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第三章.高潔の条件
10.迫真の演技
しおりを挟むこの場にいる全員が思っているわ。
今すぐこの男を摘まみだせと。
「やはり天は俺を見捨てていなかった。オリヴィア…やはりお前は」
「お黙り」
「もごっ…もぉぉぉ!!」
耐えがたい発言を繰り返すブライトンに耐え切れず、ナウシカ様はカップに注がれていた危険なお茶を口に放り込んだ。
「もごぉぉぉぉ!!」
「口を開かないでくださる?下品ですわ」
「ナウシカ様、こちらも」
「ありがとうございます」
マリアが差し出したお茶は、グツグツしていた危険なお茶だった。
「もご…もごぉ!」
「じたばた暴れないでください。そこの棒を取ってくださる?口をこじ開けますわ」
「私がやりましょう」
護衛騎士の方が手伝ってくださり、ブライトンに無理やりお茶を飲ませた瞬間。
「皆さん!逃げてください!」
「えっ…煙が」
「爆発しますわ!」
何でお茶が爆発するの?
急いで結界魔法を作ったことで、温室は破損してしまい燃えてしまったが、私達は全員無事だった。
「とりあえず消火活動をしなくては」
「ええ…」
温室が燃えたので水魔法で火を消すも、学校内で火事があったことはバレてしまうかもしれない。
「どうしましょう…すぐに騒ぎを聞きつけられますわ」
「問題ありませんわ」
「ナウシカ様、どういうことでしょう?」
不安を抱く私とは別にナウシカ様は余裕の微笑みを浮かべた。
「皆!無事か!」
「怪我は!」
ジルベルト様とジュリアス様が駆けつけてくださった。
その後ろには先生方も一緒だった。
「炎の魔法の気配を感じたんだ…なんだこれは」
温室は燃えてしまい、すぐ傍で黒焦げになって倒れているブライトンを見る。
「ブライトン様が、いきなり温室に押しかけて襲ってきたのです!」
「何…」
「オリヴィア様に無理やり復縁を迫り…それを拒むなら殺すとまで脅してこられて…私達までも焼き殺そうとして。恐ろしくて…本当に」
「ナウシカ様…」
迫真の演技で涙を浮かべるナウシカ様はある意味女優になれると思った。
しかし…
「うっ…私も死ぬかと思いましたわ。ブライトン様はオリヴィア様を力づくでご自分の物にするべく暴力を振るわれて…止めようとしたのですが」
「なんという愚かな!すぐに警備隊を呼びましょう」
「即刻学園から追放すべきではありませんか?先生」
ジュリアス様は先生に告げる。
学園内で勝手に魔法を発動することは禁じられている。
しかも王子殿下の婚約者を殺そうとしたとなれば、重い罰が下される。
「もしや、オリヴィア様を亡き者にしようとしたのではありませんか?」
重い空気の中、ナウシカ様がさらに発言したことで、空気は悪化した。
「ナウシカ様、何を…」
「よくお考え下さい、サマンサ様。マリアナ様はオリヴィア様を憎んでいましたわ。学園内でも妹に対して接し方が酷すぎました」
「確かに。しかも今回の事で怒りが爆発したと?」
「ブライトン様はマリアナ様の婚約者ですわ。復縁を迫る不利をして殺そうとしたのかも」
何時から打ち合わせをしたのかと思うほど、皆さんの呼吸は合っていた。
お姉様とナウシカ様は怯えた演技をしながら先生方を誘導し、結果。
ブライトンは拘束されてしまった。
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