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第一章
10公爵令嬢
しおりを挟む無事に結婚式が終わり披露宴にて、お祝いを口々にする。
「先生、おめでとうございます」
「ありがとうございますディアナお嬢様」
アーノルド公爵令嬢の孫ディアナ・ラ・アーノルド。
沙良にとっては妹のような存在でもあり、ディアナの沙良を慕ってくれていた。
「本当にお美しゅうございました」
自分の事のように喜んでくれるディアに笑みを浮かべながら思う。
(あの狸の血を継いでいるなんて思えないわ)
普段から人の好さそうな顔をしながら腹黒く、目的の為なら手段を択ばないクリスチャンと比べ、ディアナは正義感が強く清廉潔白という言葉が似合う。
気の強さが全面的にでるものの、貴族としての誇りを誰よりも持つディアナは幼いながらに王族としての責任感を持っていた。
ただし、体が弱いこともあってか敵対する派閥の貴族から下目に見られていたこともあったが、悪意を受け止めるだけの器量を持っていた。
「本日はお忙しい中、誠にありがとうございます」
「何を申されますの。サラ先生は私の恩師ですのよ…参加しないはずないではありませんか」
ここまで言われると恐縮してしまいそうになる中、ディアナはサラの姿ウェディング衣装を見て少しだけ残念に思った。
「決まり事とは言え、先生の式が質素であるのが残念です。本来ならば王宮で豪華に結婚式を挙げるべきですのに」
「貴族同士の結婚ではありませんし」
通常貴族同士の結婚式と異なり騎士爵の者達は武人である為、結婚式も質素に行われていた。
今では高位貴族が騎士の場合はそれなりの結婚式をするが、カメリス家は昔からの伝統的な婚姻を守っていた。
「何よりこの度の婚姻は…」
「先生、それ以上おっしゃらないでくださいませ」
祝いの席で言うべき言葉ではないと止められる。
「祖父が無茶を申し上げましたことをお詫びいたします。先生からすれば本意ではないかもしれませんが…氷の騎士と名高いアレクセイ様は我が王族にとっては最後の剣となるお方なのです」
「お嬢様?」
「少々、気真面目過ぎる方ですが…不義を働く馬鹿共よりずっと素敵な殿方ですわ」
天使のように愛らしく儚げな容姿をしながらもディアナは物事をはっきり言う性格だった。
そして男に対して情け容赦がなかったことから、一部の貴族の男を毛嫌いし馬鹿呼ばわりしていた。
「不器用な方ですが、一途な方です。先生を生涯愛し、守り抜いてくださるはずです」
「お嬢様、そのことなのですが…」
「少し順番が違いますが、あんな情熱的な誓いをされたのですから間違いありませんわ!」
情熱的な誓いと言われ遠い目をする。
(ああ、完全に誤解しているわ)
聡明でも、まだ幼さが残るディアナが夢を抱くのは仕方ない。
沙良も野暮な真似はしたくないが、どうしたものかと悩み困り果てるも。
憂いの表情を見てディアナがさらに勘違いをした。
「先生、いなくなったお馬鹿さんの事など気になさらないでください。政略的なものでしたし…我が公爵家も賛成していなかった婚約ですの。ですが、此度の婚約は違いますのよ」
「いえ、お嬢様…」
「社交界で心無い噂を放つ者もでてくるかもしれません。ですが、そんな小物等恐れるに足りませんわ。我が公爵家が全力を持って踏みつけてねじ伏せて見せますので!」
拳を突き上げるディアナに眩暈がした。
元は病弱なお嬢様だったのに、何処で間違えたのだろうか。
こうして幼きディアナに勘違いに勘違いが重なり、本当の事を言えずじまいになってしまうのだった。
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