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第二章.新たな婚約
27.敵視
しおりを挟む一年後私は第一王子殿下の婚約者と選ばれた。
やっぱり私は選ばれた存在なのよ。
「おめでとうマリアナ」
「流石だ。これで我が伯爵家も王族の一員になる」
誰もが私を認める。
社交界でも私が第一王子妃になれば実質王太子妃となることは当然だった。
「おめでとうございます」
「流石ですわ!」
私を羨む視線が気持ちよかった。
将来王妃となったも同然だったのだから高位貴族とも対等。
いいえ、貴族社会では後に私が女王となるのだわ。
そう思っていた。
そんな時だった。
舞踏会にて、一つの方向に視線が集中した。
「見てサマンサ様よ」
「今宵も美しい方」
公爵令嬢であり、王族の方でもあるサマンサ様の登場に他の令嬢は近づく。
社交界では身分の高い人間から声をかけるのが常識だった。
だから、早く声をかけてもらいたいのだった。
「見て、サマンサ様がこちらにいらっしゃるわ」
「まさか、マリアナ様に?」
「王子妃となられる方ですもの」
周りが期待を込めた視線を向ける。
今は私よりも上でも将来的には私の方が立場が上になるけど、今は許してあげる。
勝ち誇った表情で声をかけられるのを待っていたけど…
「ごきげんよう」
「ごき…」
私に声をかけるはずがサマンサ様は私を素通りする。
「オリヴィア様」
「なっ!」
サマンサ様は私にも目もくれなかった。
「ベアトリス様、ごきげんよう」
「ごきげんようサマンサ様」
そして隣にいるベアトリスに挨拶をした。
何で…
「え?どうして妹君に?」
「普通は真っ先にマリアナ様に挨拶をするんじゃなくて?」
「でも…あの勝ち誇った顔、傑作ね」
離れた場所で私をあざ笑う声が聞こえる。
なんて屈辱なの!
それでも我慢したけど、その日は声をかけられることはなかった。
「許せないあの女!」
私に恥をかかせたサマンサを睨む中、一人の侍女が手紙を手に持ってた。
「そこの貴女、それは何?」
「こちらはオリヴィアお嬢様に届きましたお茶会の招待状です」
「オリヴィアに?何かの間違いよ…寄こしなさい」
「ですが…」
察しの悪い侍女ね?
主が言っているんだから渡せばいいのに。
「口答えするならクビよ!」
「あっ!」
手紙を無理やり奪うと、封筒の差出人を見ると。
「レスター侯爵家?あの資産家の…やだ、私と間違えたのね」
「お待ちください、そちらは…」
「まったく、オリヴィアと私を間違えるなんて」
侯爵家はうっかりした人が多いのかしら。
でも、優しい私は許してあげることにした。
なのに…
侯爵家に招待された私はホスト役のマルガレーテ様に告げられたのは。
「私はオリヴィア様を招待したのに何故貴女が?付き添いでしょうか?」
「は?」
私じゃなくオリヴィアを呼んだ?
「まさか手違いで?困りましたわ…本日は哲学者や官僚の方がいらしているので、マリアナ様には退屈と思いますわ。政治の語り合いをいたしますので」
「なっ…」
「よろしいのでしたらご参加いただいて結構ですが…」
見下すような視線を向けられ、私は屈辱的な時間を過ごした。
あの女もそうだけど、この女も!
私に嫉妬してこんな手の込んだ嫌がらせをしたのね!
私が王太子妃になった許さない。
そう思っていたのに…
何もかも完璧だった私に不幸はいきなり訪れた。
貴族しか通わない王立学園にて、異質の存在が現れたことにより。
すべてが完璧だった物が崩れていった。
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