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第二章.新たな婚約
1.至れり尽くせり
しおりを挟む私が王女殿下の宮殿で静養してから一か月。
今まで忙しない日々を送り、自由な時間は僅かだったのがウソのように変わった。
「お食事をお持ちしました」
まず初めに、食事の時間になるとこれだ。
食事の時間になると数名の侍女と料理人がフルコースに近い高級料理を運んでくる。
見た目美しく、尚且つ体に良さそうな物ばかり。
食事が終わった後は…
「さぁ、湯殿準備が整っております」
「はい…」
数名の侍女が湯殿前で待機している。
彼女達は湯専属らしく、服を脱がせる事から、体を洗う等もすべてしてくれている。
至れり尽くせりだが、いいのだろうか。
「あの、髪ぐらいは…」
「なりません。オリヴィア姫様はそのままで」
何故に姫呼び?
そういえば、旅先での時も近衛騎士の皆さんは私を偉く丁重に扱ってくださった。
当初は姉が王子妃になるからと思っていた。
「あの…私は伯爵令嬢に過ぎません。厄介になっているのに」
「何を申されます。後に貴女様は私達がお仕えるする方となりますのに」
「はい?」
何を言っているのだろうか?
私は王女殿下の好意により、静養させてもらっている身だ。
傷物になった以上は、社交界では生きていけないから日陰の存在になるしかない。
実家にも帰れないかもしれない。
両親には申し訳ないけど家を出て一人静かな田舎でひっそり暮らすのもありかもしれないと思っていた。
「姫様、ジルベルト様はお優しい方ですわ」
「はっ…はい?」
「少々、複雑な立場でありながらもご兄弟を心から愛するお優しい方なのです。ですから、どうかお願い申し上げます」
何故私にそんなことを言うのだろうか?
第一、ジルベルト様には立派なお妃候補がいらっしゃるはず。
「私は殿下が御幼少の頃からお傍でお世話をさせて貰っております故に解るのです。あの方は自分の幸せを望まれない…国を家族を思うが故に」
辛そうな表情をされる侍女の皆さんがどれだけジルベルト様を慕っているか解る。
愛されているんだろうな。
「ジルベルト様には立派なお妃候補の方がいらっしゃいますから大丈夫ですよ」
「まぁ…」
「何方がお妃となられても、きっと」
私に親切にしてくださった皆さんは本当に素敵な淑女だった。
後ろ盾だけでなく人柄も申し分ないから問題ないと思ったのだけど。
「まぁ、ご冗談を」
「そうですわ。お妃候補筆頭の御方が言う事ではございませんわ」
「は?」
今、なんと申されました?
お妃候補、筆頭って何!!
私が放心している間も侍女の皆さんに綺麗に着飾られる。
ただし、ゆったりしたワンピースで体に負担にならない装いに車椅子に座る形で広間に連れて行かれるのだった。
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