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第一章.婚約破棄騒動
20.道中
しおりを挟む道中は安全な道を通り、獣を避けて通るはずだった。
けれど、ここでまた予定が狂ってしまう事態となる。
「どうせなら海沿いを通って行きましょう」
「それはいいな」
「えっ‥でも、出発が遅れているんですよ?それに長時間は近衛騎士の皆様に負担がかかるわ」
出来るだけ最短教理を選んで道も選んでくださっているのに、さらに遠回りをしたら負担がどれだけ酷いか。
「それ天候が怪しくなる前に森を出ないと危ない…」
「オリヴィア、空を見なさい。貴女は気候を読むこともできないのね」
「まったくだ。魔力がほとんどない君には解らないだろうが、俺とアリアナ様は四大精霊の加護を持つ。万一のことなどありえない」
「それに、何の為の護衛だと思っているの?何も知らないなら口を出さない方がいいわ。まったく、本当に世間知らずなのだから」
――世間知らず。
確かに私は社交界にほとんど出ていなからなのかもしれない。
でも、本当なのに。
風の動きが代わり、雨が降る予感がする。
魔力が少なく恩恵を受けていなくても大地が私に言うの。
もすうぐ雨が降り、危ないと。
でも、誰も信じてくれない。
「我らは大丈夫ですから…ですが、魔物が出る道は避け通った方がいいかと」
「近衛騎士が魔物に恐れるとは、なんと情けないことだ」
「まったく、しょうがない人達ですわね。私がいるのだから問題なくてよ」
私は二人の言葉を聞き、愕然とした。
何を言っているの?
この時期は出産を終えた魔獣が多い。
その為、他の種族に対する警戒心が強いと言っているのに。
無暗にこちらから攻撃をする気なの?
いくら魔獣でも、その中には精霊もいるのに?
それに、精霊は自分達の下僕とでもいいたいの?
「正気か…」
「なんということを」
近衛騎士の方々は失望した表情をしている。
彼等は私達よりもずっと魔獣の恐ろしさを知っているからこそ、二人の発言に呆れている。
なのに二人は気に留めることもなく御者に道を変える様に伝え海沿いを馬車で走らせ見晴らしの良い道を通るが、空から雫が落ち始める。
「ん?」
「雨?急いで馬車を止めて…荷物が濡れるわ」
「お姉様、ここは一本通行ですわ。しかも、途中で馬車を止めたら危ないです」
「いいから止めなさい!」
いきなり立ち上がり馬車を止める様に言うも、御者が声を上げる。
「大変です!土砂崩れです!」
「「はぁ?」」
「このまま一気に駆け抜けます!」
「ちょっと!」
ガラガラと石が落ちて来る音が聞こえる。
「護衛の皆さんが!」
「そんなことどうでもいいわ!私の荷物をなんとかして!」
「荷物を捨ててください!」
「オリヴィア!」
こんな大荷物を馬車に乗せた状態では早く進めない。
「かしこまりました」
「皆様、できるだけ地面を揺らさずに急げますか…地面も脆くなっております」
「ハッ!」
土砂崩れが始まれば上だけでなく足元も危険だった。
「御者の方、私が結界を入りますのでお願いします」
「かしこまりました!」
私は魔力を使って結界を敷く。
広範囲の結界を敷けば、その分魔力の消費は激しい。
何より近衛騎士の皆様の安全を守らなくては。
「もっと大きな結界を敷けないのか」
「無理です、結界を持続させる前に私が持ちません」
「意味がないな。ならば俺の風で」
結界を敷いている最中、ブライトンが風の魔法で土砂崩れを吹き飛ばそうとする。
「お待ちください!この場では…」
「どいていろ。本当の魔法とはこう使うのだ!」
手をかざし風魔法を使おうとした瞬間、地面が揺れ出した。
「ガゥ!」
「きゃああ!」
結界を破り、馬車の窓を壊して現れたのは魔獣のホワイトタイガーが現れた。
最悪なパターンだった。
風と炎の魔法はホワイトタイガーとの相性は最悪だったのだから。
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