偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!

ユウ

文字の大きさ
上 下
109 / 137
第四章未来への扉

13.美しい心

しおりを挟む



地下牢を出て行き、王宮内にある一室にフェリシアを招く。


「大丈夫ですか」

「ええ、ありがとうございます。ベアトリス様」


縁を切ったとは言えど、血のつながりのある親がしでかしたことを詫びたかった。

でも、そんなのは自己満足だったので口にすることはない。


「どうか、そのようなお顔をなさらないでください」

「でも…」

「私はあの二人を恨みこそしても、ベアトリス様とオリヴィア様を恨む理由はありません。まぁ、あの馬鹿女は不愉快ですけど」

「フェリシア…」



地下牢でのやり取りを見守りながらも思った。
彼は愛情深く、優しい人だ。


幼くして神殿に仕える道を選んだのは、不幸続きだった母親がきっかけかもしれない。


フェルミーナ様は、あの男に婚約破棄を良いわされてからご両親を亡くしてすぐに修道女となったが、苦労が多く、精神的にも疲労が多かったことで病にかかってしまった。

けれど、病にかかりながらも修道女としてなすべきことをしたと聞かされている。
まだ見習いだった彼女に好意を抱いた侯爵様は、フェミリーナ様の過去を知りながらも生涯を共にしたいと修道院の院長にも頼み込んだのだ。


通常なら病気を患った修道女を妻に迎えるなどありえないが、侯爵様は情熱的な方だったとか。
短い残りの人生を自分と共に過ごして欲しいと、告白し、フェルミーナ様は、その告白を受け入れたと聞く。


医師の見立てでは余命一年と宣告されながらも、侯爵様の献身的な世話もあり、余命よりも長く生きることができたと聞くけど。


結婚後も苦労は多かっただろう。
社交界から追放されたも同然のフェルミーナ様は醜聞により精神的にも苦痛を与えられて来ただろう。

何より、婚約破棄の後にあの二人が正式な詫びを入れ、社交界での噂を消す努力をすれば…なんて思ったけど。


もしもなんて考えても今さらだ。



「母は、私に幸せだった。だから誰も恨むなと言いました」

「そう…」

「私も当初は、忘れようと思いました…でも、パーティーであの一家を見た時。どうしても許せなかった。あの男は母を捨てたことすら罪悪感を持っていなかった」


偶然パーティーで会った時、世間話で若かりし頃をの事を友人の話しているのを聞いたそうだ。


その内容というのは不愉快極まりない内容。

本人達は真実の愛を貫いたと自慢げに語る内容で、逆に言えばフェルミーナ様を侮辱する言葉だっただろうに。


「私の母を捨て、不誠実な事をしておきながら美談と語るあの男が許せなかった。あげく長女だけを愛し、次女であるオリヴィア様の事を知り不憫に思いました…あの男は変わって等なかった。人としても男としても、父親としても最低なのだと知りました」

「フェリシア」

「だから私は…」


地下牢ではあんな真似をしたが、フェリシアの本当の姿は優しい聖人のような人だった。


私から見ても思うわ。
自分で言うのもなんだけど性格が悪く腹黒な私だから言えるのは、根性がひん曲がった人気にとって心の綺麗な人は眩しく感じる者だわ。


お姉様しかり、フェリシアしかり。


二人共自分の為に怒ったりしないんだもの!


しおりを挟む
感想 295

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 「アゼリア・フォン・ホーヘーマイヤー、俺はお前との婚約を破棄する!」 「王太子殿下、我が家名はヘーファーマイアーですわ」  公爵令嬢アゼリアは、婚約者である王太子ヨーゼフに婚約破棄を突きつけられた。それも家名の間違い付きで。  理由は聖女エルザと結婚するためだという。人々の視線が集まる夜会でやらかした王太子に、彼女は満面の笑みで婚約関係を解消した。  王太子殿下――あなたが選んだ聖女様の意味をご存知なの? 美しいアゼリアを手放したことで、国は傾いていくが、王太子はいつ己の失態に気づけるのか。自由に羽ばたくアゼリアは、魔王の溺愛の中で幸せを掴む!  頭のゆるい王太子をぎゃふんと言わせる「ざまぁ」展開ありの、ハッピーエンド。 ※2022/05/10  「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過 ※2021/08/16  「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過 ※2021/01/30  完結 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう

【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」 婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からくなっていました。 婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。 ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/01  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過 2022/07/29  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過 2022/02/15  小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位 2022/02/12  完結 2021/11/30  小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位 2021/11/29  アルファポリス HOT2位 2021/12/03  カクヨム 恋愛(週間)6位

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

聖女の妹に幼馴染の王子をとられて婚約破棄「神に見捨てられた無能の職業は追放!」隣国で優秀な女性だと溺愛される

window
恋愛
公爵令嬢アンナ・ローレンスはグランベル王国第一王子ダニエル・クロムハートに突然の婚約破棄を言い渡された。 その理由はアンナの職業にあった。職業至上主義の世界でアンナは無能と言われる職業を成人の儀で神に与えられた。その日からアンナは転落人生を歩むことになった。公爵家の家族に使用人はアンナに冷たい態度を取り始める。 アンナにはレイチェルという妹がいた。そのレイチェルの職業は神に選ばれた人しかなれない特別な職業と言われる聖女。アンナとレイチェルは才能を比較された。姉のアンナは能力が劣っていると言われて苦しい日常を送る。 そして幼馴染でもある婚約者のダニエルをレイチェルに取られて最終的には公爵家当主の父ジョセフによって公爵家を追放されてしまった。 貴族から平民に落とされたアンナは旅に出て違う国で新しい生活をスタートする。一方アンナが出て行った公爵家では様々な問題が発生する。実はアンナは一人で公爵家のあらゆる仕事をこなしていた。使用人たちはアンナに無能だからとぞんざいに扱って仕事を押し付けていた。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

冤罪により婚約破棄された令嬢は復讐したい

ゆうゆう
恋愛
婚約者に冤罪をかぶせられて、婚約破棄された令嬢は見方を得て復讐する気になりました。

処理中です...