20 / 77
第一章
7生徒会
しおりを挟む花君のシナリオではどのルートでもヒロインは生徒会に入る事になっている。
…はずだったのだけど。
「何故だ」
生徒会に入るはずのヒロインは役員に選ばれなかった。
「別ルートなんてあったかな?」
勿論シナリオでは私も生徒会に入るはずだが、残念ながら補欠合格だった私が生徒会に入る事はできない。
うん、そもそも配役がミスだよ。
「レティシア様も生徒会に入ればよろしかったのに」
「そうですわ」
「はは…」
社交界の華と謡われる二人。
しかも同年代の中でも優秀である二人は、勿論生徒会の役員に選ばれたけど私にはどう考えても無理だ。
「授業について行けるか怪しいので」
「レティシア様…」
ああ、そこで憐れむような視線を向けないでくださいアンネローゼ様。
「そうですわね。奇跡的に学園に入れましたから」
「ソーデスネ」
泣いていい?
この世界は乙女ゲームだが私には本当に優しくないな。
考えて見て欲しい。
もし仮にも他の誰かが悪役令嬢に転生して完璧な令嬢になれるでしょうか?
無理だ。
生まれが上流階級のお嬢様ならできるだろうけど、元は田舎娘が優雅に微笑み圧死するようなコルセットをつけて四六時中笑顔でいれるか!
勿論私はコルセットなんてずっとつけないけどね。
私が余りにも苦しむものだから使用人がしめすぎない柔らかいコルセットを作ってくれた。
「生徒会はいわば学園の顔ですから無理ですわ」
「レティシア様、ご自分のお立ちを解っていますか?」
「止めましょうアンネローゼ様」
最近二人が私を見る目は母親から祖母が孫を見るようだ。
既に凪の境地じゃないか?
何でだ?
精神年齢は私の方が上のはずなのに!
「ハッ、しくじりましたわ」
「どうしました?」
「お弁当を忘れましたわ」
全寮制の生活をする事になっているのだけど、今日は午後過ぎまであるのにお弁当を用意してもらうのを忘れてしまった。
「それなら、問題ないかと」
「え?」
「レティシア様」
遅れて教室に入って来たのはダイアナ様だった。
「どうなさったのですか」
「今日は午後までございますのでお弁当を作って来ましたの」
なんて事だ。
お弁当を忘れた私にダイアナ様は予知していたのか。
「ありがとうございます。ダイアナ様は女神様です」
「大袈裟ですわ」
お菓子作りが趣味のダイアナ様は料理もプロ級だ。
学園に入る前に何度もお菓子を差し入れして貰っている所為で私は胃袋を掴まれてしまった。
「やりますわねダイアナ様」
「ええ、なんて抜け目のない」
隣でこんな会話をしていたなんて私は気づくこともなかった。
「よろしければこちらもどうぞ」
「ダイアナ様の作られたビスケットですね」
特に大好物はビスケットだ。
貴族社会ではクッキーが主流だけどビスケットはダイアナ様の実家の伯爵家の名物だ。
「教室でお菓子を食べるだなんてはしたないですわ」
「え?」
私がビスケットに目を輝かせていると咎めるような声が聞こえた。
70
お気に入りに追加
2,359
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
[完結]想ってもいいでしょうか?
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
貴方に逢いたくて逢いたくて逢いたくて胸が張り裂けそう。
失ってしまった貴方は、どこへ行ってしまったのだろう。
暗闇の中、涙を流して、ただただ貴方の事を考え続ける。
後悔しているの。
何度も考えるの。
でもどうすればよかったのか、どうしても分からない。
桜が舞い散り、灼熱の太陽に耐え、紅葉が終わっても貴方は帰ってこない。
本当は分かっている。
もう二度と私の元へ貴方は帰ってこない事を。
雪の結晶がキラキラ輝きながら落ちてくる。
頬についた結晶はすぐに溶けて流れ落ちる。
私の涙と一緒に。
まだ、あと少し。
ううん、一生でも、私が朽ち果てるまで。
貴方の事を想ってもいいでしょうか?

【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

婚約破棄を受け入れたのは、この日の為に準備していたからです
天宮有
恋愛
子爵令嬢の私シーラは、伯爵令息レヴォクに婚約破棄を言い渡されてしまう。
レヴォクは私の妹ソフィーを好きになったみたいだけど、それは前から知っていた。
知っていて、許せなかったからこそ――私はこの日の為に準備していた。
私は婚約破棄を言い渡されてしまうけど、すぐに受け入れる。
そして――レヴォクの後悔が、始まろうとしていた。

【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。
紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。
「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」
最愛の娘が冤罪で処刑された。
時を巻き戻し、復讐を誓う家族。
娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる