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第一章.婚約破棄騒動
5.妹の助言
しおりを挟む姉の婚約者のジュリアス様は大変優秀な方だった。
我がウィステリア王国には第一王女殿下の下に三人の王子殿下がいらっしゃる。
皆様は大変優秀で、しかも美形揃いだった。
第一王女殿下は剣術に優れ、第一王子殿下は表立った執務を行っている。
第三王子殿下は第一王子殿下の補佐をしている。
唯一第二王子殿下は現在他国に留学しているとの噂がある。
我が国は他の国とは異なり女性でも王にになることができる。
完全な実力主義を貫いているからなのだけど、頭の固い貴族は声をそろえて言う。
女が王になるなんてとんでもないと。
お父様も、その偏った考え方をする内の一人だったけど。
「お姉様、また雑用を押し付けられたの?」
「ベアトリス」
「領地代行の仕事はお姉様の仕事じゃないでしょ?昨日も徹夜しんたんじゃないの?」
忙しい両親の代わりに私が家の雑務をこなすのは珍しくない。
現在はシャリエール家の仕事のほとんどを私が代わりにしている。
とはいっても父の代わりに代筆で手紙を贈ったり、姉の代理で王族の親族の方にパーティーのお礼の手紙を書く程度だったけど。
「まぁ、お姉様の方が字が綺麗ですもの」
「ありがとう」
秀でた才能はないけど。
物心つく前から一人だった私は読書が趣味で刺繍や小物づくりも好きだった。
けれど、貴族令嬢に必要な刺繍のレベルを超えていたので両親には秘密だったけど。
「ねぇお姉様、職業婦人になってしまえば?」
「は?」
「だって、このままこの家にいても先はないわよ?私はお母様みたいになるなんて絶対に嫌よ」
本当にこういう時のベアトリスは尊敬する。
言いたいことを言って、実行できる勇気があるのだから。
でも、それに見合うだけの努力をしていて。
才能も有るけど、努力だってしている。
昔は強大な魔力でベッドから起き上がるのも難しかったのに、自分で魔力を制御して克服したんだから。
私は頑張ってもベアトリスの様になれない。
だからせめてベアトリスが家を出る時に支援ができるようにしたい。
私はこのままブライトと結婚して妻として彼を支えて行かなくてはならない。
ブライトを嫌ってはいないけど、愛しているか?と聞かれればさぁ?としか答えようがない。
彼は優しく紳士的であるけど、私を好いていない。
ブライトが憧れているのは姉なのだから。
そんな相手愛情を抱けるわけもない。
私も冷めきっていると思うけど。
最初からこんな性格だったわけじゃない。
婚約してすぐの頃は、私も彼を慕っていたけど。
姉と私を比較ばかりする彼に愛情を抱くことはできなかった。
婚約者として取り繕うことはしても、魅力的な男性とは思言えなかったから。
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