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第四章未来への扉
36.破滅した公爵
しおりを挟む月を隠していた雲が消えて行く。
まるで光を覆い隠していた黒い影が浄化されたかのように光が差し込んだ。
「上手く行ったようですわね」
「ええ、とりあえず一安心ですわ」
私とナウシカ様はようやく安堵した。
まぁ、ニコル様もご一緒なのですから大丈夫だとは思っていました。
「くっ…この私によくも!」
「お黙り!」
ピシャッ!!
「ぎゃああ!!棘が…棘が刺さった!!」
「デブ公爵、貴方もこれまででしてよ?すべての証拠は押さえていますわ」
「本当に、くだらない事だけは、悪知恵が働くのですから」
屍のように横たわる馬鹿な男達に私達は鞭で叩きつける。
普通の鞭ではなく、薔薇の鞭呼ばれるもので魔力を込めれば鞭が棘に変わる。
勿論棘は毒がしこまれているので、少しでも触れれば麻痺で体が動かなくなる。
致命傷を受ければ後遺症も残り、一生毒に苦しむ仕組みだわ。
けれど、当然の報いね。
「本当は晒し首にしてあげたいのだけど、我が国では死刑は禁じられていますの」
「私達は無用な争いはしたくない平和主義ですので」
だから、手加減をしてあげているのだから感謝して欲しいですわ。
「嘘だ…アンタら絶対加減してないだろ!」
「お黙りなさい」
「ひぃ!」
オルレア公爵の雇った暗殺者集団が無礼にも私に言葉を放ったけれど。
「発言を許した覚えはなくてよ?」
「ぐっ…体が」
「ゆっくりとジワジワ毒が効いて行きますから。お前達が今まで不幸にした人間へ償いながら反省なさい」
見下すような視線を向けるナウシカ様の表情は私でも恐ろしいと思う程冷たく感じる。
流石、文官筆頭と呼ばれた父君を持つだけはありますわ。
ナウシカ様はある意味では官僚の鑑と言っても過言ではありません。
「オルレア公爵、貴方は公爵の地位を剥奪された後に王都より追放されるでしょう。そこで待っているのは栄光とは無縁の、日陰の生活ですわ」
「待て…私は!」
「貴方が散々馬鹿にして来た賊民の暮らしを身をもって体験なさいな?」
「待ってくれ…頼む!」
血筋至上主義であもあるこの男にとって、爵位を奪われ平民として生きるのは屈辱でしょう。
けれど、さらに重い沙汰が下るでしょう。
この国では偽りの鑑定をすることは罪。
しかも王族を手計り、聖女と巫女の暗殺計画を企てたのだから。
直接手を出さなくとも、ニコル様を暗殺しようとした証拠も挙がっているのだがら、裁判も意味もない。
けれど、あえて裁判にして見せしめにする。
二度とこんな馬鹿な真似ができないようにする為と、もう一つ。
「貴方は見せしめになってもらいますよ」
「止めてくれ!」
「命乞いをする罪なき人に今まで貴方は何をしたのかしらね?ゆっくり牢屋で反省なさいな。連れて行きなさい」
傍に控えている護衛騎士に告げ、連行させた。
「待って…私は!」
「立て!」
「この罪人が!」
力づくで連行されながらも声を張り上げるも意味はなく。
扉越しに空しく悲鳴が木霊した。
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