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第二章.新たな婚約
2.王女殿下の野望
しおりを挟む弟の想い人を私の宮殿で匿う事になってしばらくして。
シャリエール家からなんどか手紙が届くようになったが全て破り捨てた。
「愚かな」
「どうなさいますかお嬢」
私の補佐であり騎士団の副隊長が私に声をかける。
勝手知ったる仲であるので公の場以外では昔の頃の呼び名で呼んでいた。
「ああ、勿論許さん」
あの馬鹿共が、今更次女が惜しくなったか?
天才と呼ばれる三女は早々の家を出てしまっているので、シャリエール家の立場かなり危ういだろう。
彼女、ベアトリス嬢が残ってくれていれば良かったのだろうが。
子爵の爵位を賜る事が決定しているので、家を出るのは当然だろうし、そうなれば後継ぎの問題が出て来る。
「オリヴィア嬢を大事にしていれば安泰であったと言うのに」
「まぁ、馬鹿ですよね。普通、貴族令嬢で領地代行が出来て、詩が読めて芸術を語れる令嬢がどれだけいるか」
「あげく、彼女は私の婚約者殿を命がけで守った勇敢な令嬢だ…噂がすぐに流れよう」
護衛に付き添っていた一人は私が幼少期から愛して止まない従兄弟であり婚約者だ。
公爵家の次男という立場であるが、この意味をまるで解ってないのは馬鹿ぐらいだろう。
「後はジルベルトが男を見せるだけだ。外堀は固めた…侍女達は既に彼女をジルベルトの婚約者と思っているだろう」
「お嬢、貴女も酷な人ですね」
「何を言うか、お膳立てはしたが…」
私を酷だというのは、外堀を埋めて逃げられないようにしたことか?
馬鹿を言うな。
私は自由恋愛主義だから無理矢理なんて真似はしない。
「愚弟がフラれたら、私の侍女に迎える」
「は?」
「元より、無理強いはする気は無いが…彼女が気に入った」
噂だけは聞いていたが、婚約者であるベンノからの報告を受けて私は彼女が気に入ったのだ。
貴族令嬢としての品格は勿論だが、指揮官として才能に緊急に対応する能力の高さ。
何より近衛騎士を最期まで気遣いながら全体を見渡す能力も素晴らしい。
「自己犠牲は褒められぬが、被害を最小限にしたことは評価すべきだ」
「ああ、お可哀想な姫さん…」
「ムッ!」
なんて無礼な男だ。
腕はいいし、頭の良いのだが少々無礼なのがたまに傷だ。
「それに私は妹が欲しかったのだ」
「いや…」
「それも可愛い妹が、オリヴィア嬢はストライクだ」
下の弟達はどうにも可愛さが足りん。
対するオリヴィア嬢は誠に愛らしいではないか。
もしジルベルトがフラれたら、私が面倒を見るのもいい。
なんなら王族の親族に養子縁組をするのも良いと思っているしな!
なんせ、公爵家の次男を救った恩人であれば同じ派閥の者は反対しないだろう。
後は父上を脅迫…いや、お願いをすれば万事解決ではないか!
中々良い計画だ!
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