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第一章
5冷たい視線
しおりを挟む運命的な出会いを果すはずだった。
なのにこの空気はまさに真逆じゃないだろうか?
「私は、何も…」
「この通りで叫んでいたではありませんか」
「あっ…アンネローゼ様!」
何時もおしとやかで怒る事はないアンネローゼ様が怒っている。
「話にならないな。何処の令嬢か解らないが…」
「殿下、そろそろ参りませんと。彼女事は」
アンネローゼ様が耳打ちをする。
「このままでは入学式に遅れるね」
「えっ…」
普通に無視ですか!
目の前に運命の相手がいるのに。
「ちょっと何なのアンタ!」
「いい加減に…」
カンナがヒロインを睨みつけるも、このままでは進まないわ。
いいえ、もしかしたら少しのズレがあるんじゃない?
そうだわ
一応出会いイベントは発生している。
ならば、ここで私も悪役令嬢として完璧でなくては。
人通りも多いし舞台としては問題ないわ。
「私はレティシア・アシュリーですわ!」
「お嬢様…」
カンナを手で制止し私はこの場で完璧とは言えないけど悪役令嬢見習いとしてヒロインの前に立ちはだかる。
「レティシアですって!」
「お嬢様を呼びしてにするとは…」
「そうですわ!私の名前を憶えておいてくださいませ。馬車は別のを呼んでおきますわ」
「いや、レティシア。その必要は」
ヒロインを遅刻させるわけには行かないものね。
「そんなのに乗れるわけないでしょ!」
「あら?では私がその馬車に乗りますわ」
「レティシア様…あのですね」
そうだわ。
私がヒロインの馬車に乗り、ヒロインの馬車に私が載れば良いのではないかしら?
そうよ。
本来ならヒロインはルクシオン様と同じ馬車に乗るはずなのだから。
「レティー、それは流石にないよ」
「そうですわ。別の馬車が嫌ならばご自分で呼べばいいではありませんか」
「でも…」
「い・い・ですね?」
「はっ…はひ」
逆らえない。
穏やかに言いながらも絶対に反対させないアンネローゼ様。
そんな折。
「皆様、どうなさいましたの?」
「フレデリカ様?」
馬車ではなく馬に乗って現れるフレデリカ様に驚く。
「どうなさいましたの?」
「いや、フレデリカ嬢…何故その姿で」
「折角ですからこのまま学園に向かおうかと」
ドレスで乗馬は無理だとしてもズボンで。
「あらそちらの方は」
「ご存じですか、フレデリカ様」
「ええ、私が引き取りますわ」
何故かヒロインと知り合いだったようで強制的にヒロインはフレデリカ様と相乗りをしてそのまま学園に向かう事になった。
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