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第四章未来への扉

9.元婚約者の面影

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何故だ。

ありえない!

どうしてあの女がここにいるんだ?


「随分と酷い言われようですね?私を裏切り、その方と浮気をして私を辱めておいて」

「いやぁぁぁ!来ないで」

「政略結婚は嫌だと言って逃げ出した。私だって好きでもない男に泣く泣く嫁ごうと思ってましたのに、私を悪女に仕立て上げ社交界から爪はじきにされた後は大変でしたのよ?」


じりじりと詰め寄って来るフェミリーナは終始穏やかな笑顔を浮かべているが、それが余計に不気味に思えてならなかった。


「私は傷物令嬢となり、社交界ではありもしない噂を流され…その後はどうなったかお判りでしょうに?婚約破棄を受けた令嬢は年老いた寂しい貴族の慰めものになるか、修道院に行くかの二つです」

「私は…私は悪くな…きゃあ!」

牢屋に手を伸ばし、妻の髪を引っ張るフェミリーナは告げた。

「婚約破棄になって、両親は苦労続き…我が一族は没落の一途を辿りましたわ。母はその後病で亡くなり、父も過労で亡くなりましたの…まだ無力だった私は幼い妹を抱いて修道院に入るも…形見の狭い思いをしてきました」

「やめて…」

「貧しい思いをしましたわ。貴族令嬢として育った私にとって修道院の生活は苦しかった…けれども、その一方で救いもありました」

「救いだと?」


妻の髪を引っ張りながら私を見て笑みを浮かべながら手を伸ばす。


「そう、貴方のような最低な男の情婦になりなさがらなかったこと…いいえ?貴方がこの女の情夫かもしれませんわね?」

「貴様…ぐぁ!」

侮辱を受け、私は黙っていられずにいたが首を絞められる。

「本当にいい恰好。不埒な親から不埒で愚かな娘が生まれるのだから…完璧にこだわった貴方達は、娘が王子妃となり、行く行くは王太子妃となれば完璧だと思った。だから幼い頃から言い聞かせた…娘は絶対に完璧でなくてはならない。だって自分達は完璧ではないのだから」

「なっ…何を言っているの?」


止めろ!

これ以上言うんじゃない!


「自分達の娘が完璧だと証明されるための人形を作り上げた。それが貴女…でも、可哀そうな子」

「私が人形?」

「そうよ?愛玩ペットみたいに可愛がるだけで、本当に愛情を貰ったことはあるのかしら?愛するということは時には痛みを教えて教育することも必要…でも貴女はどうだった?」

「私は…愛されて」

「お祖父様は?親しい貴族の皆様は?」

「私は…」


フェルミーナの言葉が頭に響き、私は耳を塞ぎたくなったが体が動かない。

この女は誰だ?

フェルミーナに似ているが違う。


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