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第四章未来への扉
28.貴族派
しおりを挟む蝶が舞い、私の肩に止まる。
「ニコル様?」
伝達として蝶を使うのは王族にでも限られた人間だけだった。
「ニコルが?」
「はい、例の事件を探しているのですが…えっ」
蝶が私の耳元に近づき、情報を伝達する。
聞かされた内容は恐るべき真実だった事だった。
「十年前に鑑定を行った鑑定師の関係者を調べたところ、その者はオルレア公爵家に出入りしていたようですわ」
「オルレア公爵…我がノーチェスト家と敵対する公爵家ですわ」
「元四大公爵家に入っていたが、マリアナの一件や、過度な民への粛清等でマルティーヌ妃から苦言を物申されていたと聞きます」
私の言葉にサマンサ様とナウシカ様が険しい表情で言った。
私も彼の噂ではいい話を聞いたためしはない。
何より王家の親族でありながら、度々国王陛下に王妃陛下のやることなすこと否定的だったとがある。
「マルティーヌ様の出自を毛嫌いしていましたし…王妃陛下の事も見下してましたわ」
「貴族絶対主義の代表だからな」
ジルベルト様も嫌な顔をしているのを見て、嫌味を言われ続けていたのが解る。
「ベアトリス様、ニコル様はどちらに?」
「はい、ベル・パルクロワイヤルですわ」
「えっ…貴族派の巣窟じゃないですか」
ベル・パルクロワイヤルとは、オルレア公爵の別邸でもありサロンを開いている邸だった。
しかも貴族派はそこで集まり悪だくみを考えているとニコル様に聞いたことがある。
今の貴族派は権力が失墜しているけど、安心はできないと聞いている。
「そんな危険な場所に…いや、ニコルなら行けるか」
「ええ、あの方なら…腹黒いですから詐欺まがいなことはお手モノですわ」
悪く言うつもりはありませんが、ニコル様ほど策士の才能がある方はいませんわ。
弱ったウサギの振りをして蛇を飲み込んでしまうような方ですから。
「それで、ニコル様はなんと?」
「オルレア公爵は優れた術師を集め、聖女に近しい力を持つ者を特定することに成功していたそうです。しかし、その為に、占いをさせた術者を犠牲にしてると」
「犠牲って…」
この国には優れた賢者や賢者に連なる神通力を持つ者がいます。
彼等は未来を予知する能力があるのですが、確実なものではありません。
しかりとある方法を使うことで神託と同様の占いができるのです。
それが人柱を使って占いをすること。
その為には巫女を生贄にして占いをする必要があります。
「館から、白骨が確認されたそうです」
「まさか!」
「ええ、神殿から去った巫女だと鑑定もできたとのこと。証拠はそろいましたわね」
私達が調べるよりも先にニコル様が動いてくださった事により、早く動くことができます。
「奴らはオリヴィアを始末したと思っているだろう」
「ええ、ならば泳がせておく必要があります」
「なら、別の死体を用意させましょう。部下に死体のコレクターがいます」
死体のコレクターなんているのね?
でも、今は時間が惜しいわ。
「私達も動きましょう…最悪の場合、解ってますわね?」
「皆様、この件にマリアナが関わっているのであれば、相応の罪を償わせるべきです。いいえ、償いなんて言葉は生ぬるすぎると思いますわ」
今回の一件にマリアナが無関係のはずがない。
絶対に関わっているはずだわ。
マリアナはお姉様を憎み復讐を考えているはず。
そして同時にマリアさんも。
急がないと本当に取り返しのつかないことに事になるかもしれない。
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