偽りの家族を辞めます！私は本当に愛する人と生きて行く！

第四章未来への扉

12.最後の挨拶

何一つ知らなかった馬鹿な男。


いいえ、知ろうともしなかったのね。


「自分の力を過信した結果よ。お前は多くの人の人生を狂わせ、実の娘すら殺そうとした救いようのない愚か者」

「殺す等…」

「死んでも良いと思ったんじゃない？お姉様の事は…傷物になって落胆したんでしょ？だって自分達には見てくれだけは美しい娘がいるのだから。お前と同じく他者を愛することもできない最低な人間のね？」

「最低…私は…！」

「悲劇の主人公の役になりきって楽しかったかしら？」


何処まで行っても自分の非を認めない。


いいえ、認めるのが怖いのかもしれないわね。

「私達はもう他人だし、もう会うこともないでしょう」

「待ってくれベアトリス！」

「気安くその名を呼ぶな。何様なの？私は女伯爵でお前は平民。しかも罪人が私と目を合わせるなど図々しい」


私の言葉に絶句し怯えた表情をする。


「何よ…何よ！私はどうなるの！」

「しばらくは彼女達の監視の下にある部隊の寮で下働きをするわ。更生の余地があると判断されれば修道院にて余生を過ごせるわ。ただし、二度と還俗に戻ることは許されないわ」

「嫌よ…そんなの！」


「本来ならば簀巻きにされて島流しになるか、終身刑で一生牢屋で過ごすのに情けをかけられたのよ。選択権なんてあると思っていて…なんなら今すぐ引導を渡してもいいのよ」


この女はどれだけ情けをかけられているか解っているのか。
城下町に放り出されれば生きて行くことはできないだろうし、下級貴族に見つかればどんな目に合わされるか解らない。


とは言え隣国に行けば、国の恥を晒すことになる。
国内から出さずに監視するならば一生牢屋で永久労働になるか、辺境地に送り、ラヴィーニャ家の邸で下働きとして働くかだった。

ただし、あそこメイド長は体罰として暴力を振るって来る。
温室育ちの貴族令嬢は正気を保っていられるはずもなく、ジュリアス様が彼女達に監視を命じた。


しばらくは漢女部隊の元で下働きをして更生の見込みがあれば修道院に行かせるとのことだ。

甘すぎるぐらいなのに。



「こんな屑に母上は翻弄されたのね」

「フェリシア…辛いでしょうけど」

「でも、私の中で決着はついたわ。これで母の救われるかもしれない。だって、こいつらの向かう先は最悪なものだから」

「ええ…じゃあ行きましょうか」


私はフェリシアの手を取りその場を離れる。


「待って…ベアトリス」

「ごきげんよう？ただのマリアナ」


私に助けを求めるも無駄だわ。


助ける理由も必要もないのだから。


私が地下牢を出た後、クララとレベッカの声が響き、彼等の悲鳴が木霊した。