偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!

ユウ

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第一章.婚約破棄騒動

24.ぶっ飛び王女

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あまりにも不遇な扱いを受けるオリヴィアを救いたいが、婚約者がいるのでは難しかった。

公に俺が声をかければ、立場を悪くするのはオリヴィアだ。
最悪の場合家族から罵倒され、さらに酷い仕打ちを受けるので見守ることしかできないのだが。


「おい、今からシャリエール家に行く」

「え?」

「一応、ご機嫌取りをしてかないといけないからな」

婚約者としての務めを果たす兄は律儀だったが、俺も同席する必要はあるのか?


「何で俺も?」


「まったく、なんてヘタレなのだ!」

そこに現れたのは真紅の騎士服を着た凛々しい女性。


「「王女殿下!」」

「「姉上!」」

男装の麗人と呼ばれる姫将軍とも呼ばれる俺達の姉、アレキサンドロスだった。

我が国の剣と呼ばれる程の剣の使い手だった。


「まったく、なんてヘタレななのか。それでも私の弟か?婚約者がいるなら奪えばいいだろう?」

「奪う!なんてことを言うのです姉上」

「惚れてるのであれば、召し上げることもできるだろう?」

オリヴィアを妾に等!
姉上は何時からそんな卑劣なことを言う様になったのだ。


「何を勘違いしている。私は妃に迎えろと言ったまでだ。お前は周りに気使いすぎている。だから結婚ぐらいは好きな相手としろ」

「えっ…」

「何に関しても関心が無いお前が執着心を持つのは良い事だ。それに彼女は魔力が低いそうだな…大いに結構」

「何が結構なんですか」

我が王族は魔力が強すぎる。
その所為で魔力の強い女性を娶るべきだと言う馬鹿がいるのに。

「魔力が強すぎたら子が出来にくい。特にお前は桁外れに魔力が強いだろう。その点で言えば理想的だ。私達の分も沢山作ってくれ」

「姉上!」


「ジルをあまり苛めないでください。これにとっては初恋…いきなり子など」


なんてデリカシーの無い人だ。
普段は完璧な王女たが、王女でありながら王子として振る舞っていたので女性らしさが欠けている。

しかも、淑女として色々穴だらけだ。


「ジル、お前は好いた相手と結婚し、子を欲しいと思わんのか?私からすれば信じられな」

「姉上、ジルは純情ですから」

「ほぉ?では、他のろくでなしがお前の愛しい君と結婚し汚されるのを見ているのか」

オリヴィアが他の男に汚される?

想像しただけでもゾッとする。

「あげく、結婚後の貴族令嬢はたいてい、籠の鳥だ。哀れだな」

「あ‥」

全てとは言わないが、大人しい令嬢は夫の思うがまま。
そうなったらオリヴィアは!


思わず頭を抱えたくなる。


「ジル、私達はこの手にできるものは少ない。その中でどうしても欲しいならばあがけ」

「姉上…」

「お前は優しい子だ。だが、本当に彼女が欲しいなら手に入れろ。そして手放すな」


言い方は色々ぶっ飛んでいるが姉上は俺の幸せを一番に考えてくれた。


「万一の時は私がなんとかしてやる。父上は私に弱いし、宰相の弱みを握っているからな!」

「威張らないでください姉上…しかし、私もオリヴィア嬢が嫌いではありませんよ」

「ならば、協力してやれ。まずは手初めに挨拶し、アピールするのだ!」



こんな感じで姉に背を押され改めて挨拶をしたが…



「兄上、オリヴィアが可愛らしい!」

「解ったから、その絞まらない顔をなんとかしろ」


顔合わせではあの女が言うまでもなくやらかしたが、俺の眼中にない。

俺の視線をくぎ付けにするのはオリヴィアだけだった。


それから数年。
忍ぶ恋に身を焦がしながらも日々は過ぎ、俺の婚約者候補が決まった。

選んだ基準はバランスと派閥を考えた結果だ。


彼女達は優秀な令嬢であり、己の私欲のために王子妃になるような馬鹿ではない。

ただ、彼女達にどう俺の思いを告げるかだ。
婚約者候補として選ばれた以上は覚悟を持って王宮に上がっているのだから。


思い悩みながらも、オリヴィアが学園に入学して数日後。


「ジル、今度の休みが勝負だ」

「は?」

「学校は休みだから、遠出しろ。ジュリアスの付き添いということにしているから問題はない…だが、別荘に到着すればこっちのものだ!」

「えっ…ちょっと!」

「美しい大自然で二人きりで愛を育むがいい!」


いや、いきなり何を言うんだ。
兄上とあの女が遠出するので、一緒にオリビィアと婚約者も同行させる?

どう考えても俺は邪魔だろ!


「心配するな、私も後から合流する」

「ええ!」


こうして姉上にお膳立てされ、旅行が計画されたのだが。

旅先でこんな悲劇になるとは誰が予想できただろうか。


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