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第一章.婚約破棄騒動
29.婚約解消
しおりを挟む終らない口論を繰り返す中、コップが割れる音が聞こえる。
マリアナ姉様が癇癪を起しているのが手に取れるように解ったけど、特に驚かない。
だってあの人は傲慢で自尊心だけは高い。
これまでは引き立て役になっていたお姉様がいたけど。
そのお姉様がいない。
ストレスのはけ口に散々罵倒して気持ちよかっただろう。
友人も出来の悪い妹と姉を比較して持ち上げられていたけど、お姉様は魔力が低いだけで加護が無い訳じゃない。
幼少期は私を救うためにほとんどの魔力を使ってしまった。
幼児の頃から強い魔力を制御できない私を救うために結界を敷き、私の命を守った所為で魔力がほとんどなくなった。
その直後に鑑定をしたんだから、魔力がほとんどないと思われるのは仕方ない。
その間しばらく、魔力の発動ができなかったのは私の所為だった。
お姉様は無意識に私に魔力を使い続けていた。
おかげで私は死なずに済んだけど、その所為でお姉様は魔力が少なく加護が無いと罵倒を浴びせられて来た。
でもお姉様は笑って、良かったと言った。
馬鹿なお姉様。
底なしでお人好し過ぎるわ。
責めてくれた方がどれだけ良かったか。
貴女の所為だって言ってくれれば楽だったけど、お姉様は私を大事にしてくれて余計辛かった。
しばらくして私の魔力の高さが認められ、宮廷師団の偉い人達にスカウトされた。
国に貢献することができおて、活躍次第で爵位を貰えると聞いた。
マリアナ姉様はいい顔をしなかったけど、推薦しててくれた方が侯爵の地位にある方だったので両親は渋々許してくれた。
それから数年後、私は女男爵の地位を貰うことが叶い、資金を溜めて邸を購入した。
仕事は実家と私の名義で購入した邸で行い、最終的には家を出る準備を進めていたのはお姉様以外はお祖父様や領地にいるし執事長と侍女だけだ。
彼等にも協力を頼んだ。
成人する前に子爵を賜り、お姉様を連れて家を出る。
こんな家にお姉様を置いておけないわ。
とは言え、我が家に男児はいないので、お姉様が家を出ることは許されない。
これまで領地代行をしていたお姉様は実績があるから、繋ぎとしてお姉様に代行を任せ、アリアナ姉様の第二子を後継ぎにするつもりらしいけど。
どこまでお姉様はを侮辱したら気が済むのかしら?
お姉様はアイツ等の消耗品じゃない。
一番許せないのはブライトンだわ。
お姉様がいながらも蔑ろして、亭主関白気取りだった。
なのにマリアナ姉様の前では紳士気取り。
だから噂をながしてやった。
二人は人知れず愛し合う仲だってね?
でも、全部が偽りじゃない。
二人は距離が近かったし、妹の婚約者に堂々と手を出すマリアナ姉様もまんざらじゃなかったはずよ。
だから少しだけつけ加えてやったわ。
そして一部ではお姉様に同情の声と同時にもう一つの噂が流れた。
――姉の為に身を引いた健気な妹。
お姉様からすれば不名誉かもしれないけど、これで婚約解消になった時は傷が少ないはずだった。
そう、すべて上手く行くはずだったのに!
あのクソ女と外道があろうことにお姉様を捨てて魔獣から逃げたと知らされた気は殺してやりたい気分でいっぱいだった。
本人達は被害者ぶって、さも自分達は妹を守ろうとしたと言う。
けど置き去りにして逃げた以上誰が信じるものか。
私は長女に愛想が尽きた。
元から絆なんてなかったけど、お姉様はマリアナ姉様の為にどれだけ耐えたと思っているの?
絶対に許さない。
それに、社交界では妹を捨ててまで真実の愛を貫いた噂で持ちきりだ。
私の両親も真実の愛を貫いたんだから、皆面白がっているわ。
いい気味よ。
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