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第二章.新たな婚約

7.見舞い

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ジルベルト様に求婚されてからは目が回るような日々だった。
忙しない時間を過ごしながら、その日のお昼過ぎにお祖父様がお見舞いに来てくださった。


「オリヴィア!」

「お祖父様!」

「遅くなってすまなかった…殿下から話を伺ってな。派手に動けなかった」


家族の中でベアトリス以外で私を心配してくれる人はお祖父様ぐらいだった。


すぐにお見舞いに行きたかったが、そうなれば両親と姉も押しかけて来るので止められたとか。

「表向きは病で臥せっていることにしてある」

「え?」

「大事な孫が重体で私は精神的に参っているということにして、裏で動いていた」

裏で動くとは随分と物騒に聞こえる。


「実はな…お前を王弟殿下に養女に出す計画が進んでいる」

「私を?」

「現段階では、まだ馬鹿者との縁が切れていない…そうなれば婚約に異論を唱えるだろう」

確かに猛反対するかもしれない。
一番最悪なのは、王族の親族になった後に口出しをしてくるだろう。

「そこで、伯爵家以上の家にお前を養女にしてからジルベルト殿下の婚約者にする。その手続きを急いでいる」

「あの‥かなり用意周到なのでは」

ジルベルト様に求婚されたのは最近だわ。
なのにここまで用意が良いと言う事は、早い段階から計画があったのかしら?


「以前からブライトンとの婚約を白紙にしたいと考えていたんだ。そんな折に王女殿下から話を持ち掛けられた。ジルベルト殿下の妃に欲しいと」

「そうだったんですか」

「迷ったよ。ベアトリスは子爵の爵位を賜ったらお前と家を出たいと言っていた。ブライトンと結婚すれば不幸になると言われたな」

知らなかった。
ベアトリスには何度か一緒に事業をしようと言われていたけど。


「あれは素直ではないが、誰よりもお前の幸せを願っていた」

「はい」

私は一人ぼっちじゃなかった。
ずっと支えてくれているのに気づけなかった。


「ベアトリスはこうも言った。もし自分が当主として相応しければ、伯爵家を遠慮なく乗っ取るとな」

「はい?」

「継承ではなく乗っ取る気で、既に動いている」


末恐ろしいとはまさにこのことだわ。
伯爵家の事業は私が代行していたけど、しばらく療養している私が不在となれば…


「現に、お前が不在で伯爵家はまずいことになっている。今が好機と言わんばかりにベアトリスは布石を投じている。次期に立ち行かなくなるだろう」

「お…お祖父様」

「ベアトリスは魔力も高いが商売の基礎も学んでいる。後ろ盾もいる」

ずっとベアトリスの後ろ盾になってくれていた人がいる。
その方と協力すれば、我が家を乗っ取るのも容易いだろうし、権力を根こそぎ奪える。


「恐ろしい孫だ…実の両親に情け容赦なく、追剥のような真似をしている」

「はは…」

「まぁ、あの子をあそこまで怒らせたのだ。自業自得だな」


ああ、腹黒い笑み。
お祖父様も十分怒っていたのね。


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