偽りの家族を辞めます！私は本当に愛する人と生きて行く！

第四章未来への扉

1.腹黒な発言

怒涛のようなあの騒ぎから三か月が過ぎた。
体が弱かったニコル様は、今ではすかっかり健康になり。


ベアトリスが正式に女伯爵を賜り、ニコル様が補佐となり、今では上手く行っている。


当初は、女が伯爵を賜ることに異論を唱えた貴族派がいたのだが。

ニコル様によってマウントを取られ、尚且つ婿養子だった貴族や、性差別をした貴族達に対してニコル様があの手この手で仕返しをした。


自分の手は一切汚さずにだ。

王族の中で最も優秀であると言われていた理由が嫌という程理解できた。

なのだけど。


「ははっ、嫌ですね義姉上様。僕が王になったら、屑貴族の死体が海に沈んでますよ」

爽やかな笑顔を浮かべ、お茶を飲みながらさらりと恐ろしい事を言うニコル様に、私は肝が冷えた。


「僕を散々馬鹿にして、あまつさえ毒殺しようとした貴族を生かすわけないじゃないですか…ああ、でも、利用価値があるなら生かしておきますよ？リサイクルしてから捨てた方が良いですから」


「はっ…はぁ」

この時私は、情けない表情をしていたのではないだろうか？
あのお優しい皆様とは反対にニコル様は敵と判断した人間には一切の情も与えないと、自分で言っていたし。


「ジルベルトは優しすぎます…ですが、汚い仕事は王がするべきではないのです。王は象徴でもありますしね？」

「え…」

「王の代わりに汚い仕事をするのが臣下の勤めということですよ」

ニコル様の言いたいことは解ってしまった。
何より、王族の中で一番冷遇されていたからこそ解るのかもしれない。


アレキサンドロス様もジュリアス様も、いい意味でも、悪い意味もでも清廉潔白な所がある。

正義感が強く、慈悲の心が強すぎる。
故に、ニコル様のような冷酷さを持っていないから。


「ニコル様は…皆様を」

「誤解をしないでくださいね？僕は出来損ないの父はともかく姉や兄に弟を愛しています。馬鹿な父はさて置き」

「はっ…はい」


うん、陛下の事を相当嫌っているのかと思ったが…


「正確には関心がありません」

「え…」

「好きでも嫌いでもありませんよ」

それは嫌いというよりもキツイと思った。
陛下はニコル様を思っているのだが、ニコル様からすれば関心がないとのことだった。


「僕が病に苦しんだ時も、守ってくれたのは優しい兄弟と王妃陛下にマルティーヌ様です」

国王としての立場があってもニコル様と向き合えなかったことが、災いしているのかもしれない。


「何より妻に守ってもらう軟弱さが情けなさ過ぎましてね」

「そっ、それは…」

「ですから、早々に退位して欲しいんですが…まぁ、あんな老いぼれでもまだ使い道がありますからね」


ああ…この言われよう！
本人が聞いたら失神するだろうと思いながらも、私は引きつった笑顔で聞くしかなかった。