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第三章.高潔の条件

24.増長する心

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どうして?
何で私がこんな目に!

私は女神様に愛された存在で選ばれた存在でしょ?
なのに、どうして!


こんなの許されない。
出来損ないのオリヴィアがどうして守られて、愛されているのよ!


――許せない!


この時、私の心は憎しみがさらに強くなった。
心の中がどす黒く染まるような気がしたけど、止めることはできなかった。


「マリアナ…」

「何を…」


そうよ。
奪われたのならば奪い返せばいいのよね?


そうでしょお母様。

私は何も悪くない、そうよね?お父様…


「マリアナ…お前」

なのにどうしてそんな顔をするの?

まるで怯えるような表情を。


「シャリエール伯爵、どういうつもりだ。そなた達は王族に危害を加えるとは」

「陛下!これは…」

「これまでの所業も加え、王太子の婚約者に手を出すとは…国家反逆罪だ」


煩い…


私に命令するんじゃないわよ!


「マリアナ嬢!そなたは自分の思い通りにならなければ人を殺すのか…すべての元凶はそなたにある。自業自得だ」

「違う!」

「まっ…マリアナ!」

怯えた表情でお父様は私を見た。

何故?
マリアナをそんな目で見ないで!


私は…


私は愛される存在なんだから!!


「陛下お逃げください!」

「なんだ…この忌まわしい魔力は…まるで魔女ではないか!」


魔女ですって?
この私が魔女だなんて!


「私は聖女よ…魔女なんかじゃない!」

「ひぃ!」


「何を…」


私の怒りは増長し、抑えが利かなかった。


でも、そうだわ。

私を脅かすものは壊してしまえばいいのよ。

そうよ、私を愛さない王様なんて必要ない。

私こそが聖女…いいえ、私こそが巫女なんだから!



私を愛さないなら要らないわ!!



「わぁぁぁぁ!」


「貴方!」


なのにお父様はその場から逃げ出しお母様を突き飛ばした。


その拍子にお母様は私の魔力に巻き込まれてしまった。


「きゃあ!」

悲鳴が聞こえていたけど、私は何とも思わなかった。


だってそんな所に突っ立っているお母様が悪いのだから。

ただ身目麗しい以外になんのとりえもないお母様。
私を守ることもできず、ジュリアス様と婚約破棄になった時も泣くしかできない役立たず。


でも私は違うわ。

お母様のように無力じゃないんだから!!



「自分の母親に…なんということを」

「父上、お下がりください。もう、これ以上何を言っても無駄です」

「彼女を国家反逆罪として捕らえる許可を!」


外野が煩く感じる。


ふと私を睨む王女殿下がいた。

私を散々侮辱したあの女。


許せないわ。


「アレキサンドロス!危ない!」

「ベンノ!!」


私が風で攻撃しようとしたけど、邪魔なあの男が盾となり叩きつけられる。

馬鹿な男。
弱い癖に、私に歯向かうなんて。



私を仇名す者は許されないのよ。


身の程を弁えればいいのよ!



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