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第二章.新たな婚約
28.警告
しおりを挟む平民の少女がジュリアス様と懇意な関係であることが噂になり、私の立場が危ぶまれているという噂が流れだした。
平民如きががなんて身の程知らずなのかしら。
「マリアナ様、大丈夫ですか?」
「あのような噂等気にすることはありませんわ」
いつも通り私を慰める取り巻きに私は舌打ちをする。
心配だと口委するだけで何もしないなんて本当に役立たずだわ。
「ええ…殿下は不自由をしている平民の方を放っておけなかったのでしょうが…彼女は私を妬んでるようで。私も手助けをしたいのに」
「マリアナ様はお優しすぎますわ」
「そうですわ!身の程を弁えずに」
目障りな平民の娘に己の立場を解らせるためにそれとなく、取り巻きに告げる。
でも、平民の娘を貶める言葉は言わなかった。
そんなことをすれば私の名誉に傷がつくし、取り巻き達は勝手に平民の娘に身の程を弁えるように咎めた。
とは言え、咎める程度だった。
あの程度では私の気は収まらななかったが、さらに私を不快にする噂を耳にした。
なんでもあの平民の娘とオリヴィアが親しいと言う噂だ。
他の令嬢に手を上げられそうになるのをオリヴィアが仲裁に入り、それ以降もオリヴィアが庇っているのを耳にした。
「余計な真似を…」
唇を噛みしめ、オリヴィアに苛立ちが募った。
何であんな賊民を庇おうとするの?
どれだけ私に迷惑をかければ気が済むのかしら。
今まで可哀そうだと思って優しくしてあげたのに。
オリヴィアへの憎しみが籠った。
そんな折だった。
「随分醜いですわね」
「サマンサ様!」
「実の妹に向けるような顔ではありませんわ…まるで鬼のよね?」
「なっ…何を」
校舎からオリヴィアを睨んでいるのを見られたのか、サマンサ様が告げた。
「私は心配を…」
「あら?心配はありませんわ。オリヴィア様は生徒会でも皆に慕われておりますし。私が指導をさせていただいていおりますのでご心配なく」
「オリヴィアは私の妹ですわよ?」
「存じておりますわ。貴女の妹にしておくには実に惜しい方。ベアトリス様もそうですが…見た目しかない貴女とは月とスッポンですわね」
「なんですって!!」
私は王太子妃となる令嬢よ?
将来は国母になるのになんて無礼な!
「サマンサ様、どうなさいました?」
「ナウシカ様」
「マリアナ様、校内でそのようなはしたない声を出さないでください。仮とは言え第一王子の婚約者候補である自覚をお持ちくださいな」
「私は!」
何処から現れたのか、辺境伯爵貴族令嬢のナウシカ様が私を見て貶すような眼を向ける。
「同じく王子殿下の婚約者候補として恥ずかしいですわ。もう少し品位をお持ちください。まったくオリヴィア様はあの通り品行方正であると言うのに」
この私が出来損ないのオリヴィアに劣っているなんてありえないわ。
何を言っているの?
「マリアナ様、忠告して差し上げますわ」
「なんですの?」
「婚約者候補とはあくまで候補にすぎません。胡坐をかいでいては痛い目に合いますわよ」
私を睨みつけながら静かに声を放つ。
「どういう意味で…」
「私から言えるのはここまでですわ。サマンサ様」
「ええ…」
「待ちなさい!」
私の言葉も聞かずに二人はそのまま去って行った。
この時私は二人の言葉が現実になるなんて夢にも思わなかった。
そして学校が休みの連休にて、ジュリアス様の好意で遠出に向かった先で事件は起きた。
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