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第三章.高潔の条件
4.迷惑な訪問者
しおりを挟む楽しい時間をぶち壊す様に温室の外で騒ぐ声が聞こえる。
クローネが必死で追い払おうとするも、彼が大人しく聞くとは思えない。
「リヴィア様!出ては行けません」
「マリア」
「そうですわ。許しませんわよ」
私が立ち上がろうとするとマリアが止めに入る。
お姉様も私の肩を掴み、許してくれなかったけど、このままではクローネが怪我をするかもしれない。
「迷惑な男、私が開発した毒を飲ませて黙らせましょうか?」
「名案ですが、物的証拠が残りましてよ?やるなら証拠隠滅をしなくては」
お姉様、それは違うと思います。
第一、殺す前提で話が進むのはどうかと思うのだけど。
「いい加減にしろ!」
「いい加減にするのは貴方です!」
そうこうしている内に外での口論はヒートアップしていく。
「お姉様…」
「私も一緒に参りますわ。貴女一人で行かせるなんて、恐ろしいわ」
マリアナとの一件で、お姉様は過保護になってしまった。
心配させてしまっている私にも原因はあるのだけど、学園内では公爵家の権力を使って私を守ろうとしてくれている。
今もそうだ。
「貴女には手出しさせないわ」
「はい、お姉様」
お姉様に手を引かれるようにして温室を出てすぐに、私は久しぶりに元婚約者と再会を果たした。
「オリヴィア!」
「ご無沙汰しております」
声を荒げる元婚約者に私は何も感じなかった。
ただ迷惑だと思うだけだ。
自分でも、冷たいと思うけど、彼に一切の未練もない。
傷ついていた頃の自分が馬鹿だと思う。
「僕のオリヴィア」
「「「は?」」」
私を見るなり笑顔を見せる彼に寒気がした。
「何を言ってますの」
「サマンサ様、彼は気でも触れたのでしょうか…ありえない」
「私もです」
お姉様は勿論だけど、ナウシカ様もマリアも顔色が真っ青だった。
私も寒気がして気分が悪かった。
「すまなかったオリヴィア…あの時、君を守れなかったことを許してくれるね?優しい君なら恨んでいないだろう?君は俺を愛しているんだから」
「何を世迷言を。まだ茶番劇をするつもりですか…止めてくださいますか?」
「えっ…」
私は心の底から軽蔑した。
こんな軽薄な男とは思わなかった。
少し自尊心が強く、亭主関白な所があるとは思ったけど。
ここまで最低だとは思わなかった。
勝手に自分の都合のいいように解釈し相手の話は一切聞かない。
これまでもそうだった。
「馬鹿な事を言わないでください。私は貴女に一ミリも愛情など持ってません。過去にも婚約者としての情はあっても愛情なんてものではありません…努力して愛そうと思っただけ。今なら解りますわ」
「何を言っているんだ?」
「私は友愛の情すら貴方にありませんわ…小さなころは多少はあったかもしれない」
今ほど性格が酷くなる前は、恋をしていたのかもしれない。
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私は貴方を愛していない。
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