80 / 137
第三章.高潔の条件
閑話2.子爵令嬢の思い
しおりを挟む第三王子、ジルベルト様のの妃候補として王妃主催のお茶会に参加した時の事。
「まぁ、貴女がジルベルト殿下の側妃候補の方ですの?」
「はい?」
いきなりぶしつけな事を言ったのは、第一王子、ジュリアス様の婚約者に選ばれてばかりのマリアナ様だった。
既に自分は王太子妃だと言わんばかりの発言で、お茶会を仕切った態度を取っている。
「なんてみすぼらしい帽子、お茶会にふさわしくありませんわ。お外しなさい」
「ですが…」
「まぁ、伯爵令嬢であるマリアナ様に逆らうとは何様ですの」
「これだから身分卑しい者は!」
取り巻きの令嬢達はこれ見よがしに私を侮辱し、わざと私のドレスにジュースをかけた。
「あらごめんなさい。でも…お似合いですわよ?」
「クスクス、帽子職人は引っ込んでなさいな」
大勢の場でこれ以上ない屈辱を浴びせられた。
私の母は一流のデザイナーなのに、一介の帽子職人と馬鹿にされ、追い出されるようにお茶会の席から追い出されてしまった。
苦しくて悲しくて、泣きたくなったが。
こんな連中の前で泣きたくなかった。
そんな時だった。
オリヴィア様に出会ったのは。
きっとあの方は覚えていないでしょうね。
初めて出会ったのはこの日だと言うのが。
「どうかしましたか?」
「誰…」
「申し遅れました私はオリヴィア・シャリエールと申します。何処か具合でも悪い…まぁ、ドレスが」
「あっ…」
汚れたドレスの部分を隠そうとしたが既に遅かった。
こんなみっともない姿を見られたら馬鹿にされる。
それにあの人の妹だなんて…
きっと私を馬鹿にするんだ!
そう思ったら震えが止まらなかった。
「そのままでは染みが広がりますので、染み抜きをいたしましょう」
「えっ?」
「失礼しますね」
そう言って鞄から小瓶を取り出し、液体をかけると染みが消えた。
その後も何度も丁寧に染みを消す作業をしてくださった。
「これで大丈夫ですわ」
「あっ…ありがとうございます」
「いいえ」
貴族令嬢なのになんて手慣れた方なのだろうか。
「お姉様!」
「ベアトリス」
「ここにいらしたの?早くお茶会に戻らないとまたマリアナ姉様に嫌味をネチネチ言われるわよ」
「もう…申し訳ありません。失礼いたします」
「あっ…」
名前だけを名乗り去って行かれた令嬢。
その後私はお茶会の席に戻ると。
「アナスタシア様、大丈夫ですか?」
「ナウシカ様…」
「まったくなんて意地の悪い方なの…あんなのが王子妃なんて、陛下も何をお考えなのでしょう」
同じお妃候補であるナウシカ様が心配してくれた。
「ナウシカ様…あの方は」
「ああ、マリアナ様の妹君のオリヴィア様ですわ」
お茶会の席で遠くの席に座らされている。
ご両親は近くなのにどうしてだろうか?
「オリヴィア様は魔力が少ない理由でご両親からも蔑ろにされているそうですわ。公の場にも極力参加させてもらえないとか」
「酷い…そんな」
「ええ、でも、一番質が悪いのは姉君ね?引き立て役にして恥をかかせているのだから」
まるでいないように扱うなんてなんてことを。
なのに、あの方は見ず知らずで下級貴族である私に優しくしてくださったわ。
もし…私が。
私が第三王子の妃となればあの方は身内になる。
そしたら守って差し上げたい。
優しいオリヴィア様を。
この時、強くそう思ったの。
だから…
今度こそは。
「今度は必ずお守りします」
二度とあの女に傷つけさせないわ。
103
お気に入りに追加
5,503
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
「アゼリア・フォン・ホーヘーマイヤー、俺はお前との婚約を破棄する!」
「王太子殿下、我が家名はヘーファーマイアーですわ」
公爵令嬢アゼリアは、婚約者である王太子ヨーゼフに婚約破棄を突きつけられた。それも家名の間違い付きで。
理由は聖女エルザと結婚するためだという。人々の視線が集まる夜会でやらかした王太子に、彼女は満面の笑みで婚約関係を解消した。
王太子殿下――あなたが選んだ聖女様の意味をご存知なの? 美しいアゼリアを手放したことで、国は傾いていくが、王太子はいつ己の失態に気づけるのか。自由に羽ばたくアゼリアは、魔王の溺愛の中で幸せを掴む!
頭のゆるい王太子をぎゃふんと言わせる「ざまぁ」展開ありの、ハッピーエンド。
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2021/08/16 「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過
※2021/01/30 完結
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

聖女の妹に幼馴染の王子をとられて婚約破棄「神に見捨てられた無能の職業は追放!」隣国で優秀な女性だと溺愛される
window
恋愛
公爵令嬢アンナ・ローレンスはグランベル王国第一王子ダニエル・クロムハートに突然の婚約破棄を言い渡された。
その理由はアンナの職業にあった。職業至上主義の世界でアンナは無能と言われる職業を成人の儀で神に与えられた。その日からアンナは転落人生を歩むことになった。公爵家の家族に使用人はアンナに冷たい態度を取り始める。
アンナにはレイチェルという妹がいた。そのレイチェルの職業は神に選ばれた人しかなれない特別な職業と言われる聖女。アンナとレイチェルは才能を比較された。姉のアンナは能力が劣っていると言われて苦しい日常を送る。
そして幼馴染でもある婚約者のダニエルをレイチェルに取られて最終的には公爵家当主の父ジョセフによって公爵家を追放されてしまった。
貴族から平民に落とされたアンナは旅に出て違う国で新しい生活をスタートする。一方アンナが出て行った公爵家では様々な問題が発生する。実はアンナは一人で公爵家のあらゆる仕事をこなしていた。使用人たちはアンナに無能だからとぞんざいに扱って仕事を押し付けていた。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~
紫月 由良
恋愛
辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。
魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる