偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!

ユウ

文字の大きさ
上 下
39 / 137
第二章.新たな婚約

5.愛の証

しおりを挟む


「絶対反対だ!」


昼食を終えた後、ジルベルトは嫌悪感を隠すことなく言い放つ。


「学園に戻るだと?危険すぎる」

「まぁ、話を聞かんか」

「聞くまでもありません、姉上!」


普段、冷静なジルベルトがここまで興奮する気持ちは解らないでもない。

しかし、何時までも籠の鳥なのは酷だ。


「ずっと、ここで引っ込んでいるわけにも行くまい」

「だからと言って、何故今何です?」

「怪我も回復してきている。それに今は好機だ」

ジルベルトは、噂が収まってからが良いと言っているが、私は違う。

そろそろ王都でも噂が流れているだろう。
馬鹿をした姉と元婚約者の悪い噂が良い感じに広がっている。


学園でもジュリアスが婚約解消をしたことが広がるも、マリアナは被害者ではない。

加害者として噂になっているはずだ。
なんせ妹を捨てて我が身可愛さに逃げて来たのだから。

あげく、今回の事件の原因を作ったのはマリアナだ。
最初から王家が用意した馬車を使っていればこんな騒ぎにならなかったし、道中もオリヴィアが対応してくれてたのに、余計な事をしてさらに大事になったのだ。

しかも道中で私の婚約者を侮辱し、暴言を吐き続けたのだからな。

その件に関しても噂を流させ、騎士団を侮辱したとことも流した。
王家直属の近衛騎士は、騎士であることを誇りに思っているし、騎士の妻も同じだ。

近衛騎士や騎士団の侮辱は、すべての騎士への侮辱に値する。

マリアナは我が国の騎士を敵に回したのだ。


「しかしお嬢、姫さんが傷つく可能性があるなら他の奴は反対しますぜ?」

「うむ、近衛騎士は猛反対している。もうアイツ等を虜にするとは流石」

「感心しないでください!」

「嫉妬深い男は嫌われるぞ」

「姉上!」

まったく、普段の鉄壁の理性は何処に行ったのだ。

まぁ、可愛いからいいけど。


「お嬢、本題に」

「うむ、本題だが…現在王都では馬鹿共の噂で持ちきりだ。その噂を乗じてオリヴィアには我が婚約者殿を護衛として同行させる。勿論、第二騎士団を数名同行させる」

「何故数名も?」

「まだまだ甘いな」

貴族達は噂が大好きだ。
だから、こちらが少しでも匂わせるような行動をすれば勝手に誤解をしてくれる。

「いいか、近衛騎士を護衛にできる令嬢は通常王族か、その親族だけだ」

「存じております」

「ならばオリヴィアに数名の近衛騎士を護衛にして、王族と同じ対応で送迎をすればどうなる?」

「あ…」

私の考えが理解できたようだな。
オリヴィアには王族と同じ特別待遇を用意する。

「彼女は私の婚約者殿の命の恩人だ。その時点で特別待遇をされても当然だ‥そこで噂好きな連中には私が傍に置きたがっていると匂わせる…まぁ、オリヴィアが望むなら養女に迎えるが」

「あっ…姉上」

「一番いいのはお前が口説くことだ。未だに手を握ることしかできんとは…情けない」


療養期間に口説けと言ったのに、何も進展がないとはなんと奥手か。

「私は婚約者殿には愛を毎日告げたぞ」

「姉上の場合は愛というよりも拳で告げたんじゃないですか!この熱血漢が」

「フッ、愛を伝えるには拳が一番だ」


飾った言葉では偽りに聞こえるからな。
だから私は婚約者殿に求婚する時に決闘を申し込んだのだ。


「ベンノ兄上が哀れです」

「だが、婚約者は私にメロメロだ」

今では私を溺愛してくれているので問題はない。


まぁ、私の話はさて置きとして。

「早く口説け。そうすればまどろっこしい真似は必要ない。正式な婚約者として発表できるんだからな」

「そんな無茶な…」

「ならば二コルの婚約者にしてもいいんだぞ?」

「なっ!」

真っ青になるジルベルトは本当に素直だな。
普段は大人顔負けで政治の話をすると言うのに、初恋の君には幼いな。


「冗談じゃありません!オリヴィアは私の妃にします!誰にも渡さない…オリヴィアを愛しているんです!誰にも渡さない!」


「ほぉ?本当か?偽りはないか?」

「当たり前です!彼女は俺の婚約者にします…オリヴィアが手に入るならすべてを捨ててもいい。だけど、彼女が不幸になるなら俺は…」


情熱的な告白だ。
ここで自分が幸せにするとは言わないのはジルバルトの良さでもあるが、弱点でもある。

「自分の手で幸せにするぐらい言えないのか」

「姉上とは違うんです。俺は…オリヴィアが欲しい。でも一番の願いが彼女の幸せなんです」


狂おしいほど求めても、愛する人が幸せになって欲しい。
これもまた愛だろう。


だが、ジルベルトよ。

お前はもう少し周りの気配に気づくべきだ。


「殿下、後ろをご覧ください」

「何だ…」

ガボットが憐れみの視線を向け後ろを向くように言うと、放心するオリヴィアがいた。


しおりを挟む
感想 295

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 「アゼリア・フォン・ホーヘーマイヤー、俺はお前との婚約を破棄する!」 「王太子殿下、我が家名はヘーファーマイアーですわ」  公爵令嬢アゼリアは、婚約者である王太子ヨーゼフに婚約破棄を突きつけられた。それも家名の間違い付きで。  理由は聖女エルザと結婚するためだという。人々の視線が集まる夜会でやらかした王太子に、彼女は満面の笑みで婚約関係を解消した。  王太子殿下――あなたが選んだ聖女様の意味をご存知なの? 美しいアゼリアを手放したことで、国は傾いていくが、王太子はいつ己の失態に気づけるのか。自由に羽ばたくアゼリアは、魔王の溺愛の中で幸せを掴む!  頭のゆるい王太子をぎゃふんと言わせる「ざまぁ」展開ありの、ハッピーエンド。 ※2022/05/10  「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過 ※2021/08/16  「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過 ※2021/01/30  完結 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう

【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」 婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からくなっていました。 婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。 ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/01  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過 2022/07/29  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過 2022/02/15  小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位 2022/02/12  完結 2021/11/30  小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位 2021/11/29  アルファポリス HOT2位 2021/12/03  カクヨム 恋愛(週間)6位

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【コミカライズ決定】婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です

灰銀猫
恋愛
両親と妹にはいない者として扱われながらも、王子の婚約者の肩書のお陰で何とか暮らしていたアレクシア。 顔だけの婚約者を実妹に奪われ、顔も性格も醜いと噂の辺境伯との結婚を命じられる。 辺境に追いやられ、婚約者からは白い結婚を打診されるも、婚約も結婚もこりごりと思っていたアレクシアには好都合で、しかも婚約者の義父は初恋の相手だった。 王都にいた時よりも好待遇で意外にも快適な日々を送る事に…でも、厄介事は向こうからやってきて… 婚約破棄物を書いてみたくなったので、書いてみました。 ありがちな内容ですが、よろしくお願いします。 設定は緩いしご都合主義です。難しく考えずにお読みいただけると嬉しいです。 他サイトでも掲載しています。 コミカライズ決定しました。申し訳ございませんが配信開始後は削除いたします。

処理中です...