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第一章.婚約破棄騒動
13.噂の少女
しおりを挟むそういえば入学式の時に見た少女を思い出す。
「そう言えば今年は平民の方が入学されたのですね」
「ああ…だが」
「きっと、すごい努力をされたのでしょうね」
「えっ…」
私には想像できない程の血の滲む努力をされたのだと思う。
「貴族ばかりが通う学園に学費免除とは言え、ご心配でしょうに。さぞかし見識のあるご両親に育てられたのでしょうね」
なんだか親目線になってしまう。
前世ではお世辞にも優秀ではなく、むしろ出来が悪かった。
勉強も運動も得意じゃなかったけど、私の両親は教育に関してはお金を惜しまなかった人だ。
今なら痛いほど解る。
本当に大事に育てられたのではないのか?
「私、その方のご苦労を思うと…」
「ああ、彼女は血の滲むような努力をしたんだ」
ふと、ジュリアス様の表情は優しい表情をしているの気づく。
もしかしてその生徒とかかわりがあるのだろうか?
でも、特待生ならば王族も気にするのは当然かもしれない。
特待生選ばれると言う事はそれだけ強大な魔力を持つのだから。
その一方で平民で強い魔力を持って入学したとなれ嫉妬の対象になるかもしれない。
「私達は王族として、生徒代表として彼女を守る義務がある」
「だが、学年も違うから限度もあるし…下手に庇えば彼女を孤立させてしまう」
確かに王族であるお二人が表に立って庇えば立場が悪くなる一方だった。
「マリエル嬢にも相談したんだが…」
「どうも彼女とはそりが合わないようでね」
二人が困った表情をする。
お姉様は身分絶対主義で、新貴族の事も良く思っていない。
典型的な家柄重視の保守派の旧貴族的な思考を持っている。
そう教育されてきたからなのだけど。
でも、新貴族を否定することはお母様を否定することになる。
それを理解しているのだろうか。
「できたらでいい。彼女を頼めるか」
「私でお役に立てるでしょうか…」
「いや、君なら大丈夫だ。彼女達の様に誑しこ…いや、仲良くなれるさ」
今誑し込むって言わなかったかしら?
聞き間違いよね?
新生活がスタートした私は不安と期待感でいっぱいだった。
けれど、現実は甘くなかった。
「オリヴィア、今年は平民の生徒が入学したことは知っていて?」
「はっ…はい」
昼の休憩時間、私はお姉様に呼び出された。
そして聞かされたのは平民の少女のこと。
「彼女には近づかないように。悪い噂があるわ」
「悪い噂?」
「ええ、殿下に言い寄っていると…」
はぁ?
何を言っているのか。
「いい事、絶対に関わらないで」
「でも、噂でしょ?」
真意を確かめたわけじゃない。
社交界では悪意のある醜聞を流して叩くこともある。
「私がそう言っているの。何度も言わせないで頂戴」
悪い子だと叱りつける様な言い方に唇を噛みしめる。
お姉様は自分が常に正しいの?
悩みながらも数日後に事件が起きるのだった。
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