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第一章.婚約破棄騒動
18.不要な存在
しおりを挟む授業が終わって邸に帰り、着替えを済ませる。
夕食時にも私には苦痛な時間が訪れる。
「そう言えば、生徒会に入ったそうだな」
「はい」
「くれぐれも殿下のご迷惑にならないようにするのですよ?貴女はマリアナとは違うのですから」
「そうだ、生徒会にかまけて学業をおろそかにするんじゃないぞ。ブライトンにも迷惑がかかるからな」
姉が入学した時はまっさきにおめでとうの言葉をもらっていた。
でも、私の時はお祝いの言葉は何一つないのね。
「たかが学業なのだから、貴女はもう少しシャリエール家の娘として努力しないと、ブライトンに捨てられてしまうわ」
「まぁ、マリアナったら!」
冗談を言う様に笑う二人は何がそんなに面白いのだろうか。
「でも、そいうなったら私が侍女にしてあげるわ。それで、騎士団の何方かに貴女を貰ってもらえるように言ってあげるから」
「本当に優しいわねマリアナ」
「ああ、まったく自慢の娘だ」
三人は和気あいあいと食事をするが、私がどんな惨めな気持ちになっているか解っているのか。
私は耐えるしかなかった。
三人は悪気はないのだろうけど、その悪気ない言葉がどれだけ相手を傷つけるか解っていない。
「お嬢様!」
「クローネ?」
泣きそうな思い詰めた表情の専属侍女、クローネ。
私の姉のような存在であり、理解者だった。
「あんまりです。こんな…もう我慢なりません!」
泣きながらハンカチを噛みしめるクローネは私を可愛がってくれたから余計許せなかったのかもしれない。
「大旦那様にお願いしましょう!こんなの虐待ではありませんか…ブライトン様の態度もあんまりです」
「お祖父様に迷惑はかけられないわ」
「ですが、現在、伯爵家が潤っているのはお嬢様の支えあってのこと!ラコール家だって、お嬢様が立て直すためにどれだけ心を尽くしたか解っておりません!」
「魔力が少ない私は大したことができないもの」
魔力絶対主義のブライトンは炎の魔力を持つお姉様こそ素晴らしいと思っている。
常に美しく着飾り、社交界でも美の女神ともてはやされているのだから仕方ないけど。
今日のあの言葉がキツい
「魔力云々ではなく、私自身を見てくれたなら…私は」
「お嬢様、万一の時は国を出ましょう」
「クローネ」
「私はお嬢様の味方でございます」
私を抱きしめてくれるクローネの手は思っていたよりも小さい。
だけど、ずっと私を守ってくれた手は頼もしいものだった。
「ありがとうクローネ」
「はい!」
もし、私の価値がなく。
シャリエール家にもいられなくなった時は、クローネと家を出るのも考えてもいいのかもしれない。
だって私は必要ないから。
両親も、ブライトンも私はいなくてもいいお荷物なのだから。
ただ後少しだけ。
もう少しだけ頑張りたいと思っていた。
家族に対する微かな情が残っていた。
でも、私はもっと早く気づくべきだった。
気づいていればあんなことにならずに済んだのに。
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設定は緩いしご都合主義です。難しく考えずにお読みいただけると嬉しいです。
他サイトでも掲載しています。
コミカライズ決定しました。申し訳ございませんが配信開始後は削除いたします。
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