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第四章未来への扉
33.望み
しおりを挟む緊張感が少し緩みそうになったが、すぐに持ち直した。
まだ安心はできないからだった。
「お姉様、助けに来るのが遅くなってごめんなさい」
「いいえ、ありがとうベアトリス」
穴から出たベアトリスはオリヴィアを抱きしめた。
「けれど…」
「ニコル様からある程度は聞いているわ。けれど、これであの女を救う手段はないわ」
既に重罪を犯してしまっている。
聖女誘拐に加え、暴行に、巫女の殺人未遂をしてしまっているのだから。
「貴族の残党は、すぐに捕らえられるでしょう。サマンサ様達が上手くしてくださるわ」
「ええ」
ここにいないお姉様とナウシカ様を見ると正式な許可の元に貴族派の残党狩りを行ったのかもしれない。
彼らが受ける罰はかなり重いもので良くて癪剥奪に領地没収に王都追放の身。
悪くて辺境地にて永久労働を強いられ、監視される日々が続くのだろう。
考え方によっては死刑にしなのは慈悲と考えるかもしれない。
でも、一生日陰で暮らす身となるのだから生き地獄と思う人もいないわけじゃない。
「本当に救いようのない馬鹿だこと。でも…自業自得よね?」
「くっ…ベアトリス!」
地面で這いつくばるマリアナはベアトリスを睨みつける。
「おい、不用意に近づくな。こいつは、黒い妖精を自ら取り込んでも自我を持つほどの恐ろしい女だ」
聖虎が告げるも、ベアトリスは笑っていた。
「何を今さら?この女は、元から強欲だったのよ。黒い妖精に取り込まれる?ないわね?お姉様を憎み、自分を愛さないすべてを憎み、自分の意思で復讐をしたのよ」
「それでは何か?この女はオルレア公爵に利用されたのではないと?」
アレキサンドロス様が顔を顰めた。
ジュリアス様も信じられないような表情をしているが、自我が残っていたことはそういうことだ。
マリアナはオルレア公爵に利用されたように見えるが、マリアナ自身も使用していたのだ。
きっかけはオルレア公爵だけど、その過程を作ったのはマリアナ自身。
「そうでしょう?」
「だったらなんだというの?そうよ…私からすべてを奪った盗人からすべてを奪い返してやろうと思ったのよ!私を愛さない愚か者にも裁きを与えてやろうと思ったのよ!それの何が行けないの…私は何も悪くないわ」
「貴様は、どれほど国に混乱を招くか解っているのか!黒の妖精が穢れを王都に撒き散らせば」
「だからなんだというの?誰が苦しもうが知ったこっちゃないわ!」
「貴様!」
アレキサンドロス様の言葉をあざ笑うマリアナにとってすべては自分の踏み台と思っているのかもしれない。
「これ以上言っても無駄です。この女に貴族の矜持などありはしない。あるのは己の欲望だけ…最も貴族として相応しくない者です」
「ジルベルト!」
これ以上何を言っても無駄だと判断したのか、剣を手にかけるジルベルト様はマリアナを睨みつけた。
既に致命傷を負っているいるマリアナは逃げる手段もなかったのだが、違和感を感じる。
追い詰められているのに何故笑っているのだろうか。
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