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第二章.新たな婚約

20.過去と違う現在

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あの後の事はよく覚えていなかった。

背後でヒステリックに叫んでいるマリアナは私を睨みつけ罵倒を続けるも、ベアトリスが私の手を握り傍にいてくれていた。


「リヴィア様」

「マリアさん」

私を気遣う様にマリアは私の傍に寄り添ってくれた。


「もう一度、マリアと呼んでください」

「マリア…」

感情が高ぶり呼び捨てにしてしまった事が恥ずかしいけど、マリアは許してくれた。


「ごめんなさい。マリア」

「もう謝らないでください。私は嬉しいんです」

「嬉しい?」

私は貴女を忘れてしまったのに。
元姉が貴女を苛めていたのに止めることもできなかったのに。

「再会した時、貴女は私のリボンを大切にしていらした…それだけではありません。貴女はあの頃のままお優しいままだった。一人ぼっちの私に手を差し伸べ、優しくしてくださったあの日のお姫様のままでした」

「お姫様?」

「まるで、あの物語に出てくるサファイヤ王女のようで」


貴族や平民の間で人気のある児童文学の一つ。

サファイヤ王女。
主人公の王女がお忍びで城下町に繰り出し、そこで一人の少女に出会う。

少女は人と見た目が違うせいで孤独だったが、サファイヤ王女は姿に心奪われこう告げた。


「なんて綺麗な髪なのかしら。瞳も宝石のようね」


忌み嫌われていた容姿をサファイヤ王女は告げたのだ。

そして、二人は出会ってすぐに意気投合した。
しかし二人は身分の隔たりで、共にいることすら許されず。

二人は別れることになる。
サファイヤ王女はせめて忘れないようにと自分の髪飾りを手渡し別れた。


数年後二人は運命的な再会を果たし奇跡の友情は永遠の友情に代わり二人は生涯の友としての誓を果たすのだった。


「烏滸がましいとは解っています。でも貴女は私のサファイヤ王女でした」

「マリア…」

「花祭りで私と約束をしてくれたのが嬉しくて。だから私も彼女のようにサファイヤ王女を追いかけようと思ったんです」


「じゃあ…」


この学園に来た本当の理由は私だった?


「もう一度お会いしたかった。私のお姫様」

「マリア!」

私は溜まらずマリアを抱きしめ、マリアも私を抱きしめてくれた。



幼い頃の願いは今叶った。


もう一度会いたいと願い続け、私達は大きくなってようやく再会を果たすことができた。


もし、何もかも諦めてしまった時の私のままだったらかなえられることはできなかった。


今傍にいてくれる人達がいなければ。


私は二度と会うことも叶わなかった。

皆さんが引き合わせてくれた。


だからこの恩は一緒にして返そうと心から思った。

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