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第二章.新たな婚約
25.不愉快
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楽しみにしていたパーティーは思っていたのと違っていた。
煌びやかではないし、質素な装いをしているおばさんが多くて退屈だった。
何を話しているかチンプンカンプンだったし。
参加者の人達は、お祖父様が来るのを楽しみしていたとか、ベアトリスはどうしているかとか。
私がいるのに失礼な人ばかりだった。
今度からこんな退屈なパーティーには参加しないでおくべきだわ。
付き合う人は選ばないと。
そう思っていたある日。
我が家に侯爵家の人が訪れた。
「シャリエール伯爵夫人。貴女のご息女を我が侯爵家の元に行儀見習いとして迎えたく思います。ご息女は大変優秀であります。早い段階から英才教育をすれば素晴らしい令嬢となりましょう」
「まぁ、光栄ですわ」
我が家は名家でも伯爵家。
高位貴族である侯爵家の後ろ盾を得ることは名誉なことだった。
やっぱりね?
私は選ばれた存在なのよ。
周りが放って置かないわ。
「光栄です。是非」
お父様も満足そうに微笑んでいた。
「ですが、お一人では不安と存じますので姉君もご一緒に来てくださっても構いません」
「「「は?」」」
何を言っているの?
私は長女で姉なんているはずがないのに。
「侯爵様、あの…」
「三女のベアトリス嬢は、まだ幼く不安でしょうが…姉君と一緒ならば安心できましょう」
はぁ?
ベアトリスですって!!
「マリアナではなく?」
「はて?何方ですかな?」
「なっ!」
目の前の老人は私のことなど知らないようだった。
「ベアトリス嬢は幼いながらにして大変優秀で、教養もあります。先日の演奏会では水の精霊が現れた程です」
「お勉強はお姉様が見てくださって…ピアノもお姉様に教わったんです!」
「そうですか。社交界では色々と噂がありますが、所詮は噂ですな」
私を無理して老人はベアトリスを褒めちぎり、隣に座るオリヴィアも褒めていた。
なんて不愉快なの!
「ですが、二女は、魔力が低く…」
「ははっ、おかしなことを言われますな。魔力がまったくないだけではありませんか。それにオリヴィア嬢は幼き頃に妹君を救うべく結界を強いたと聞きます」
「ええ…」
「強大な魔力を持つ者は、小さい頃に精霊の恩恵に耐え切れないというのに…なんと勇敢な。魔力などで人の優劣は図れませんぞ」
魔力絶対主義の貴族が言うべきことではないわ。
いくら社交辞令でも過度なお世辞は時として残酷だと思った。
「侯爵様の配慮、痛み入ります」
「私はお世辞は嫌いですが?」
「えっ…」
お母様の言葉を否定するような言葉を言う老人を私は睨みつけた。
なんなのよ!
「オリヴィア嬢、お願いできますかな」
「私でよろしければ喜んで」
どうして断らないのよ。
お父様もお母様も断れないし、不快な気持ちでいっぱいだった。
でも、三か月後。
そろそろ行儀見習いにも慣れた頃に、お母様はベアトリスの付き添いを断ってくれた。
相変わらずベアトリスは邸にいないことは多かったけど、日常が戻り安堵したはずだった。
なのに、一年後。
ベアトリスは洗礼を受ける時期に鑑定を受けると。
国内でも五人しかいない程の強大な魔力を保持していると告げられた。
その所為で侯爵家の後ろ盾を得ることになり、私をイラつかせた。
煌びやかではないし、質素な装いをしているおばさんが多くて退屈だった。
何を話しているかチンプンカンプンだったし。
参加者の人達は、お祖父様が来るのを楽しみしていたとか、ベアトリスはどうしているかとか。
私がいるのに失礼な人ばかりだった。
今度からこんな退屈なパーティーには参加しないでおくべきだわ。
付き合う人は選ばないと。
そう思っていたある日。
我が家に侯爵家の人が訪れた。
「シャリエール伯爵夫人。貴女のご息女を我が侯爵家の元に行儀見習いとして迎えたく思います。ご息女は大変優秀であります。早い段階から英才教育をすれば素晴らしい令嬢となりましょう」
「まぁ、光栄ですわ」
我が家は名家でも伯爵家。
高位貴族である侯爵家の後ろ盾を得ることは名誉なことだった。
やっぱりね?
私は選ばれた存在なのよ。
周りが放って置かないわ。
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お父様も満足そうに微笑んでいた。
「ですが、お一人では不安と存じますので姉君もご一緒に来てくださっても構いません」
「「「は?」」」
何を言っているの?
私は長女で姉なんているはずがないのに。
「侯爵様、あの…」
「三女のベアトリス嬢は、まだ幼く不安でしょうが…姉君と一緒ならば安心できましょう」
はぁ?
ベアトリスですって!!
「マリアナではなく?」
「はて?何方ですかな?」
「なっ!」
目の前の老人は私のことなど知らないようだった。
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「お勉強はお姉様が見てくださって…ピアノもお姉様に教わったんです!」
「そうですか。社交界では色々と噂がありますが、所詮は噂ですな」
私を無理して老人はベアトリスを褒めちぎり、隣に座るオリヴィアも褒めていた。
なんて不愉快なの!
「ですが、二女は、魔力が低く…」
「ははっ、おかしなことを言われますな。魔力がまったくないだけではありませんか。それにオリヴィア嬢は幼き頃に妹君を救うべく結界を強いたと聞きます」
「ええ…」
「強大な魔力を持つ者は、小さい頃に精霊の恩恵に耐え切れないというのに…なんと勇敢な。魔力などで人の優劣は図れませんぞ」
魔力絶対主義の貴族が言うべきことではないわ。
いくら社交辞令でも過度なお世辞は時として残酷だと思った。
「侯爵様の配慮、痛み入ります」
「私はお世辞は嫌いですが?」
「えっ…」
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なんなのよ!
「オリヴィア嬢、お願いできますかな」
「私でよろしければ喜んで」
どうして断らないのよ。
お父様もお母様も断れないし、不快な気持ちでいっぱいだった。
でも、三か月後。
そろそろ行儀見習いにも慣れた頃に、お母様はベアトリスの付き添いを断ってくれた。
相変わらずベアトリスは邸にいないことは多かったけど、日常が戻り安堵したはずだった。
なのに、一年後。
ベアトリスは洗礼を受ける時期に鑑定を受けると。
国内でも五人しかいない程の強大な魔力を保持していると告げられた。
その所為で侯爵家の後ろ盾を得ることになり、私をイラつかせた。
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