレかもしれない。

「今から尻に敷かれそうだ」

「何を今さら…」


諦めた初恋はようやく実ることになった。


しかし、我が国は女性がたくし過ぎるような気もするが。


しおりを挟む
感想 295

あなたにおすすめの小説

平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。

なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。 そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。 そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。 クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 「アゼリア・フォン・ホーヘーマイヤー、俺はお前との婚約を破棄する!」 「王太子殿下、我が家名はヘーファーマイアーですわ」  公爵令嬢アゼリアは、婚約者である王太子ヨーゼフに婚約破棄を突きつけられた。それも家名の間違い付きで。  理由は聖女エルザと結婚するためだという。人々の視線が集まる夜会でやらかした王太子に、彼女は満面の笑みで婚約関係を解消した。  王太子殿下――あなたが選んだ聖女様の意味をご存知なの? 美しいアゼリアを手放したことで、国は傾いていくが、王太子はいつ己の失態に気づけるのか。自由に羽ばたくアゼリアは、魔王の溺愛の中で幸せを掴む!  頭のゆるい王太子をぎゃふんと言わせる「ざまぁ」展開ありの、ハッピーエンド。 ※2022/05/10  「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過 ※2021/08/16  「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過 ※2021/01/30  完結 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】

小平ニコ
ファンタジー
幼少期から魔法の才能に溢れ、百年に一度の天才と呼ばれたリーリエル。だが、その才能を妬んだ姉により、無実の罪を着せられ、隣国へと追放されてしまう。 しかしリーリエルはくじけなかった。持ち前の根性と、常識を遥かに超えた魔法能力で、まともな建物すら存在しなかった隣国を、たちまちのうちに強国へと成長させる。 そして、リーリエルは戻って来た。 政治の実権を握り、やりたい放題の振る舞いで国を乱す姉を打ち倒すために……

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

処理中です...