偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!

ユウ

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第二章.新たな婚約

22.間違った正しさ

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普段ならまず出さないような焦った声と乾いた音が響く。


「お姉様!」

悲鳴に近い声と、花瓶が割れる音がした。


「ベアトリス!」

「お姉様ぁぁぁぁ!」


みっともなく声を上げて泣き叫ぶベアトリスは淑女としてあるまじき行為だった。

「いい加減になさい…」

私は姉として泣き止むように言うも、ベアトリスはさらに怯えるように泣き叫ぶ。

「お止めくださいお姉様、ベアトリスはまだ幼いのです」

「これは躾けよ。妹の面倒も満足に見れないなんて姉失格よ」

「お姉様を苛めないでよ!どうして何時もお姉様に酷いことするの!」

何よ、ぞれ。
私は出来損ないのオリヴィアの為にしてあげているのよ?

社交場でも可哀そうなあの子を出来損ないだけど、優しくしてあげて欲しいと言って友人にも言っているのよ。

だから社交場でも同情の視線で見てくれているのよ。
私がいなかったらオリヴィアは貴族令嬢としても相手にされない惨めな女なんだから。

ベアトリスだって完璧な私の妹だから評価されているだけ。

美しい私がいるからなのに!


唇を噛みしめ睨みつけようとした時だった。


「オリヴィアお嬢様!」

そこに、現れたのはオリヴィアとよく一緒にいる侍女だった。

名前は知らないけど。


「オリヴィアお嬢様、頬に怪我を」

「大丈夫よ」

「血が出て…お足にも」

大げさに騒ぎ立てるなんて侍女失格だわ。


なのに…

どうして?


「マリアナ様がされたのですか」

「は?」

「ベアトリス様は滅多にお泣きになられませんわ。よほどのことがない限り…」

なんなの?その目は。
私が悪いとでも言いたげな目をしていた。

なんて無礼なの。


「何の騒ぎだ」

そこに現れたのはお祖父様だった。


「お祖父様…」

私は直ぐにお祖父様の元に向かうが――。


「どうしたんだオリヴィア!」

「え?」


どうして…?


何故お祖父様は私ではなくオリヴィアを心配するの?


「頬から血が…マリアナ!お前という奴は!」

「違うわ。私はベアトリスが泣くから…」

「ベアトリスを殴ろうとしたのか!まだ小さく体の弱い妹になんてことを…この馬鹿者!」


これまで優しかったお祖父様が私を怒鳴りつけた。

お父様にもお母さまにも怒られたことはなかったのに、どうして?

何で私をそんな目で見るの。


「何事ですの?」

「父上!」


騒ぎを聞きつけ、下の階からお父様とお母様が駆けつける。


「これは…」

「マリアナがベアトリスを殴ろうとして、オリヴィアが庇ったようだ」

「そんな…何かの間違いです!」

お母様は私を庇おうとしてくれた。
私は何も悪くないのだから当然だし、咎められて責められるべきは邪魔をした愚かなオリヴィアだ。

そうよ、私はこれまで間違ったことはしていない。

私の行動はすべて正しいのだから。


この時はそう思っていた。




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