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第二章.新たな婚約
6.求婚
しおりを挟む振り返った先には茫然と立ち尽くすオリヴィアと震えているベアトリス嬢と侍女がいた。
「あっ…あの」
やられた!
全ては姉上が仕組んだことだったようだ。
「やぁ、オリヴィア。来てくれたんだね」
「お邪魔だったようで」
「いやいや、そんなことはないぞ。見苦しい所を見せて悪いね」
この腹黒が!
全て計画していたのか!
「暑苦しい告白だったが、気持ち悪かったか?」
「え…」
なんてことを言うんだ。
この状況で、そんな事を言えばオリヴィアは困るだろう。
「まぁ、拗らせ過ぎてるからな。愚弟は六歳の頃に偶然君が祈りをする姿を見て一目惚れしたそうだ。だが、不運にも君は婚約者がいたからね?泣く泣く諦めたと思えばしつこく今日まで忍ぶ恋をしていたんだ」
「姉上ぇぇぇ!」
「だが、別に無理強いはしない。嫌なら嫌だと断ればいい。王女の私が許可する」
こんな大勢が見ている傍でフラれるのか!
「だが、考えておくれ?愚弟は潔癖症だから結婚後は君以外を娶る事はない。なんせ今までオリヴィア以外は眼中ないんだ…妃候補は仕方なくだ」
「あっ…でも、私なんかを」
「そんなことを言うんじゃないぞ。自分の価値を下げてはならない」
さりげなく、オリヴィアを口説くな!
「おい、愚弟。何か言わんか。どうせフラれるなら男を見せろ」
「もう止めてあげてくださいお嬢!これ以上は哀れですぜ!」
ここまでの辱めは初めてだが、ここまで来て引き下がれるか!
「オリヴィア嬢、私はずっと貴女に懸想して来ました。顔合わせをするずっと以前から…ですが、貴女は婚約者がいる身で、私は第三王子にすぎません。故に諦めようとしましたが、できませんした」
ずっと見て来たんだ。
オリヴィアが好きで、愛おしくて。
でも諦めようとしたが、どうしてもできなかった。
「爵位を継承できたとしても伯爵か侯爵が精々です。ですが、必ず出世してみせます。貴女を日陰で苦労させたりしませんので…私の妻になってください!」
「ジルベルト様…」
「傷心中の貴女に最低な事を申しますが、私は貴女が欲しい。貴女がさえ手に入るなら…」
俺はもう、恥も外聞も捨てた。
既に姉上に晒し者にされたのだからこれ以上悪くなることはない。
「私は可愛げがなく美しさもない女です」
「オリヴィアは今で十分美しい。俺の天使だ」
「あっ…あの」
まだ謙遜するのか。
だが、家庭環境が最悪だったから、自己評価が低いのは仕方ないかもしれない。
「貴族の娘として利益のある婚姻をしなくてはならないと理解していましたが…私自身を見てくださり、愛のある結婚ができる夢は抱いてはならないと思ってました」
「なら、その夢を私と叶えてください」
「はい…」
「え?」
真っ赤になりながら頷かれた?
「この愚弟が!とっとと求婚の証を渡さぬか!」
「お嬢、空気読んでくださいよ」
後から蹴り飛ばされ、一輪の薔薇を渡される。
「オリヴィア嬢」
「よろしくお願いします」
婚約の儀式に一輪の赤い薔薇を差し出し、お返しに白い薔薇を返せば求婚が受け入れられたことになる。
つまり受け入れてくれたことになる。
「オリヴィア‥」
「さぁ!そうと決まれば宴の準備をしなくてはならんな!」
「お嬢…本当に空気読みませんね」
俺がオリヴィアに触れる前に何故か姉上に奪われる。
そして取り残されてしまった俺。
「まぁ、ドンマイですよ。お兄様」
「ベアトリス嬢…」
残った義妹に肩を叩かれ憐れみの視線を向けられることになるのだった。
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