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第三章.高潔の条件
27.ニコルの手腕
しおりを挟む公ではか弱いとか、貧弱だとか言われていた王子とは想像もつかない程の方だった。
「まだ何か文句を言いたい方はいますか?」
「「「「滅相もございません!」」」
この場にいる貴族は全員思った。
一番恐ろしいのではないかと?
これまで二大勢力の王妃と寵妃が最強だと思われていたようだけど、ある意味では、ニコル殿下は最凶なのかもしれない。
無駄な戦力を使わず、相手の戦意を喪失させる。
相手の一番突きつけられたくないものを突きつけ、追い込んで、絶望させるなんて。
「我が弟ながら恐ろしいな」
「ああ、私達の中で一番頭がいいからな」
「ええ、ニコル兄上は病気弱でありながらも生き延びることができたのは、聡明故にです」
確かに、姉弟の中で一番後ろ盾がなく。
体も弱いとなれば、守ってくれる後継者もいないだろう。
その中で暗殺されることだって少なくなかったはずなのに。
ある意味すごい!
「義姉上…」
「あっ…あの」
「本来ならばこの馬鹿は殺しても殺したりませんが、殺してしまうよりも罪を償わせるのが筋と思いまして」
「ありがとうございます」
私だって生みの親と血の繋がった姉を殺したいとは思わないのだけど。
でも、何で姉?
普通は義妹なのだけど。
「ベアトリスは後の私の妃となる女性。故に貴女は私の義姉です」
「はい?」
「しかも私が生きていられるのは貴女のおかげなのです」
「あの…」
意味が全く解らない。
私はニコル殿下に会ったのは今日が初めてだったはず。
「お姉様、私が死に変えた時に精霊様怒鳴り散らしたでしょ?」
「え…うん」
「その精霊様はニコル様にも加護を与えていたと言えば解る?」
つまり、私が幼少期に無意識に使った結界魔法はの所為だと?
「ベアトリス嬢同様に、加護を受け過ぎた私を結界魔法が後から壊れかえた体を外から守ったのです。そのおかげで体は弱くとも精霊の加護で死ぬことはなかった」
「それだけじゃないわ、お姉様が作った水薬をニコル様に飲んでいいただいたの。そのおかげで回復したの」
「えっ…」
「後で鑑定してもらったら、あの薬は女神の聖水と言うことが解ったの!」
色々チート過ぎてついていけないわ。
「なんと、流石は巫女殿だ!我が息子の命まで救ってくれたとは!」
「へっ…陛下」
何故か陛下が子犬のような表情で私を見つめる。
「流石女神様に選ばれた乙女ですわ」
「王妃陛下…」
何故か両陛下に敬意を持った目で見られてしまった後に。
「皆の者!ここにおられる方は女神様のお使いじゃ!今後巫女に対する無礼は女神の無礼。よいな!」
「えええ!」
大勢の前で宣言する陛下に他の貴族は。
「「「巫女様ぁぁぁぁ!」」」
何故か膝を着かれ祈るポーズを取られてしまった。
結果として私は王太子妃候補だけでなく巫女として崇められることになってしまった。
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